第4章 海の男 03



 甲板に集められた調査隊の面々は、怯える様子でもなく冷静にウーガナ達海賊の動向を観察していた。

 その様子にウーガナは不快そうに顔をしかめる。


「ちっ、泣きも喚きもしねぇ、面白くねぇな」

「貴様は自分の満足の為にこんな事をしているのか?」

「ああ、そうだ。たりめぇだろ、金品奪うだけなら、とっとと海に放り出してらぁ」

「醜いな」

「あぁ?」


 人質にされているにも拘らず、そんな立場を感じさせない堂々とした態度でイフィールは言葉を言いなおした。


「性根が醜い、と言ったんだ」

「けっ、自分達は心がキレイだとでも言いてぇのか? その減らず口叩けなくしてやってもいいんだぞ」

「やれるものならやってみろ。そんな事で私の心は折れたりはしない」

「言ったな」


 イフィールの前に立って、その髪を掴んで乱暴に引っ張る。


「この綺麗な顔がどんな風に歪むのか見ものだな。えぇ? 泣いて謝るってんなら考えてやらねぇ事もないんだぜ。お嬢様」


 揶揄するようにウーガナは、イフィールの容姿にからかいの言葉を投げるのだが、

 それを受けた相手の目の色が変わった。


「…うな」


 触れれば切れるような殺気が飛んでくる。


「何だ?」

「私をそんな風に呼ぶな」


 突然の変化に戸惑うウーガナだが、思いなおして言葉を続ける。


「へっ、テメェに何が出来んだよ。これからテメェのその生意気な態度を、泣いて後悔したくなるような目に合わせてやるってぇのに」

「……」


 凄むウーガナだが、イフィールは何も言葉を発することなくただ睨みつけるのみだ。

 眉根をよせて掴んでいた髪をさらに引っ張り上げようとした時……。


「その人から離れて下さい」


 そこへ、姫乃が現れた。


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