「ファーストコンタクト」

「…あなたが、しゃべってるの?」


少女の声は小さくかすれていて、

どこか話すことさえ、

ためらっているように感じる。


キューブはその質問に対し、

快活に答えた。


『ええ、私たちは惑星の生命の発展を見ていくため、

 各星々にとどまり過去・現在・未来の情報を統合し、

 次の惑星にそれらの文明をつなげていくことを目的とした、

 キューブ型の知的生命体です。』


「ちてき…せいめいたい?」


少女は目の前のキューブの言葉が

理解できず首をかしげて見せる。


『平たく言えばこの惑星の人々の未来へ繋がる

 お手伝いをするお仕事をしているのです。

 …ところでお嬢さん、お名前は?』


そこで、ようやく少女は自分の名前を

聞かれていることに気づいたらしく、

たどたどしく名前を告げる。


「マイコ…駄菓子屋がお家なの。」


すると、キューブは『ふむ』と

声を出すと、こう続けた。


『マイコさん。私とあなたは、

 今はまだテレパシーで会話をしている状態ですが、

 将来的にはこの惑星の情報媒体などを使って、

 より多くの人と会話ができるようにしたいと考えています。』


キューブはそう言うと、

ふわりと空中に浮かび上がる。


『その頃にはこの惑星全体の技術も向上し、

 我々を使って、人は過去や未来に飛ぶことも、

 どのような願いを叶えることも可能になるでしょう。

 …では、マイコさん。』


燐光を投げかけながら、

キューブは少女に話しかける。


『我々は過去・現在・未来と情報を共有することで

 未来の技術を現在に持ち込むことが可能なのです。

 マイコさん、あなたは最初に我々に接触した生物。

 そのファーストコンタクトの証として、

 どのような願いでも一つ、叶えてあげましょう。』


「…え?」


少女はキューブに問いかける。


「どんな…願いでも?」


『そう、どんな願いでも。』


それを聞いた少女の口元がほころびかける。


「じゃあ…」


瞬間、少女の目からすっと光が消えた。

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