第23話 一夜明けて

「え、そのまま何もせず寝ただけ!?」

 松田と関口は驚きを隠せず口が開いたまんまだ。

 休みが明け、今日も午前放課でまた三人で勉強会という名の座談会が開かれていた。小林は用事があるみたいで先に帰った。

「う、うん。そんなに悪い?」

「悪いわよ! あーあ。須川君、可哀想」

 関口はあちゃーと言わんばかりの顔をしている。

「な、なんでよ」

「なんでって……。あんたねぇ。いい? 抱き合って寝ていて興奮しない男子なんているわけないでしょ! それに、くっついて寝てたなら胸が当たってるんだよ? 余計に興奮しない男子なんていないでしょ」

「ま、まぁ」

「そこで襲わないのは本当に紳士だわ」

 関口の力説に松田は隣で深く頷いている。

「そ、そこまで言わなくても……」

「はぁ、私があの時ビリになっておけばなぁ。ねぇ紗綾。私と変わってくれてもいいのよ」

「それはダメ!」

 関口が言ったことに私はピシャリと言った。

「けど、私なら絶対そんな酷な事はさせなかったな」

 そこまで言われると流石に凹む。

「そこまで言わなくたっていいじゃない……」

「まぁまぁ、いいじゃないの。これで終わりって訳じゃないんだしさ」

 見かねた松田が入って来た。

「あ、そうだ。今度、須川君も入れて五人で勉強会をしようよ」

 松田はポンと手を叩いた。

「あ、いいねーそれ」

 松田の提案に関口が賛同する。

「うーん……一応聞いてみるけど忙しそうだよ」

「そうなの? けど勉強会じゃなくても遊んでみたいよね」

 松田が言う。

「確かに。ちゃんと言ってね」

「分かったよ」

「さぁて、続きやりますか」

 松田が勉強に取り掛かろうとする。

「え? まだやるの?」

 関口がキョトンとした顔で言う。

「当たり前じゃない。何のために集まってるのよ」

「そりゃあ勉強するためだけどさ……もうちょっと休憩しようよ」

「その結果、勉強しないで帰る――もう分かってるのよ。それに、どうせあんた家帰っても勉強してないでしょ?」

 松田が半ば呆れて答える。

「いやするよ。少しだけど」

 関口はしどろもどろに言う。

 あ、これは絶対にしてないな――二人を横目にそう確信する。

「紗綾はちゃんとするのは分かるけどさ」

「まぁ、一応ね。愛美は頭がいいから心配は無いけど、沙希は心配だわ」

「失礼ね。赤点とった事ないしまだ平気よ」

 関口は自信気に言う。

「あんたねぇ。もうちょっと上を見なさいよ。上を」

 私は思わず呆れて言った。

「で、紗綾は須川君と勉強した?」

 松田が聞いてきた。

「したよ。聡君、結構現代文が得意なんだよね」

「へぇ意外! 言っちゃ悪いけど勉強のべの字もないと思ってた」

 どうやら他の二人も私と同じ事を思っていたみたいだ。

「正直、私も同じこと思ってた」

「だよね。人って見かけによらないんだね」

 うんうんと二人は頷く。

「紗綾は私達と一緒にいて大丈夫なの?」

 関口が聞いた。

「え? 大丈夫だけど。なんで?」

「なんか、私達の方優先してるみたいで少し申し訳ないなってこの前愛美達と話してたんだよね。全然こっちの事気を使わなくていいよ」

 どっちを優先するとか考えた事なかったが、変なところで気を使わせてしまったみたいだ。

「あぁ、そうだったんだ。けど本当に大丈夫だよ」

「ならいいけどさ。あぁ、私も紗綾みたいに彼氏の家にお泊まりしたーい」

 はぁ、と関口は天井を見上げる

「沙希はまず彼氏を作る所からでしょ」

 関口の言った事にすかさず松田が言う。

「誰か紹介して」

「紹介する余裕があるなら彼氏に作るのに困ってないわよ」

「そりゃそうか」

「こんなこと話しててもキリがないしそろそろ始めよう」

 前回は座談会で終わったみたいなので今回はちゃんと勉強する事に。途中、関口が根を上げるが無視すると諦めた様子で黙々とやり始める。

 お互いに教え進め、休憩を挟みつつやっていると時刻は一五時を回っていた。

「いやぁ、もうだいぶやったんじゃない? 私もう限界」

 関口が限界がきたのか再び根を上げた。

「そうだね。今日はこの辺にしとこうか。私も疲れちゃった。で、明日はどうする?」

 松田が私たちに聞く。

「え、明日も勉強するの?」

 関口は露骨に嫌そうな顔をする。

「そりゃそうでしょ。一体何の為のテスト期間よ」

「じゃあ明日はチャチャっと済まして遊び行かない?」

 お願い! と関口は両手を合わせている

「まぁ……息抜きも必要だよね」

 松田が賛同する。まともに勉強会したのは今回が初めてな気もするが。

「えぇ、それってどうなの?」

「別に明日、全くしないって言ってないじゃない。一回ぐらいいいじゃないの」

 ね、ね――と関口の顔が迫ってきた。もうこなったらどうしようもない。

「じゃあ……明日は遊ぼうか」

「きまり! じゃあカラオケでも行こうよ!」

 さっきまであんなに疲れていた彼女が嘘のようだ。

「じゃあもう開きにする?」

 松田が皆に問いかける。

「今日はそうしようか。また明日もやるんでしょ?」

 関口が言う。おそらく教室で雑談をして勉強せずにカラオケに行くことになると思うが黙っておこう。

「じゃ、今日はお開きだね」

「うん。じゃあまたね」

 今日の勉強会はこれにて終了した。

 私は帰路に就く。須川と付き合った日と比べて少し寒くなってきた。明日からマフラーでもしていこうかな。

 昨日の夜のことを考えると恥ずかしくなる。私はあれだけで満足だったけれど、彼は足りなかったのかな。むしろ我慢させていたとなると申し訳ない気持ちになる。関口が言ったとおりにしていれば良かったのか。勿論、私だって須川としたくないなんて思っていない。ただ心の準備、正直怖いのが本音だ。もし彼が求めてきたら準備が出来ていなくても素直に答えてあげよう。きっとこの季節とは違い熱くなるに違いない。

 電車に乗りそう思いにふけていた。

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