第9章 雪菜合流
イフィールを含めたその他の兵士と海賊達を戦慄させたその女性は、大魔導士の弟子だった。
事情を詳しく聴いているイフィール達の所に、姫乃達やってきた。
そして、中庭にいる人物を見て目を丸くする。
「あ、あれって……」
「雪菜せんせーなの」
「わー、ひさしぶりだねー」
なぜなら、見覚えのある女性がそこに立っていたからだ。
その女性は姫乃達のクラスの担任である雪菜先生だ。
逃げ出したウーガナ達を謎の魔法を用いて回収した先生。
こちらに気付くなり、屈託のない笑顔を見せる。
「あら、姫ちゃんじゃない、久しぶりね。元気してた? 元気してそう!」
そうだ。こういう人だった。元気が塊になったような人だ。
こういう賑やかではっちゃけている所、本当にルミナとそっくりだ。
「ちょっと待っててね。とにかく兵士さん達とのお話がすんだら、積もる話をぱーっと積もらせましょ」
事情の説明が終わって落ち着いた後、雪菜先生の口からこれまでの話を聞かされる。
先生はこの世界で名のある人物、大魔導士アルガラ・大魔導士カルガラの二人の弟子となっていたらしい。彼等の手伝いをしながら、時にその大魔導士に成りすましながら、時にいたずらしたり窮地をさっそうと助けたりしながら、忙しくこの世界で過ごしていたらしい。
この時点でいろいろ言いたい事とか、聞きたい事とか、確かめたい事も山ほどあったが姫乃は黙って耳を傾ける。
大魔導士、アルガラとカルガラ。
双子である彼らの役目は、終止刻の不安に沈む小さな町や村のケアだった。
実際に被害が出るまでまだ時期があったし、大きな力を遊ばせておくのはもったいない。
……という事で問題のありそうなところに行き、確かめ、力が必要なら解決しながら周辺を一通り回るのが彼らの仕事だった。
そこまで先生が話したところで、普通に城門から入ってきたらしいアルガラとカルガラが中庭に到着した。
双子と聞いていただけあって、二人ともまったく同じ外見をしている。
ゆったりとした厚手の服ですっぽりと体を覆い、手には木製の杖を持っている。
白い髪に豊かな白いひげをはやしていて、外見から考えると八十か九十歳くらいはありそうな男性の老人だった。
「「大魔導士アルガラとカルガラである、ただいま帰還した」」
イフィールに挨拶するなり、その二人は傍らに立つ雪菜先生へ顔を同時に向ける。
「「これ、雪菜。おぬしはまた勝手にふらつきおって」」
その二人が同じ様な内容のセリフを同じように話した。
「あはは、ごめんなさいね。アルカルさん」
「「ひとまとめにして呼ぶでない」」
先生と双子の大魔導士は気安い様子で言葉を交わす。
弟子はともかく、知り合いである事に間違いはなさそうだった。
ともあれ久しぶりの再会だ。
姫乃は感慨深げに雪菜の姿を見る。
姿はまったく変わらない。雰囲気も。
すごくなつかしい気分になった。
あの学校の教室からどれだけ離れた所に来てしまったんだろう、と少しだけそう思った。
「さ、積もる話はあるだろうけど。それはおいおい語るとして。さくっと近況報告お願いね、転校生、出席番号えーと何番かの結締姫乃ちゃん」
しかし、そんな感慨をぶち破ってくるのが先生だ。
「異世界来ちゃって彼氏とかできた? それとも姫ちゃん無双しちゃって、救世主様とか奉られちゃったりしてる?」
出席番号を忘れていたのはともかく、後者はただの普通の小学生に聞く内容ではないと思う。
「変わらないねー。全然」
「雪菜せんせーとっても元気なの。元気は良い事なの!」
「ええと、長くなりますけどとりあえず一番最初から……」
とりあえず説明しようとしたら、
「やだ、もう大冒険しちゃってる! さすが姫ちゃん。略してさす姫」
そんな反応が返ってきた。
どうしようテンションについて行けないよ……。
同年代のルミナならともかく、一世代ぐらい離れている雪菜先生にやられるとちょっと疲れちゃうかも。
突っ込みとか遠慮しちゃうし……。
助けを求めて、左右に視線を移動する。
「ぴゃ、なあたくさん冒険したの。とっても楽しかったの!」
「ねー、いろいろあったよねー」
駄目だった。
こういう時に未利がいてくれたらなぁ。
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