「帰宅後、父に聞く…」

ナンバーずのアヒルをスタンプした後、

僕はやっちんの家から自宅へと帰っていた。


母さんは台所で夕飯のシチューを作り、

父さんは居間でテレビを見ていた。


「お、今日はちょっと遅かったな。」


父さんは僕の姿を認めると、

声をかけてきた。


「どうした?やっちんの家で

 面白いゲームでもしてきたか?」


僕は父さんに「まあね」と答えておく。

すると父さんはうらやましそうに僕を見た。


「いいなあ。父さんも学生時代に夢中になったゲームがあってな。

 二泊三日で借りてエンディングまで完徹して頑張ったもんだ。

 隠し要素までクリアできなかったのが今でも心残りでな…」


…いやいや、そんな話聞きたくない。


そのときふと、僕は先ほどアヒルに

見せられた幻覚のことを思い出した。


そうだ、昨日と今日、

僕らがスタンプラリーの会場として

移動させられた施設。


それについて両親は何か知っているのだろうか。


僕はそれとなく最近のニュースに話題そらしながら、

閉鎖になった県外のプールについて話そうと口を開く。


だが、開けたところで僕は気づく。


…あれ。そんな施設、本当にあったっけ?


思い返せば、僕のいる街に

そんな大型のショッピングモールはないし、

県外のプールで最近そんな大規模な事故が

あったなら今でも話題になっているはずだ。


だが、テレビのニュースでしているのは、

どこどこの議員さんが当選しただの、

どこどこの農家が今年はりんごが豊作だの、

ありふれたものしかしていない。


そこで僕は、再びテレビのニュースに

目を向ける父さんにこう聞いた。


「ねえ、父さん。最近ニュースとかでしている

 行方不明事件について何か知ってる?」


すると、父さんは僕の方を向いて困った顔をした。


「…それは、難しい質問だな。

 行方不明事件というのは常に全国各地で起きているからな。

 誰々がどこどこで見つからないというのは日常茶飯事。

 だから、父さんが何か知っているかと言われれば、

 ニュースで見たこと以上は知らないな…すまん。」


そう言われれば、仕方ない。


「そっか、ごめんね。」


そして、二階の自分の部屋に向かおうとする僕を、

父さんは不意に引き止めた。


「ああ、そういえば。お前がひいきにしていた駄菓子屋、

 お婆さんが病気で入院して昨日で店じまいにしたそうだ。

 シャッターも閉まっていたし、張り紙も貼ってあった。

 ま、落ち込むな。そんな顔するもんじゃないぞ。」


そう言って、父さんは僕を引き寄せると

元気を出させるためか僕の頭をぐしぐしと撫でる。


でも、僕は落ち込んでなんかいなかった。

落ち込むよりも驚いていた。


では、僕らが昨日行った駄菓子屋というのは、一体…?

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