第7話 スイーツパラダイス(1)

 昼休み、私は昨日、須川とのやりとりを松田達に話した。

「へぇ! スイパラ行くんだ。なんか意外」

 三人ともやはり同様に驚く。

「でしょう。意外だよね。やっぱり調べたりしたのかな?」

「そうじゃない? 須川君が行くところ想像できないし」

 松田が言う。確かに私も想像できない。

「だとしたら可愛いよね。険しい顔しながらデート場所について調べてたんじゃない?」

 関口が半ば笑いながら言った。

「確かにそうかもね。いつもデート誘ってくるのは須川君からだし」

「へぇ! 彼、結構マメなんだね。たまには紗綾からも誘いなさいよ」

「そうは言っても……。まぁ次から誘うよ」

「そう言えば須川君ってよく喋るの?」

 小林が聞いてきた。

「うーん。他の人と比べたら口数は少ないかもしれないけど喋るよ」

「へぇ。喋ってるところ見てみたいわね。笑ったりするの?」

 今度は松田が言う。完全にロボットの様な言い草だが、そう思われても仕方ないだろう。

「うーん。あんまり笑わないかな」

「あぁそうなんだ。そこはイメージ通りなんだね」

 松田は苦笑いしながらが頷いた。

「けど思ってるより話しやすい人かな。ちゃんと話を聞いてくれるし」

「へぇ。人は見かけによらないって事ね。じゃあ土曜日楽しみだね」

「そうだね。少し楽しみかも」

「最初はさ、面白半分で言ったけど案外あんた達お似合いなんじゃない? 須川君も悪い人じゃなさそうだし」

「そう?」

 確かに彼は悪い人じゃない。これまでの須川を見ていたらそうだ。しかし、心のどこかで抵抗がまだある。植え付けてきたこれまでのイメージを中々払拭ふっしょくすることは出来ない。

 そのまま約束の土曜日を迎えた。






 土曜日、この日は少し早めに部活が終わり、ゆっくり支度することができた。沢山スイーツを食べられようにお昼は控え目にしておいた。少し横になって小休憩を挟み、家を出た。

 

 駅に着くと彼は既に待っていた。いつも待たせて悪いから早めにきたつもりだったのに。

「ごめんね! お待たせ」

「ううん。今来た所」

「須川君、着くの早いね」

「たまたまだよ。で、スイパラってどの辺にあるんだ? 俺も人づてに聞いただけで場所までは分かんないんだ。坂本分かる?」

「分かるよ。こっち」

 スイパラは駅から近い。それもあって松田達やバレー部の部員達とたまに行く。ターゲット層が高校生だからなのか価格もさほど高くない為、放課後は女子高生の溜まり場になる事もある。そんなスイパラに行ったらクラスの人に会うんじゃないか、と不安が頭をよぎる。

「クラスの人に会わないかな?」

「会わないだろ。多分。まあ、会ったら会ったで考えよぜ」

「うん」

 彼と話していると須川という鉱山を掘っている気分だ。誰も知らないような彼の一面。金銀を掘り当てるか、はたまた触れてはいけない危険な鉱石があるのかスリルな気持ちと楽しみな気持ちが湧いて来る。その時点で私は彼に惹かれているのではないか、はたまたそうではないのかという葛藤がこの前からあり、それが今も続いている。

 そんな事を考えていたら目的のスイパラに着いた。

「へぇ、ここなんだ。知らなかった」

 ボソッと彼は呟いた

 早速店内に入る。入ってみると予想とは裏腹に家族連れが多く見られた。先に案内され、食べ放題を注文してビュッフェ台へおもむく。

 ビュッフェ台に行くと沢山のスイーツが陳列している。種類が多過ぎて毎回、何を食べていいか迷ってしまう。

「うーんどれ食べようか迷うな」

「食い放題なんだから片っ端から取ればいいじゃねぇか」

 そう言って彼はどんどんお皿にのせていく。気付けば彼のお皿はスイーツが山盛りになっていた。

「須川君、凄いね」

「そう? こういうときにいっぱい食べないとな。坂本は何食べるんだ?」

「いっぱいあり過ぎて逆に何食べようか迷ってるんだよね」

「じゃこの辺は?」

 そう言って彼がさしたのはケーキコーナーだ。

「そうだね。無難にケーキ食べよ」

 私ははケーキを何個か取り、席に戻る。

「うーん美味しい」

 家ではあまり甘い物は食べないのもあって余計に美味しく感じる。

「うん。美味いな」

「須川君って甘い物食べるの?」

「食べないな」

 彼はきっぱりと言う。

「そうなんだ。じゃあ、なんでスイパラへ行こうなんて言ったの?」

「そ、それは。えっと、その」

 急に彼はしどろもどろになる。

「食べたくなったから」

 彼は開き直った顔で言う。

「そ、そうなんだ。けど確かに須川君がケーキとか食べてるの想像できない」

「別に嫌いとかじゃないんだけだな。家にあったら食べるし」

「へぇ、買ってまでは食べようとは思わない?」

「あぁ、それはあんまりないかも。坂本はやっぱり甘いもん好きなんか?」

「大好き。スイーツさえあれば生きていける!」

「へぇ……女子ってそういうもんなんか……」

 須川が若干引いて答える。

「け、けど流石に毎日は飽きるよ!」

 なんとか立て直そうと言い訳をするがかえって見苦しくなるだけだった。

「ケーキ美味いな。ちょっと取ってくるわ。坂本は大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ありがとう」

 あれだけ山盛りになっていたに、アッサリと平らげ彼はまた取りにビュッフェ台へ向かった。私なんて一回しかとっていないのに、満腹に近付いていた。昼食を控え目に食べたのが裏目にでたのかもしれない。一人で悪戦苦闘していると須川が戻ってきた。お皿を見てみるとまた山盛りになって帰ってきた。

「え、またそんなに食べるの?」

「ま、まあ……。よかったら食べるか?」

「いや……大丈夫……。私結構お腹いっぱい」

「マジか。時間あるしゆっくり食べようぜ」

「そうだね。少し休憩。それにしても須川君……ほんとによく食べるね」

「そう? 他の男子もこんなもんだよ」

「そうなの? そういうの全然分かんないから新鮮」

「ふーん。まぁ、そうだよな」

 須川の顔がどこか嬉しそうにも見える。

「やっぱり俺も少し休憩」

 彼もフォークをそっと置く。

 一通り見て回ったが、私の知ってる人がいなくて良かった、と胸を撫で下ろす。

 須川は松田達に言われた通り私達が思っていたほど悪い人ではない。むしろいい人だ。自分の中で彼に対する偏見をリセットしてまた新しく彼について見てみよう。私の心境も少しずつ変わり始めた。

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