第89話 スカーファと大和の関係?
「え、ま、まじ?なぜ……?あの人、あれを感じて触れることができる、だと?」
「げ、あの女まさか!やっぱりか」
「何だ貴様らは。ん、お前はどこかで見たような……ふむ」
思わず困惑するハーネイトに気づいた彼女は、彼らのもとに歩み寄る。ばれたと思いハーネイトは物陰から出て彼女に声をかけたのであった。
「どこでその力を、手に入れたのか」
「そう簡単に教えると思ったか」
「そうですかい、しかし何でこんな所に。まさか、あの黒い袋の薬と関係があるか」
「貴様、なぜそれを!」
ハーネイトはかまをかけて薬の件について話題を持ち出した。すると彼女に反応が見られる。そこで彼は自己紹介を簡潔に行う。
その間に追いついた大和も息を少し切らしながら話に入り、やはり知り合いだと分かると焦る。
「私はハーネイト。隣の春花で探偵業兼万屋をしているものだ」
「そうか、私はスカーファ。故郷アイルランドで起きている麻薬事件と、紅き流星の件を追ってここまで来た!それとそこの帽子男、名前は……っ」
「鬼塚大和と申しますが……やはりあんたか!」
彼女の名前はスカーファ・ケルティムネイト・ノイエジーナというアイルランド人で、普段は英語の教師をしながら裏ではある組織の諜報員として活動しているという。
彼女は大和の顔を見ると何かを思い出し凍てつく表情を和らげた。
「大和、ああ、あの時のか。……久しぶりだな、フフフ」
「知り合い、なのか……?このモデルさんみたいに綺麗な人と?」
「知り合いというかな、ある意味ライバルと言うか」
スカーファは大和に声をかける。なんでも数年前に偶然出会ったという。しかし出会った経緯は頑なに話そうとは彼はしなかった。
仕方ないのでハーネイトはそれについては後回しにして、このスカーファと言う女性の能力の高さが気になりこちら側に来てもらうように画策する。
「この人と知り合いなのか大和さん……そうか、だったら協力関係、結ばない?」
「……どういうことだ若者。私は故郷で起きている事件を解決するためにここに来たのだ、そなたは何をしにここに来た」
「売人を倒しに来たのさ。どうも人間ではない可能性が高いようでしてね」
「何だと?」
ハーネイトは自分らがその薬を売る売人を追っていることを説明したうえで、彼女に対し共に探さないかと提案し勧誘した。だが理由が分からない彼女は当然そういった返答をする。
「私は貴方に宿っている力をもっと引き出すことができます。正確には仲間にそういうのがいますがね。それと、私たちも同じ事件を追っているのです。その裏には……いや、今は言えないな」
「私も彼に助けられ、色々教えていただいていますがね」
「いまいち要領を得んが、兎も角薬の売人を追うというのは共通の話だな。だが、私に宿る力だと?」
ハーネイトは冷静に、彼女に宿りし具現霊のことについて話したうえで、まだ完全に制御できておらず目覚めていないということについて説明し、その上で事件の捜査をしているので共同して解決する益はあるだろうと提案する。それを補助する形で大和も彼に助けられたと言いアピールした。
「よく自力でそこまで引き出しましたね。ですがまだ完全ではないです」
「どういうことだ、ハーネイト」
「そのままでは、貴女は力に飲まれ制御できなくなるでしょう」
「何?」
ハーネイトの言ったことは事実であった。確かに精神力次第では割とどうにかなるかもしれないが、知らないうちに体や精神に負荷がかかっている状態、それが今の彼女であった。
だがハーネイトやその仲間たちならばそれを安定化させることもできる。そうなれば、スカーファも完全に現霊士となれるのである。
彼は彼女を見て、すさまじい素質だと評価していた。恐らく攻撃に特化した具現霊になる。それは今後の作戦に関して重要な点でもあるため、だからこそどうにかしたい。思わずそう言葉を口にしたのであった。
「それで、ついて行けば制御の方法を教えるとな」
「はい。同様の能力者が私のもとにたくさんいますので、彼らと鍛錬を積めば一流の霊量士になれますね。素質は十分であるのを目で見ましたから。それと、その売人の特徴や出没するエリアなどの情報、紅き流星についてもある程度情報を持っています」
「そうだぞスカーファ。今起きている問題は今まで解決してきたものとわけが違う。別世界の住民が薬をばらまいているとしたらどうする」
ハーネイトと大和の言葉にスカーファは少し戸惑いつつも、自身が長年悩んでいた悩みを解決できるというのならば乗らない手はないと思っていた。
また、大和の発言が気になりこれは彼らについていった方が色々探れると彼女も判断しどうするか答える。
「私の求めている情報を幾つも持っているなら早い話だ……そうだな、この事件を解決した時に改めて答えを言おう。今はその売人を探さなければな」
「分かりました。では行きましょう」
既にスカーファはこの人たちの仲間になろうとは決めていたものの、悪い癖でわざとそう言う。それから彼女は、一応2人に同行しようと告げ、結局3人で街中を探索することにしたのであった。
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