参加者たち(2)

 不忍しのばずと言う男。その目の前に、このゲームにおいてユニークとは何のかと問わされそうな男がいた。


「それがお前のユニークか……武器でも何でもないな。それ欲しくなってきたよ」

 不忍は、砲丸を片手にそう言った。

 それは、10キロはあるだろう。それを易々やすやすと持って見せる彼の腕は太い。筋トレを毎日欠かさず行っている賜物だ。


 そんな彼は今、船内の高級レストランにいた。

 一定間隔に並べられたテーブルとイス。テーブルの上には白いテーブルクロスが被せられており、天井に、いくつもぶら下げられたシャンデリアが淡いオレンジ色を光らせ、レストラン全体の雰囲気を落ち着くものにしていた。


 しかし、そんな景観を壊す二人の男。

 不忍ともう一人……。

「どうだ、僕のユニークは! 君の鉄球じゃあ当たらないよ」

 余裕の笑みを浮かべそう言った男は、宙に浮いている。

 とは言っても体そのものが浮いているわけではない。彼のユニークがそうさせているだけの話だ。


「そりゃあ当たらないだろうな、避けるんだから。それよりお前のそれ、攻撃手段があるのか疑問だな」

「攻撃手段? あるに決まってるでしょ」

 男はスマホを操作し、二丁の拳銃を取り出した。そして、不忍に銃口を向ける。

「ああ、そう言えばショップがあったな。でもお前、それだと生存ポイントがいくつあっても足りないだろ。攻撃手段を手に入れるのに、いちいちショップで生存ポイントを交換するなんて、はずれなユニークにも程がある」

 不忍は、男のユニークを指さした。


 優雅に浮遊する物体は不忍の目の前をゆらゆらと揺れている。

「はずれじゃないね。嫉妬はよくないよ。座り心地いいし」

 男のユニーク、それは椅子であった。

 しかも浮遊する能力を持っている。


 椅子はロッキングチェアで、床に当たる部分、つまり、足が緩やかにカーブしている。男はそれに深く腰を掛け、体を預けている状態だ。


「君のユニークの方がはずれだと僕は思うけどね。だって投げるだけでしょ? 面白味も何にもない。僕の方がアトラクション的な感じで面白いよ」

「うざ……」


 男の癪に障る喋り方が、不忍を少しずつイライラさせる。


「ずっと座ってたら、ケツ痛いだろから、さっさと叩き落してやるよ」

 怒気の混じった声でそう言い放ち、砲丸を固く握った。

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