神を従えし者
突如として現れた巨大生物達に対して、傷を癒すアルトリアやケイル達は各々がやるべき事を行い始める。
しかしそんな彼等の存在など目も向けない【
そして広大で頑丈な聖域の大地に後方の二足を着けて巨体を降ろすと、空中に浮かぶジュリアやフォウルに再び『
『――……
「……フンッ」
『お前もだ、
「……チッ」
黒い鱗に覆われた巨大で長い首と顔を見せるファフナーは、その視線の先に見える二人に対して口を開きながらそう述べる。
それに呼応するように警戒して構えるジュリアとフォウルだったが、それに割り込むようにファフナーの
ファフナーは開いていた口を閉じ、長い首を動かしながら鋭い眼光を
するとそこには
『――……ファフナー、これは私の
『あ? 俺が先に着いたんだから、俺が喰うんだろうが』
『は? 私が先に着いたでしょう。だから私が喰うんです』
『あぁ? 俺が先に仕掛けただろうが。だから俺が喰う』
『はぁ? だったら私は、先に
『あぁ?』
『はぁ?』
ファフナーとフェンリルは互いに目の前の
すると二匹は互いに凄まじい殺気を向け合った後、ジュリアとフォウルに視線を向けながら問い掛けた。
『おい、俺が先に着いたよな?』
『私が先に着いたわよね?』
「……いや……」
「……同時じゃなかったか?」
『同時、同時か。……マジか?』
『同時……。……じゃあ、仕方ありませんね』
『まぁ、
『そうしましょうか。では、どちらにしましょうか?』
『俺は
『では、私はジュリアを。前に少し食べた時には、とても美味しかったですから。――……では、いただきます』
「お、オイオイッ!?」
「クッ!!」
ファフナーとフェンリルは互いに声を向け合い、それと同時に取り決めた獲物に狙いを定める。
すると次の瞬間、フォウルの方には巨大なファフナーの口が凄まじい速さで迫り、ジュリアには凄まじい速さで跳躍する
それに対して二人は凄まじい反射神経と速度で回避しながらも、互いにその余波と衝撃を身体に受ける。
そして止まらぬ
「テメェ、ファフナー! こんな時にっ!!」
『グハッハッハッ!!
「フェンリル、テメェッ!!」
『大人しく腹の足しになりなさい、ジュリア』
互いの食欲を満たす事しか考えていない二匹は、目の前に居る
顔見知りであり膨大なエネルギーを持つ
二匹は二人に比べて遥かに巨体であり、その
更にフェンリルには
しかし次の瞬間、彼等の頭上に存在する暗雲から巨大な時空間の穴が出現する。
するとそこから人影が降り立ち、二人に迫るファフナーとフェンリルを止めるように巨大な結界が敷かれた。
『ガッ!! ……な、なんだ?』
『結界……。……これは、貴方の仕業ですか――……バフォメット』
「!」
「!?」
巨体を覆う強固な結界によって捕食を阻まれた二匹は、時空間の中から現れた人影に目を向ける。
そしてフェンリルが口にした名前を聞いた二人の中で、特に【
すると人影は降下を始め、暗い暗雲から姿を明かす。
そしてその姿を明かし、彼等の前で丁寧な礼を見せながら声を向けて来た。
「――……御無礼を御許しを、フェンリル様。ファフナー様。御二人に好き勝手をさせぬようにとの、我が神の
「バフォメット!」
「おや、ジュリア様。千と五十七年ぶりで御座います」
その場に現れたのは、黒髪と眼球を黒く染めた金色の瞳を持つ人間の見た目をした紳士服の中年男性。
しかしその背中には悪魔と思しき羽が六枚も広げられ、頭には小さくも山羊に似た黒角が四本ほど生えていた。
そしてジュリアと見知ったように声を向け合うのを見たフォウルは、二人を見ながら呟く。
「……バフォメットだと? ……そうか、コイツが【
『デーモンロード……?』
「魔大陸にいる
『!』
フォウルは自身の記憶からバフォメットと呼ばれる者の正体を思い出し、精神内に居るエリクに教える。
しかしそれの反論するように、バフォメットはフォウルにも視線を向けながら響く声を向けた。
「
「!」
「そしてこの方こそ、我等が御仕えする偉大な
「!!」
「な……っ!?」
そしてフォウルとジュリアは互いに顔を上げ、時空間の穴を凝視した。
すると次の瞬間、
それを微笑みながら見るバフォメットは、掲げた両腕を僅かに前方へ動かし、そこに落ちて来た小柄な
そしてバフォメットの両腕に抱かれた者を見て、フォウルとジュリアは互いに驚愕した声を漏らす。
「お前は……!」
「マジかよ……。お前が、
「――……よ、よぉ! フォウルの旦那。……それに、そっちがジュリア様……でいいんだよな?」
「……確か、あの村で串焼き作ってた……
二人が見たのは、自分達の半分ほどの体格にしか満たない緑色の肌を持った魔族。
それは『
しかしその
更にフォウルを見知った様子で声を向ける
「そう、アンタの知ってる
「!」
「
『……ちょっとくらい良いだろ?』
『そうですよ、
「いや駄目ですって! その代わり、今度も美味い料理を食わしてあげますから!」
『……しょうがないな。肉料理にしてくれよ?』
『私もです』
「はいはい、分かりましたよ。……バフォメットさん、よく
「いえいえ。
「そ、そういうのはいいって」
巨大な
そして苦笑いを浮かべながら、今度はジュリアとフォウルに視線を向けながら声を掛けた。
「とりあえず、積もる話もあるだろうからさ。一回落ち着いて、皆で話をしようぜ。……ジュリア様も、フォウルの旦那も……な?」
「……ッ」
「
「!?」
「アイリって……。まさか、お前も覚えてるのかよっ!?」
説得する【
そしてジュリアが驚きながら問い掛けると、【
「いや、えっと……実は俺も忘れてるみたいなんだけどさ。……でも、あの人から聞いたんだよ。あの子の名前や、あの子が俺達にとってどんな存在かってさ」
「……あの人?」
「それも含めて、落ち着いて話がしたいんだ。……だからもう、戦うのは
「……チッ」
「……フンッ」
【
しかしそれに応じるように、互いに舌打ちと鼻息を漏らしながら
戦う意思を
それを追うように二人も降下し、四人は地面に着地した。
こうしてその場に現れた【
それは【
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