終章:エピローグ
今の景色
老騎士ログウェルとメディアが引き起こした一連の
あの出来事は人間大陸において『
様々な天災に見舞われた各国は、一年経過した現在でも復旧を続けている場所が多い。
特に海に面した港町や都市は巨大な津波に飲まれ、破壊された施設の再建が行われていた。
それに関して最も貢献したのは、アスラント同盟国である。
海に関する都市構造や施設の作りを頑丈にしていた
更に各国が主流としていた蒸気機関から魔導科学に移行した
海を利用できなくなった国々は、それにより不足していた物資を
それを率先し主導したのは
特に各国の中継地点となる砂漠の大陸に在る同盟国の港はその重要拠点の役割を果たし、若くも優秀な士官達が船長として抜擢される。
その中にはエリク達と面識のある若き海兵士官の姿もあり、彼等は各国の救援に大きな活躍を果たしていた。
一方、『
自然環境を多く残す宗教国家では荒れ狂った天候によって山脈などで地滑りや山崩れが起き、地形的にも大きな損害が出ていた。
しかしそれ以上に宗教国家の人々を動揺させる事態となったのは、メディアが流した映像によって『
宗教国家の人々が信奉していた『繋がりの神』とは、『
そして『
『
それを多くの信者達が疑問視し、『
それは様々な動揺から混乱へ陥り、事件後には一部地域で暴動が発生してしまう。
これが更なる死傷者を出してしまう結果となり、
それでも教皇を務めるファルネ
『――……彼女は
そうして『
しかし疑問を持つ信者達は
結果として
それでも各国の上層部は
その中には、特級傭兵スネイクを含む『
彼等は派遣された者達を纏め上げ、反対組織の意図を組み有効な戦術を用いて殲滅に貢献し各国から一定の評価を得ることになった。
『――……
『……前教皇が用いていた、組織ですか』
『多分な、裏には四大国家に属さない非加盟国がいるんだろう。そういう連中とはよく
『やり口?』
『連中は
『……以前、
『そんな大した
『……分かりました。今は
かつて村を襲撃され多くの村人達やミネルヴァを死に追いやられたファルネは、その実行者である『
そして未加盟国の実情を知るスネイクはその情報を使い、反対組織に関する内情を
それは
そうした一方で、以前と様子が変わらぬ国もある。
それは島国のアズマ国であり、一時的な混乱こそ見られたものの今では落ち着き払った様相を見せていた。
ただその国内では、一人が異様な落ち込み
『――……ぐすん……っ』
『
『……ふんっ。どうせ余は、役立たずだよ……』
『仕方無かろう。今回に至っては事実なのだから』
『事実でも言って良い事と悪い事ってあるよねっ!?』
『それを
『精進って言っても、余の
『気構えの問題じゃよ。……まったく、子供の御守りも大変じゃのぉ』
今回の事態においてほとんど役に立たなかった事を辛辣に告げられた『白』の
その御守りをしているのは、『茶』の
しかしその様子はアズマ国にとっては日常的な風景でもあり、あまり深刻な事態とはなっていない。
ただ、今までとは異なる光景もアズマ国内には見える。
それは
『――……ォオッ!!』
『遅い!』
その庭先で響く声の主は、三人の女性。
一人目は、『月影流』の当主である
二人目は、元ルクソード皇国の皇王であり元『赤』の
三人目は、同じ赤髪を持つケイル。
この三人は稽古着を身に着け、
それを傍らで見据えるケイルは、二人の組手を目で追いながらシルエスカが地面に叩き付けられる形で投げられた光景を見ていた。
『……クッ』
『まだ重心が
『……ここまで、自分が弱いとはな……』
『弱くはありません。ただ貴方の技量が未熟で、私の技量が熟しているというだけです』
『……そうか』
背中から倒されたシルエスカはそのまま上体を起こして立ち上がり、その場から離れる。
すると代わるようにケイルが歩み出て、
『……いきます』
『ああ』
二人は静かに向かい合いながらそう声を向け、次の瞬間に互いが踏み込む。
そして幾多の手刀と脚撃が交差した後、それを互いに交わしながら激しい攻防が続いた。
すると
その瞬間に動きを止めたケイルの鳩尾を狙う
しかし掴み止めた
そしてそのまま右足を払って
一瞬の攻防で制したケイルに対して、眼前の拳を見た
『……強くなったな』
『いえ、この条件だから出来ただけです。……頭領の
『それでも、もうお前には組手で勝てないな。……見事だ、
『ありがとうございます』
師である
すると跳び起きた
『そろそろ、忍術を習ってみるか?』
『えっ。……いいんですか? 前は反対してたのに』
『あれは付け焼刃での話だったからだ。
『はい』
『ならば、今のお前でも習得するのは可能だろう。それを応用すれば、私のように分身を作り出すのも可能だ。瞬身も出来れば、お前に敵う者は人間大陸では指折りの数だけになるだろう』
『……でも、本当にいいんですか? どの術も、この国の秘伝なんじゃ……?』
『今更だな。……それに、彼女に負けたくないんだろう?』
『!』
『だったら、持てる
『……はい!』
『――……もう一度、我と頼む』
『ええ、いいでしょう』
ケイルに対してそう伝える
そんな女性達を屋敷内で静かに見守るのは、
『――……良い友も出来たようだね、
千代は屋敷から見える山向こうに視線を送り、そこで激しい訓練を積んでいる
一年前の出来事を経て実力不足を痛感させられた四人は、自分達の実力を高める為に互いの持つ技術を教え合い、自己鍛錬を施していた。
特にケイルは
それ等を学び習得することを望んだケイルに彼女達も応じ、互いを高め合う訓練を施し合っていた。
その理由は彼女達と同じながら、ある
『――……弟子が高見を目指すというのに、師である儂が目指さずしてどうするか……!』
実力を伸ばす
そして時折ケイルと共に『霞の極意』を用いた模擬戦を行い、剣の技量も高め合っていた。
それと同時に未習得だった『月影流』の奥義も伝授され、今のケイルは自己を鍛え上げる為に日々を費やしている。
その先に目標を定めているケイルの姿は、思い悩んでいた以前に比べて晴れやかな様子を見せていた。
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