第2話 憂鬱な日々

 夕食を終え、非常に憂鬱な気持ちでお風呂に入る。

 大好きなお風呂で気分も晴れるかと思ったがそんなことはなかった。

 ――まあここで後悔してもしきれないし潔く付き合おうじゃないの。よく見ると顔は普通にカッコいいし背は高いし、体格はいいし。うん。カッコいいはず。と自分に言い聞かせる。

 体を洗いしばらくしてお風呂から上がる。

 チャットを送らないと。 非常に面倒だが付き合ってしまった以上しょうがない。

 部屋に戻った私は早速送ることにした。

『坂本です! 今日はありがとう! 帰り道一緒に帰れて楽しかったよ!』

 ――女の子らしく絵文字も付けて……。こんな感じで送ろうかな。

 たかが一通送るだけのことなのに、こんなに億劫なのは初めてだ。

 しばらくして彼から返信が来た。

『俺もだよ』

 なんと簡易な文なのだろうか。ちょっとは気の利いたことは言えないのか。

 悶々としながらこの後、何回かやり取りして寝る事にした。





 次の日、私はいつも通りに登校した。

 彼と付き合う事を除いては。

 ――さぁ、あの三人に言うときが来た。私だってやる時はやる女よ。次の罰ゲームはもっとキツいやつにしてもらわないと。

 坂本はそう意気込んで教室のドアを開けた。

 教室に入ると三人は既に来ていた。

「あ、紗綾」

 小林が呟いた。

 すると他の二人も私を見て、どこか気まずい雰囲気を出している。

「昨日はホントごめん!」

 松田が手を合わせて言ってきた。

「いや、大丈夫大丈夫! ちゃんとあんた達の言った通り実行したわよ!」

 私は自信ありげに言った。

「……嘘でしょ?」

 三人は怪訝な顔をする。

「嘘じゃないわよ! 昨日あの後、課題忘れたから学校に戻ったんだ。そうしたら偶然会って、その時言ったのよ」

「で、結果はどうだったの?」

 関口が恐る恐る聞く。

「それが……付き合う事になりました」

「え、マジ?」

 小林が呟いた。

「あー……そうなんだ……えっと…….おめでとうじゃん!」

 三人は無理矢理私のことを祝福した。

「あまり嬉しくないけど……ありがとう。あ、時間」

 チャイムが丁度鳴り、席に着いた。

 

 

 放課後、携帯を見ると須川からチャットが来ていた。

『一緒に帰るか?』

 あ、やっぱり彼女として見てるんだ。

 付き合っているのだから当たり前だが、どうも実感がわかない。何せ初会話が付き合ってください――だって言うのあって尚更だ。

『ごめんなさい。今から部活なの』

『了解』

 もしかせて怒らせた? また絵文字も記号使わないものだから怒ってるのか、そうではないのか分からない。

『ごめんね。部活が終わったら連絡するね』

『おう』

 一旦やり取りは終了したので部活に向かう事に。



 

「今日、先輩元気ないですよね」

 聞いてきたのは後輩の高岸たかぎしだ。

「そう? そんなことないと思うけど」

「いいえ! そんなことあります! なんかミスも多かったし……ボーッとしてる時が多かったです」

 よくそんなに見ているな。半ば感心する。

「あ! もしかして好きな人出来たとか?」

 高岸はしめしめとこちらを見てくる。

「ち、違うよ! そんなんじゃないし」

「あ、先輩図星だ。誰にも言わないですから教えてくださいよ」

「嫌だよ。ていうかそもそも好きな人いないし」

 これから須川とどう付き合っていくか考えていたら頭がいっぱいになり、部活に集中できなかった――なんて口が裂けても言えない。

「なんだ。まぁ、教えたくなったら私、いつでも聞きますからね!」

 それじゃ! と高岸は駆け足で去って行った。

 なんとも騒がしいやつだ。まぁそこが可愛いところではあるんだけれども。

 彼女に呆れつつ、須川にチャット送る事にした。

『おまたせ。今終わったよ!』

 送ってみるも返信は来ず、返ってきたのは夜、今日はもう寝ようとしていた時だ。

『お疲れ』

 今頃かよ。今まで何していたんだ。

『ありがとう! 今日は一緒に帰れなくてごめんね』

『大丈夫だよ。そう言えば坂本って部活何やっているんだ?』

 初めて彼にに質問された。部活何してるのかと聞かれただけなのに驚きを隠せない。

『バレーだよ! 須川くんは何かやってるの?』

 何もしていないのは知っていたが、他に話すこともないのでここはあえて聞いてみた。

『いや、何も。家が複雑でな』

『あ、そうなんだ! 聞いてごめんね』

『大丈夫だ。坂本、今週の土曜日はあいてるか?』

『土曜? 土曜は部活も休みであいてるけど』

 土曜に休みだなんてそうそうないので密かに喜んでいたところだ。またあの三人と遊ぶのかなと自分の中で勝手に予定を立てていた。

『良かったらどっか行かないか?』

 彼からデートの誘いが来た。私は思わず携帯を二度見する。お言葉だが須川からこういう誘いをしてくるなんて驚きでいっぱいだった。とりあえず返信しないと。

『いいよ! 行きたい!』

『OK。じゃあ十時駅前集合で』

 あ、そこは行きたい所とかもう少し話が盛り上がるかと思ったけど、もう時間と場所指定されてしまった。まあこれが須川か。ていうかどこに行くんだろう。それも追々話せばいいか。

『はあい! じゃ、楽しみにしてるね』

『了解。じゃあ夜も遅いし寝るわ』

『うん。おやすみ』

『おやすみ』

 須川とデートか……正直楽しみじゃないんだけど……。気を使うし何話していいか分かんないし。

 私は憂鬱な気持ちで約束の日を待った。

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