第154話 魔界復興同盟第4位・マルシアス
「って、魔界復興同盟の幹部かあれは」
「おとなしくここに保管している眩き球を引き渡せ!でないと全員死んでもらうぞ!この魔界復興同盟現第4位、マルシアス様に逆らうならばな!」
そこにいたのは、魔界復興同盟のナンバー4、マルシアスと名乗る魔界人であった。
幹部たちの変化に気付きながらも、どうすればいいか分からずしかも組織が崩壊しつつある中で、彼は当初の目的を達成しようと独自に動いているようである。
「調子に乗るなよ手前!お前らの目論見なんざ俺が叩き潰す!」
「……幹部さんのしかも序列が上の方ですね。1つお聞きしてもよろしいですか?」
「何じゃ貴様は。ぬっ!こやつ途轍もない力を。ソロン様よりも、上の存在か?」
「あの、驚いているところ申し訳ないんですけどぉおお!!!」
「うおおっ!何じゃね聞きたいこととは」
マルシアスの脅迫に対し五丈厳が殺気立って言葉を返すが、ハーネイトの途轍もない大声と言葉に意表を突かれたマルシアスは仕方なく、ハーネイトの話を聞こうとする姿勢を見せる。
「もうすぐ魔界の環境は私の作った装置で改善する。これ以上異界化装置を使ったりソロンを蘇らせる必要はないはずだ」
「何をでたらめなことを言う」
「でたらめかどうかは、再生していく魔界の姿を見てきてから言って頂きたいと思います!」
ハーネイトがとても営業的な笑顔を見せながらそう言うと、マルシアスの傍にいた天魔ミゴトアが手にしていた本の様な通信端末を見て青ざめていたのであった。これは魔界の住民が作り上げた遠隔地の画像を見ることができる鏡のようなアイテムである。
「マルシアス様!魔界の空が……!」
「な、なんということだ!常に暗雲で満ちていたあの空が、1000年ぶりに……!おおお、これが、先代たちが望みながらも見ること叶わずに死んでいった、蒼き空、なのか。美しい……!おおお、おおお!」
マルシアスは、従者であるミゴトアのもつ端末の画面を見て、とても慌てた様子で食い入るようにその映像を見ていた。
そう、多くの魔界の住民が願っていた、途方もないほどの分厚い雲の彼方にある空を見ること。それが1000年ぶりに叶った瞬間であった。
これは、ハーネイトがフューゲルに送った環境改善装置によるものであり、正常に機能していることを確認しホッと胸を撫で下ろす彼であった。
「フフフフフ、これが私の力です。少し時間がかかりますが、これからより環境はよくなっていくと」
「これでは、あの魔人どもを潰すことが……できないではないか!」
「やはりそうか、先に魔界を再生させて、魔界全体の統一に関して強く発言権を持てるように暗躍していたわけだな。魔界復興同盟の皆さんは」
「……率直に申し上げよう。環境改善の点については大変感謝する。だがもう後には引けないのだ。統一戦争を制するのはこの天魔の一族である我らだ!」
「あれ、Dカイザー様も天魔の方では?元気にしているかな……あのおじさん」
魔界復興同盟はどうも、他の勢力と争っており、誰が一番に魔界を元に戻すかで競争をしていたようであった。
そのために異界化装置や魂食獣、更にはソロンを蘇らせることでその力を用いて元に戻そうと長らく暗躍していたのであったが、予想外の展開に驚きを隠せない2人であった。
つまりこの時点で、魔界復興同盟の目論見は完全に崩れ去ったのであった。それを見越して、ハーネイトは少し前にフューゲルに対し改変装置を渡していた。
これは、長い付き合いである2人の連携によりなされた作戦であった。今はそれよりも、血徒に関する問題の方に追われているようであり、フューゲルとその仲間たちは血徒から事実上離反した微生界人らと手を組み調査をしているという。
マルシアスは変わっていく魔界の光景に動揺していたが、しかし伝承に聞いた魔界の空。それを画面越しでも見ることができ食い入るように見ていた。
それに畳みかけるように、ハーネイトは降参すべきだというが彼はどうしても応じない。
しかし天魔一族だと聞いたハーネイトはある悪魔の名前を出した途端、マルシアスはさらに目を丸くする結果となったのであった。
「な、何故知っておるのだ、あのお方のことを!」
「知っているも何も、私の父の知り合いというか、フォレガノを蘇らせようと利用してきたというか」
「……貴様、まさかあのフューゲルの言っていた男だな!」
「わかりました?」
「よく分かったぞ。最後の神造兵器だな。究極にして終焉をもたらす者、か。世界を壊し再生するための……そうか」
マルシアスは尊敬していたが行方不明となっていたある悪魔の王の名を聞き、目の前にいる若い男がライバル組織の知り合いである、異世界の英雄であることをようやく認識したのであった。
「先生がどんどん追い詰めていくせいで俺ら出番ないな」
「まあ、楽できそうならそれでいいんじゃない?」
「んだんだ話なんかせずに、早く戦おうぜ」
「先生には何か考えがあるはずよ。先生の兵法には、敵も引きずり込むという戦術があるわ」
マルシアスとハーネイトの少々グダグダなやり取りを見ていた翼たちは冷静に判断しつつ、楽できそうだなと思う翼や響たち、血の気が多い五丈厳やサインと2つの勢力に分かれ傍観していた。
「確かに、貴様の言うとおりだが……それでもな!ソロン様なしに真の魔界救済はできぬのだ!それだけは、事実なのだ!でないと、犠牲になった同士に顔向けできんのだ!エフィスが渡してきたこれを、使ってでもなぁああああああ!」
「まずいぞ、マルシアスは変身するはずだ」
そうマルシアスは叫ぶと、デモライズカードをどこからか手に取り背中に貼り付けた。それを止めようとした時、間が悪くドガの具合が悪くなり始めたのであった。
「先ほどから脳が痛い……うぐ……っ!」
「ドガさん大丈夫ですか?」
「脳内で、妻の声が……っ」
「違和感があるなと思ったが、響たち、前にドガさんにあった時、何か見えただろ?」
「はい、確かに見えました」
この男も、目覚めようとしている。しかし今の状況で万全の処置を施すのは難しい。それにいつどこで、力に目覚めかけたのか分からないため響たちに確認しつつ、今どこまで症状が出ているか確認した。
「どこで条件を満たしたかは不明だが、発作が出ている」
「そういうことか、一度でも目覚めかけた人たちは、強い霊量子の波動に反応しやすい、それが蓄積すると幻霊の症状までのタイムリミットが早まるというわけか。ただでさえ異世界の住民は強い波動を持っているものが多いしな。この環境とマルシアス、霊量士たちの力を受ければ仕方のない話だ」
「でないと、説明がつきません、かも先生」
「時枝君、それ私も分かるわ。あの時だって、あの化け物に近づいてから調子がおかしかったわ」
ハーネイトは今まで疑問に思っていた、半覚醒者の真の開放までにかかる時間がまちまちであることに関してある結論を出した。そうでないと、今までの説明がつかない部分が多かったためであった。
それを聞いた時枝と間城らを含むほとんどの人が、自身もそうだと言ったのであった。
「とにかくドガさんを早く連れて後退するんだ!元から半覚醒状態だった彼に、あの波動はきつすぎる。ミレイシアとエスメラルダ、シャックスで布陣を作って守るんだ」
「了解!」
「ええ、かしこまりました」
「ハーネイト様は眼前の敵を!」
ハーネイトは見かねてドガを守るように部下たちに指示を出し、ミレイシアが護衛に関して臨時リーダーとなり後は任せたというと、ドガを抱きかかえながら2人を連れつつその場を離れた。
「奴の変身はデモライズカードによるものだが、相棒、あれ剥がせるタイプだ」
「マジか、だったら!」
「お前ら、あれの足止めくらいはできるか?」
「や、やってみるっすよ伯爵ニキ!」
「やるしかないわねカラミティ。仕掛けるわ、ツインスターズバレット!」
既に肉体の変化が始まっているマルシアスに対し、伯爵は分析の結果この前交戦したゼシルバルフの使用したのとは違うタイプのカードであることを見切り報告する。
それを聞いたハーネイトは各員に指示を出し、それにいち早く動いた翼とジェニファーの連続連携攻撃でよろめいたマルシアスに対し、ハーネイトらはデモライズカードを剥がし吹き飛ばすために大技をそれぞれ繰り出した。
「紅蓮葬送・紅蓮巨腕(クリムゾンプレッシャー)!さらに、CPF・封霊失歌(ふうれいしっか)!」
「醸せ、菌幻自在!ぶっ醸すほどグレイトだぜぇ!」
「壊嵐脚・技駕竜巻脚(ギガトルネード)」
ハーネイト、伯爵、サインの3人は各自大技を繰り出し、マルシアスの体力を削ることで動きを鈍らせる。更に動きを止めるため指示を受けた五丈厳が、スサノオを呼び出しマルシアスの足元を殴る。
「響、時枝!彼の背中に張り付いているあれを攻撃で剥がせ!」
「了解先生!行くぜ、疾風斬!」
「吹き飛ばすぞミチザネ!雷落!」
ハーネイトの指示で体力を削られたマルシアスに対し、響も時枝も攻撃を加えた。それにより張り付いていたカードは衝撃でボロボロになり、徐々に粉々になりながらマルシアスの肉体から離れたのであった。
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