第9話 高岸の悩み

 次の日の日曜、ハードな部活を終わらせて荷物をまとめている。確実に昨日食べたスイーツの分は消費したはず。とりあえずいつものように須川に連絡しないと。

「先輩、お疲れ様です」

 いつも絶妙なタイミングで高岸はやってくる。

「あぁ、高岸。お疲れ様」

「先輩この後予定ありますか?」

「予定? 特にないよ」

「よかった。ちょっとこの後、いつものカフェで話しませんか。相談したいことがあって」

「いいよ、分かった。じゃあ行こうか」

「はい!」

 私と高岸はカフェに向かうことにした。

 向かったカフェは学校の近くにあるチェーン店のカフェだ。下校の時刻になると私の学校の人たちのたまり場になっている。たまに高岸と二人でこのカフェに来ている。



「で、相談って言ってたけどどうしたの?」

 注文して席についた私は彼女に言った。

「実は……最近、塚本先輩の当たりが強い気がして……」

 塚本美加つかもとみか、同じ二年生のバレー部員だ。私との間柄は普通と言ったところだ。

「塚本? 塚本になんかしたの?」

「それが、心当たりがなくて……急に強くなったので」

「どんなことされてる?」

「うーん。私だけ雑用が多かったり。けど、それはいいんです。一年生がやることですから。それが以外だと、バッグを隠されたりするんです」

「マジ?」

 それってイジメじゃん。と思ったが彼女に変に負担をかけるのは辞めようと口には出さなかった。

「けどそれが何で塚本がやったって分かったの?」

「同じ一年の人が塚本先輩が隠しているとこを見て私に教えてくれたんです」

「なるほどね……それ最近の話?」

「そうですね。一週間位前ですかね」

 塚本の黒い噂は度々聞いていたが、高岸に被害が来るとは思ってもみなかった。

「そうなんだ……。なんとかしてみるよ。話してくれてありがとね」

「いえいえ! こちらこそありがとうございます。やっぱり先輩に話してよかった」

 高岸はペコリと頭を下げた。

 なんだかんだ可愛い子だな――と微笑ましくなる。だからこそ塚本の件はなんとかしないと。

「また何かされたら話してね」

「はい。それで先輩は最近調子はどうなんですか?」

「どうって……何が?」

「そりゃあ彼氏ですよ! 私知ってるんですからね!」

 えっへんっと言わんばかりに胸を張っている。

 彼女も相談してくれたし、私も正直に言っていいかな。一番慕ってくれている後輩だし。

「まあ、いい感じかな」

「いい感じ……ってことはやっぱりいるんですね!?」

「いるよ」

 高岸はかなり驚いた顔で私を見ている。知っていたんじゃないのか。

「で、何で彼氏いるって知ってるの?」

「えっと……勘ってやつです」

「だと思った……」

「けど、先輩が彼氏いても全然おかしくないですもん。彼氏さんも二年生ですか?」

「そうだよ。同じクラス」

「へぇ! 是非馴れ初めをを聞きたいです!」

 高岸の目が輝いている。完全に乙女の目だ。

「たいした話じゃないよ?」

「大丈夫です!」

「とは言ってもね……嫌いな人を罰ゲームでコクったら向こうがOKしちゃったから付き合ってるんだよね」

「え……そうなんですか。ていうかその時にネタバレしなかったんですか?」

「そんなの言えるわけないじゃん! 話したこともないし断ると思ったんだよ」

 それにネタばらしをしたら彼は一体どんな仕打ちをするのか――考えただけでも恐ろしい。

「えぇ。嫌いなまま付き合ってるの辛くないですか?」

「うーん……。最初はそうだったんだけど今はなんとも言えないんだよね。嫌いじゃないんだけど、好きでもないって感じ? よく分からないんだよね」

「へぇ……先輩も大変なんですね……」

「まぁ……」

「けど絶対上手くいきますよ! 見たことないけど先輩と付き合ってるならきっといい人のはずです!」

「ありがとう」

 ふふふ、と私は笑った。

「あ、すみません。そろそろ私帰ります。お母さんから連絡来ちゃって」

「じゃあ、帰ろっか」

「はい。相談に乗ってくれてありがとうがざいました」

「いえいえ」

 会計を済ませそれぞれ帰路に着いた。





『ごめんね! 後輩と話してて返信遅れちゃった』

 帰宅して着替え、ベッドに腰掛ける。

『大丈夫だよ。俺も遅いし気にすんな』

『ありがとう! 今日の部活大変すぎて昨日のスイーツ分は消費したかも』

『それは大変だったな……。お疲れさん』

『ありがとう』

『あ、そうだ。坂本さ』

『うん?』

 既読はすぐ着いたのだがここで返信が来なくなってしまった。

 どっかデートにでも行くのかな? どんな返事が来るのか気になってソワソワしてしまう。

 するとドアの向こうから私を呼ぶ声が聞こえた。夕飯が出来たのだろう。携帯を机の上に置き先に食べることにした。



 夕飯を食べ終え部屋に戻る。携帯を確認すると彼からはまだ返信は来ていなかった。

 何か言いにくいことでもあるのかな――そう思った矢先、携帯の通知が鳴った。

 私は急いで駆け寄って携帯を見る。

 通知の主はいつも一緒にいるグループチャットからだった。

「なんだ。グルチャからか」

 期待して携帯を見た私はそのグループラインのメッセージだったという事に少し落胆した。

 先にお風呂でも入ってくるか。そう思っていた所に須川からメッセージが来た。

『まだ起きてる?』

『うん! 起きてるよ。どうしたの?』

 また既読がつくがまた返信が来ない。本当にどうしんたんだろう。すると返事が来た。

『今度の土曜か日曜、俺ん家来ないか?』

 え、マジで!? す、須川君の家に行くの!?

 予想外のメッセージで私は動揺を隠しきれない。

 続けて須川からメッセージが来た。

『いや、嫌ならいいんだ。今週は親父がいないからさ』

『ちなみに変な事はしないぞ! その、良かったらでいいんだ良かったらで!』

 まだこちらから何も送っていないのに色々と来た。

 須川君の家か。どんなお家なんだろう。気になるなぁ。変な事はしないか……。須川君にならされてもいいかも……なんて……。って何考えてるのよ私は! 家にお邪魔するのも早いし、もう少し仲良くなってからの気もするけど……。

『日曜なら部活午前中で午後ならあいてるよ! 本当に行っていいの?』

『大丈夫』

『じゃあ、日曜日お邪魔しようかな』

『了解。部活が終わったら連絡して。迎えに行くから』

『分かった!』

 今週の日曜に須川の家に行く事になった坂本。

 男子の家に初めて行く……。どうしよう。緊張しちゃうな……。

 私は不安な気持ちと少しの期待で来週の日曜を待った

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