「それからの僕ら・1」

…昼休み、学校の非常階段で

日向ぼっこをしている僕らのもとに

転校生がやってきた。


「…ねえ、この街にカフェがあるの知ってる?

 なんか有名な宇宙飛行士がその家の出身って

 噂を聞いてるんだけど。」


僕とやっちんは、

その話を聞いて顔を見合わせる。


「もしかして、ユニバースのこと?」


やっちんの言葉とともに、

僕は転校生に確認する。


「若い夫婦がカフェにしてるあの店かな?

 中に宇宙関係の内装がしてあって、

 裏山がフォトスポットになってるんだっけ?」


すると、転校生は「そう、それ」と、

嬉しそうに手を叩く。


「ちょっと放課後にそこに連れて行ってくれない?

 ミカとトモカって前の学校の友達なんだけど、

 来週その子たちと行く前に先にお店の下見をしたくて。」


やっちんは僕を見て、

僕もやっちんに「いいよ」と、うなずく。


「近所だし、転校初日になんでも聞いてくれって

 俺が言ったからな。声をかけてくれて嬉しいぜ。」


そして、やっちんは立ち上がると、

転校生に手を差し出す。


「俺、やっちんって呼ばれてるんだ。

 こっちはマサヒロ。えーっと、そっちは…」


すると、転校生はこほんと咳をして、

同じように手を握り返す。


「ユウリ、隣町から来たの。

 これからもよろしくね。」


…そして、放課後。


僕らはユウリと一緒にお店まで行くことにした。


聞けば、もともとこのお店に来た目的は、

ユウリの友人であるトモカさんの希望だそうで。


彼女の弟さんが重い病気を患っていた際に、

ある大病院の女医さんに手術をしてもらい、

一般生活を送れるまでに回復したのがきっかけだったという。


「最近になって、その人が宇宙飛行士として、

 四回目の宇宙に行くってニュースを聞いてびっくりしたわ。

 でも、知れば知るほど、その人の足跡がすごくてね…」


そんな話をしているうちにおしゃれな屋根が見え、

みんなで「わー」とのんきな声をあげる。


…そこは、こじんまりとしたカフェであり、

上にかかった看板には『Universeユニバース』と

おしゃれな筆記体の英語が書かれていた。


店内はユウリの言う通り宇宙を意識したものか、

惑星の写真や望遠鏡が飾られており、

そこにちょこちょこと小さなぬいぐるみが置かれていて、

なかなかおしゃれな内装になっている。


それらの中には、一人の快活そうなおばあさんが

お店のオーナー夫婦と仲良く写っている写真もあり、

他にも彼女が宇宙服でポーズをとっているパネルや、

ロケットに乗り込む前に手を振る写真もあった。


「あのおばあさんが宇宙飛行士のマイコさんね。」


そう言ってユウリが関心した声をあげると、

奥の厨房から写真に写っていた若い女性が顔を出した。

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