10.52.次から次へと
パッと聞いただけでは関係のない様に感じる話ではあるが、これは重要な違いであると鳳炎は考えていた。
復活阻止の方法としては、成功していたのだ。
ガロット王国からすべての国民を外に出し、魔力で魔力だまりに蓋をしている状況をなくした。
復活するための魔力はこれで放出されたはずであり、一気に四体の声が出現することはなかったはずなのだ。
悪魔もガロット王国にある魔力だまりを放出させれば、まだ復活しないと思っていた。
だがそうではなかった。
魔力だまりの魔力の放出を成功させたが復活したということは、他に何か要因があったということになる。
それが、声を信仰するバルパン王国の人間の存在と、天使の出現。
これに何か手掛かりがあるはずだ。
「天使が人間に何かした、というのが私の考えではあるが……。ダチア。天使とは何処で出会ったのだ?」
「最後の人間の城、ヴォルドラ王国を攻め入った時に戦ったな。本当に最後の最後に出てきた事を覚えている。悪魔数名の記憶を消され、敵対してしまった」
「記憶の
鳳炎が記憶を消したのは……天使の仕業だったのね。
ああ、そうか。
このことも悪魔たちは喋れなかったんだったな。
でも鳳炎が記憶を消された時、俺の操り霞の範囲にはラックしかいなかったんだけど……。
範囲外で記憶改竄技能を発動させたとなると、厄介かもしれないな。
的確に鳳炎狙ってきたし。
発動条件が緩いと発動範囲も広がるだろうから……。
ていうか知覚していないのに記憶消されるってのは面倒すぎる。
そこで鳳炎は再び話し出す。
「奴らの別の復活方法……。だが天使が何をしたのか分からない以上、考えても無駄かもしれない。バルパン王国にはシャドーアイがいるが……狙われる可能性もあるからあまり派手に動かしたくはないな……」
「隠密部隊だからって万能じゃないですからね。敵が声たちの部下である天使であれば、難易度は跳ね上がるかと」
鳳炎の言葉に、ローズが反応した。
天使とか未知数だもんな。
存在を知ったのもつい最近……っていうかさっきだし、記憶を消す技能を持っているあたり悪魔に似た技能を多く持っている可能性があるから、無暗にかかわるのは危険でしかない。
とはいえやらなければならないことなのだけど……。
できれば何か天使の情報を集めてから教会などの調査を行ってもらいたいが、そんなに悠長にしている時間もない。
こういう時はどうしたらいいんだ。
いやまぁ、調べないと情報は集まらないけどさ。
このまま情報収集に行ってもらうの怖すぎない?
でも、なーんか思いつきそうなんだよなぁ。
「んー」
「ローズちゃんの言う通りだねぇ。僕たちと戦ったシャドーアイ? だっけ? 今の状況では調査もできないでしょ。天使が現れたばっかなんだからさ。それに話を聞く限りその信仰心もずいぶんなものじゃあないの。天使が仕えている神こそが声、とか言いふらしたんだろうけどさ」
「姿だけみれば普通に神々しそうっすからねぇ~。何も知らない人であれば、神の使いとか言われてもすぐ信じるっすよ」
「私もそう思う……」
「お、カルナもそう思うっすか?」
「うん」
「んー……」
俺が再び唸ったあと、ダチアが話し出す。
「天使は存在を隠し続けてきた。戦争で魔力だまりが存在する二つの国が落とされても最後まで出てこなかったんだ。出現するのに何らかの条件がいるのか、それとも最後の切り札として残しておかなければならない存在なのは分からないが……」
「後者であれば、私の記憶は消されなかっただろうな。声が敵だということに気付いた私の記憶を的確に消してきたところを鑑みるに……今の話の中であれば前者である可能性が高い」
「ねぇ、そもそも今は天使の出現条件なんて考えている場合じゃないんじゃないかしら? さっさと打開策考えなさいよ」
「「それもそうだな」」
「んー……」
ユリーの言葉に二人は頷く。
出現条件など、どうだっていい話だ。
今はとにかく、天使が何をして声の復活を手助けしたのかを考えなければならない。
それと、声の倒し方を。
「天の声は大幅に弱体化した。あいつが死ねば他の声も弱体化する。加えて地の声も少しは消耗したはずだ。陸の声は使う技能が割れているから戦いようはある。本体は無駄に生命力が高いだけで、接近攻撃は得意としていなかった。問題は……空の声だ」
「よーんーだー?」
その声に、全員が上を向く。
ふよふよと空を漂うように流れる空の声が、こちらを詰まらなさそうに見ている。
眠そうだ、というのがいいかもしれない。
全員が一気に戦闘態勢を取る。
マナは気絶しているアレナを守るようにして下がった。
俺は未だに考えている。
「次から次へと……!」
「いやぁ~、
空の声が両手を開く。
パチパチと軽い電撃が手の間を走り回っていた。
「……天使……神……信仰……記憶……。弱体……干渉……。ん?」
「応錬構えろ!! なんかしてくるぞ!!」
「ちょ、ちょっと待って!」
待てよ?
声たちは俺たち四人にしか干渉できなかったんだよな?
それを手助けするのが天使だったとして……。
だから声の存在を知っていたのは……数人だった?
「あ!!」
「おやすみぃ~」
パァンッ!!
衝撃波がこの場にいた全員を襲った瞬間、意識は刈り取られた。
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