第24話 坂本絢

家に着く頃にはすっかり日は沈んでいた。これからどんどん沈む時間も早くなるだろう。

「ただいま」

「おかえりー」

 玄関を開けると丁度階段から降りてきたあやがそこに立っていた。茶髪のロング、綺麗な顔立ちに化粧がされている。まさに今時の大学生といった感じだ。

「あ、お姉ちゃん! ただいま」

「帰ってくるの早いね。部活は?」

「今テスト期間中だから部活ないんだ。お姉ちゃんこそ、今日学校なかったの?」

「うん。もうこの時期になるとあんまり学校に行かなくてもいいんだよね」

「へぇ」

 大学って好きな授業選べて四年生とかになると学校毎日行かなくていいんだ――って前にお姉ちゃん言ってたけど羨ましい。

「あ、そう言えばお母さんから聞いたよ。彼氏ができたんだって?」

「う、うん。まあね」

「へぇ初彼氏じゃん。いいねぇ。写真とかないの?」

 絢は不敵な笑みを浮かべている。

「あるけど……。変な事言わないでよ」

「言わないわよ。可愛い妹の彼氏だもん。ほれほれ、はやく」

 そう言われ、渋々携帯に入っている写真を見せた。

「へぇ、カッコいいじゃん。なんて名前?」

「ほんと!? 須川聡って言うんだ」

 絢は何故か男に関して辛口な所がある。それ故、何か言われるかと身構えていたが、その心配もないようで安心した。

「聡君ね。キリッとしてて男らしくていいじゃん。私タイプ」

「よかったあ。お姉ちゃんまた変なこと言うかと思ったし」

「そんなこと言わないわよ。あ、そうだ。ねぇ、今度三人でご飯食べようよ」

 絢は手をポンと叩く。

「え? まあいいけど……」

「私と紗綾は聡君に合わせるからって言っといてね」

 絢はともかく私は部活で忙しいって言うのに。歯がゆい気持ちがあるが無視しておこう。

「今連絡しなさい」

「え? 今じゃなくてもいいでしょ」

「あのね、思い立ったらすぐ行動よ。大人はね、レスポンスの早さが命なのよ」

 えっへん、と言わんばかりに胸を張っている。

「はぁ」

 そんな姉もまだ社会に出てないのに……。

「ちょっと、何よその目は」

「いや、別に」

「と、とにかくちゃんと送るのよ!」

「分かったよ」

 しょうがない。今送っておくか。絢の視線も気になるし。

『聡君、今度いつ空いてる?』

『今週なら土日どっちも空いてるぞ』

「今週なら土日どっちも空いてるぞ――だって」

「本当!? じゃあ土曜日にしよっか」

「聞いてみるね」

『そうなんだ! お姉ちゃんに聡君の事話したら三人でご飯行きたいみたいなんだけど……いいかな?』

『俺でよければいいぞ』

『本当? じゃあ土曜日にしようか』

『了解』

 私は携帯をポケットに入れる。

「どうだった?」

「俺でよければいいって」

「よかった!」

「もう。なんか聡君、可哀想」

「なんで。いいじゃないの。私もこれから忙しくなるしなかなか会う機会ないだろうしさ」

「え、そうなの? 就職決まったんじゃなかったっけ?」

「決まったよ。決まったから予定が一杯入ってるのよ。まぁ、ほとんど遊びだけどね。だから一回は会っておかないと」

「へぇ。あまり遊びすぎも良くないからね」

「はいはい」

 彼女はそう言って靴を履く。

「あれ? 出かけるの?」

「うん。これからバイト」

「そっか。頑張ってね」

「ありがとう。じゃあ行ってくるわね」

 そう言って絢は家を出た。

「あら、声がすると思ってたら帰ってきてたのね」

 リビングから母がこちらに来た。

「あ、お母さん。ただいま」

「もう少しでご飯できるから待ってて」

「はーい」

 部屋に戻り部屋着に着替える。須川を両親に会わせる前に姉を挟むのは良かったかもしれない。いい予行演習にもなりそうだし。

 私は楽しみ半分と緊張半分で土曜日を迎えた。

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