第3話 モテモテな学園生活は悪くない

三人の美少女と共に登校するイツキを見て、羨望の眼差しが向けられている。

でもその声はやはり「イツキ様はカッコいいから仕方ないよねー」の声が多い。

男子たちも「イツキなら許せる」と言われ、別に何もいざこざなどは起きない。

ルリはイツキから離れることもなく、ただひたすらにベタベタと触ってくる。

「ちょっと、ルリ……触り過ぎだって」

「ルリはずっとずっとイツキくんの近くにいたいのだ」と、笑顔で返されてしまう。ったく……本当に仕方のない奴だ。

「とりあえず離れてくれ。ルリ」

「えーヤダヤダ。ヤダァー」

「ちょっとイツキを独り占めとか絶対許せないんだけど! さっさと離れなさいよ! それとアンタはただの元カノだから!」と美穂がイツキの左腕を取る。

「早く兄さんから離れてください! もうあなたは振られていることをお忘れですか?」と真夏が右腕をぎゅっと強く握ってきた。

二方向の腕に当たる感触は全く違う。だが、どちらとも柔らかい。

「だって、ルリ。ずっとずっとイツキくんに会いたかったんだよー。それなのに、全然会えなかったんだもんー。それにLIMEで連絡したのに、返事がなかったしー」

「兄さんはあなたのような暇人ではないのです」と真夏が誇らしげに語る。

「へぇーアタシは普通に連絡あったけど」と余裕の表情を見せ始める美穂。

「ええー。イツキくんー。それ本当なの?」とルリが涙目でこちらを見てくる。

「忙しかったという点は正しいな」

「何をしてたのー?」

「ええとだな……人助けみたいな?」と頬を掻きながら、答える。

「流石はイツキくん!」と目を輝かせてくる。

「……はぁー兄さんは本当に困った人です」

「……あ、またやってしまったんだ」

真夏と美穂が二人揃えて肩を落としてしまった。

「んー? どうしたんだ、二人とも」

「だって、兄さんが人助けをすると、皆んなが皆んな惚れてしまうもんー。正直、わたし的には他に女を作られるのは困るです」

「アタシも同意見……。これ以上、敵を作りたいし。まぁ、アタシが勝つことに変わりはないけど」

「あのなー、でも困っている人がいたら……助けないわけにはいかないだろ?」

「そこが兄さんの良いところだけど……もっとわたしだけを見て欲しい」

「……同感」

「俺は二人共をしっかりと見てるよ。最近、真夏は勉強に力を入れてる。そして、美穂は料理に力入れてるだろ? ルリは香水の匂いを変えた」

「……兄さん」「イツキ……」「イツキくん♡」

三人が三人、顔を真っ赤にさせて、恥ずかしそうだった。

時計を確認すると、もう遅刻ギリギリの時間帯だった。

「おい、もう時間がないぞ。三人共、急ぐぞ!」

「入学初日に兄さんの妹として遅刻は許されない!」

「イツキ、アタシは一生付いていくわ!」

「イツキくんとなら、別に遅刻しても良いかな?」とチラッとスカートの裾を上げ、ルリがアピールしてくる。

もちろん、完全無視だ。ルリは後ろから渋々と慌てて、付いてきた。

だけど、運動には自信がないのだろう。あまり早くない。

だからイツキはパッとルリの腕を掴む。その姿を見て、他の二人が「ええっ!」「ルリだけずるーい!」と言っていたが、イツキは無視一択。

「……やっぱり、イツキくんのことだーいすーき♡」


 俺だって、一生懸命頑張る人間は嫌いじゃない。


「もう聞き飽きたぞ、その言葉。ほら、急ぐぞ」

「何回でもいうもーん。それに何回でも言いたい。イツキくんのこと、こんなにも好きだってルリは声を大きくして何度でも」


学校へ辿り着くと、生徒玄関先に新入生の貼り紙が張り出されていた。

かなりの人集りである。やはり遅刻ギリギリに走ってきたということもあり、新入生達からの視線が集まった。

「……ねぇねぇ、あの先輩。かっこよくない?」

「本当かっこいいー」「誰? あの人の名前知りたいよぉー」

「この学校に来て本当に来て良かったぁー」

そんな声が聞こえてきた。

「やはり……兄さんは放って置けません。ここは兄さんの妹としてわたしが……」

「ははは、別に良いじゃないか、真夏。それにお前のことも噂してるみたいだぞー」

「アレって真夏様じゃないか?」

「ええーあの人が真夏様! か、可愛いー」

男子達の声も上がってきている。

それに残り二人の声も。

「あの先輩……めっちゃ胸デケェー」

「おい! あっちの銀髪の人も超絶可愛いぞ! おいおい……どうなっているんだよ。この学校! レベルが高すぎるだろ!」

でも一番聞こえてきたのは、俺に対する「かっこいい」とか「羨ましい」などの声ばかりである。ただ、自分に対する噂だから意識しすぎて多く感じただけなのかも。でも以前から、噂される側だったけど……悪くはないな。

一人だけなら恥ずかしかったけど、今日は他にもいるし。

横を見ると、真夏の身体が若干ながら震えていた。

「大丈夫だよ、真夏」

「えっ? 兄さん」と目を見開いて、真夏が驚いた。

「一年生はみんな良い人そうじゃないか。それに……何かあれば俺に言え」

「に、兄さん……」

「ほら、頑張れ」と、真夏の背中を押す。

すると、真夏は数歩だけ進み、こちらを振り向いた。

「あ、ありがとう。兄さん」と満面の笑みを浮かべ、そして真夏は玄関先へと向かっていった。

イツキは真夏の背中を見ながら、ふと昔のことを思い出していた。


昔から真夏は引っ込み思案だった。だから俺がいつも背中を押していたっけ。

何だか、とっても感傷的な気持ちになってしまう。

親鳥が巣立っていく雛を見送るような気持ちだ。


「わたし達も見に行こ! イツキ」「イツキくんー。早く行こっ!」

「あぁ、そうだな。それにしてもクラス替えは緊張するなー」

「う、うん。緊張する。今年はイツキと一緒のクラスになりたいなー」

「ルリもイツキくんと一緒のクラスがいいなー。去年は一緒じゃなかったから」

「あぁ、俺もだよ」

二年生の貼り紙は、っと……なるほど。

「どうやら二、三年生は校舎内みたいだ」

イツキたち三人は急いで、校舎内へと急いだ。そして貼り紙を確認。


「ねぇ、イツキ。これ嘘じゃないよね……?」

「嘘じゃないぞ、美穂」

「え……ちょっとだけ、ほっぺたを摘んでくれない?」

美穂の柔らかくてきめ細かな白い肌を掴んで、摘む。

うん、柔らかい。まるでもちのようだ。

「……いてて。でも、とっても幸せだよぉ〜。イツキと一緒のクラスになれるか心配で一ヶ月前からずっと心配だったんだよー」

「良かったな、真夏」とイツキは頭を撫でる。

「ルリもイツキくんと一緒のクラスだよー♡ やっぱり、運命の糸で結ばれてるんだね」と言葉を残し、「むふふふふ〜」と目をハートマークにさせて、絶賛妄想中のようである。

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