今宵の夜伽は、君に捧げる。

作者 美澄 そら

物語の空間に導かれるとはまさにこのこと

  • ★★★ Excellent!!!

誰も知らない海の、どこかに浮かぶ島国「伽羅国」。そこには性格や性質を異にする王子が三人いらっしゃって。その王子たちと仲良く暮らしていた女の子、朱衣。ある日、彼女の前にはあやかしの「夜伽」が現れた。夜伽により、少しずつからまり、そしてほどけていく王宮の物語――。

読書を終えた直後に思ったのですが、とにかく文章がうまかった。架空の国を想定して書かれているのですが、食事や着物、風俗や文化などにはなんらかのモデルを定めているはず。それらの資料と設定がうまく融合されており、まるで物語の世界にポンと置かれたような間隔を覚えました。馬で駆ける野山、王宮の夜、祭りの盛り上がりなど、頭の中でしっかりとイメージしながら楽しむことができました。これは他作ではなかなか見かけられないうまさだと思います。この筆者、元々このような場景描写がものすごく上手なのです。目のつけどころが違います。まるで書店に並んでいるくらいに達者な場景描写と文章のテンポ、これは絶対に見どころの一つになりえると思います。

それから三人の王子と「夜伽」というあやかしがメインで出演するのですが、それぞれのキャラがものすごく立っている! 長兄の白麗は病弱で書を愛し、次男の紅晶はものすごく色気があって一生懸命。三男の碧英は猪突猛進タイプなのに実は自然を愛し、夜伽は最初から最後まで変態(失礼!)でありながら誰よりも優しい心をもっています。思いやりの心です。三兄弟はそれぞれ作中で成長していくのですが、夜伽の心も最初と最後では違っているのではないかと思います。
そして……この四人に共通することがあります。
全員が熱い心を秘めており……加えて……。

イケメンなのです!

やばい! やばすぎる! 筆者は絶対ににやつきながら書いた! 間違いない! もちろん読者もにやける! 四人全員が「主人高級」の魅力を備えているのです。さあ、あなたは誰を選ぶ!? 最後の最後まで恋のゆくえはわからず、わたしを含む読者はぞわぞわきゅんきゅんしながら楽しむことができるでしょう。すばらしいよ。いいなぁ、朱衣ちん……。

で、あなたは誰がタイプだったかって?
えっと……夜伽くんカナ(笑) だって変態なんだもん! めっちゃ変態でやらしいのに、聡明で熱い。優しい。理想的な男性像でした。眼福です。

このように、「ここではないどこかで」あなたは誰もに愛され、あなた自身のお気に入りの男性へ心を寄せることができるでしょう。もちろん男性が読んでもおもしろい! かっけー! やべー! ってなること請け合い!
ふむふむ。これが。

物語の空間に導かれる、ということなのでしょう。
物語の要を押さえた、すばらしい一作でした。

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