三度目の対峙
『黒』が百年以上前に予言した『世界を滅ぼす者』は、『緑』の
その原因は彼が持つ
それを阻止する為には、
彼は自分の滅ぼした未来で出会った『黒』の話を聞き、それを任せる相手に同じ
ログウェルは自身の夢とした旅を終える為に、エリクと戦おうとする。
それを邪魔するであろうアルトリアを封じ込めてエリクを誘き寄せる囮としたメディアとログウェルは、
その事実は
そうした事態に陥っていることを認識していないのは、
「――……さぁ、傭兵エリク。
「!」
「ログウェル! 待って――……」
そして弟子であるユグナリスの制止を聞かず、そのまま
それを視線で追うエリクは、表情を強張らせながら
「バルディオス、
『むっ、いいのか?』
「ああ。……あの男が言っている言葉は、全て本気だ」
「!」
「俺と戦わなければ、奴は世界を滅ぼす。……俺は、奴と戦う」
『……分かった』
エリクはログウェルの言葉を全て聞いた上で、彼の意図を察する。
それを聞き届けたバルディオスは、
しかし
「……ま、待ってくれっ!!」
「ん?」
「ログウェルとは、俺が話すから! だから、アンタ達が戦うなんて――……」
「話は無駄だ」
「!!」
「
「そ、それを
「奴は、それを望んでいない」
「!!」
「他に方法があったとしても、この方法以外にやる気は無いんだ。……だったら俺は、戦うしかない」
「で……でも……でも……っ!!」
戦う事を選択する二人に対して、ユグナリスの意思と声は届かない。
そうして彼が苦悩しながら顔を伏せると、『白』は拘束された状態でユグナリスを見上げながら銀色の瞳を凝視させて声を発した。
「……お主も、
「!」
「しかも『赤』の聖紋に選ばれたのか。……だとしたら、お主は『
「え?」
「
「えっ。……じ、じゃあ……俺もログウェルと同じことが……?」
「ただお主の場合、
「……貴方はいったい……」
「言っただろう、
「!」
「ただ余の場合、
銀の瞳が見通す『過去視』によってログウェルの事情を再び明かす
それを聞いていたユグナリスは後ろ手に拘束している腕力を僅かに緩めたが、それでも拘束は解かずに再び問い質した。
「じゃあ、なんでアンタはログウェルを殺そうとしたんだ……!? 確か
「よ、余自身も奴を殺せるわけではない。だから奴の肉体を滅ぼして
「!?」
「そうすれば、『
この場に現れた
それによって拘束力が強まり両腕に痛みを走らせながら訴える
「そんな事をしたら、ログウェルが消滅しちゃうだろっ!!」
「だ、だったら! それ以外の方法は、もうその男に頼るしかない!」
「えっ!?」
「
「……ッ」
それを聞かされたユグナリスは表情を
「……ログウェルと戦うにしても、殺すまでしなくても……!」
「無理だ」
「なんでっ!?」
「奴は、俺を殺すつもりで戦うつもりだ。だったら俺も、本気でやるしかない」
「!」
「
「で、でも……ログウェルは、自分で死ぬつもりなんじゃ……?」
「奴は俺に勝てば、本気で世界を滅ぼしに掛かるだろう」
「!?」
「奴は奴なりに、俺との戦いでその覚悟をしている。……だから、戦うしかないんだ」
「……なんで……なんで、こんなことに……っ」
改めてエリクを説得しようとしたユグナリスだったが、その言葉はログウェルの覚悟によって阻まれる。
そうしてそれぞれを乗せた
すると場面は移り、浮遊する
『雷』の
その周囲に留まる者達を他所に、神殿の階段を走る者達が見える。
それはケイルに伴われるリエスティアとシエスティナ、そして妖狐族クビアを含む女性陣だった。
しかし先頭を走るケイルは
「――……もっと早く、登れねぇかっ!?」
「な、なんでここぉ……転移が使えないのよぉ……」
「そういう場所なんだよ。……ってか、そっちのガキの方が元気じゃねぇか!」
「う、うーん!」
「ご、ごめんね……」
「……
聖人であるケイルは高い身体能力によって階段を躊躇いなく登れているが、体力と身体能力が遥かに劣る他の三名は遅れてしまっている。
機能が再開した神殿の敷地へ入ると、転移魔法や空を飛ぶ
しかし
それでも仕方なく自力で階段を登るしかない四人は、急いでアルトリアとメディアが戦う
。
そんな時、
ケイルはそれに気付き、怒鳴るように問い掛けた。
「どうしたっ!?」
「……また、これが……」
「あぁ!?」
「……未来が、バラバラに……ぐちゃぐちゃに、見えて……っ」
「お、おいっ!!」
来た道を凝視しながら困惑した表情を浮かべたリエスティアは、その場で身体を揺らし始める。
それを見て倒れそうになっている事に気付いたケイルは、自分の立つ階段から跳び彼女達がいる階段まで降りた。
そして淀みなく着地したケイルは、倒れそうになるリエスティアを支える。
「どうしたんだよっ!?」
「……さっきも、同じ事があって……」
「同じこと?」
「あの映像が、見える前に……。……ユグナリス様や、皆が死んでしまう未来が見えて……」
「!」
「でも、その次には……暗い雲が掛かった世界が見えて……。……そこで、ログウェル様が……立っていて……」
「……何の未来を視たんだよ、お前……」
「分からないんです……。……でも、他にも視えて……。……アルトリア様の傍に居た男の方と……ログウェル様が……戦う姿が……」
「!」
ケイルはその話を聞き、リエスティアが視認する
そこでケイル自身も来た道を凝視し、残して来た師匠達が居る方角へ視線を向けた。
すると次の瞬間、ケイルの視界にあるモノが映る。
それは遠目に見ても巨大と言える、人型の
「な、なんだ……ありゃ……。
「……あそこに、ログウェル様と……ユグナリス様。……それに、あの男の方が……」
「!」
リエスティアはそう話し、降りて来る
するとケイルは表情を強張らせ、階段の上と下を交互に見ながら表情を強張らせた。
「……アレにエリクが乗ってるんだとしたら……。……クソッ、どっちに行きゃいい……。エリクと合流して、アリアのとこに一緒に行った方が確実か……!」
ケイルはどちらに優先して向かえばいいかを悩み、僅かにエリク側に意識を傾ける。
しかしそれを否定するように、支えられるリエスティアは首を横へ振った。
「……私達は、アルトリア様の所へ行きましょう」
「!」
「今、あそこに戻っても……何もやれる事は、ないみたいです……」
「……それも予言かよ。……クソッ、確かにそうだな。――……ほら、背負ってやるから。しっかり掴まれ!」
「あ、ありがとうございます……」
戻る選択を踏み止まらせたリエスティアの
そして疲れ果てた様子をリエスティアを背負うように抱えると、そのまま階段を登り始めた。
それに付いていくシエスティナに対して、更にその
「わ、私も背負ってよぉ!」
「どっかの御嬢様じゃあるまいし、お前も少しは運動しろ! デブるぞ!」
「ひ、ひどぉい! そんなに厳しいとぉ、男に嫌われるわよぉ!」
「うっせぇ! 喋る元気があるならさっさと登れっ!!」
罵詈雑言を浴びせ合いながらもケイルとクビアは共に階段を登り、神殿の入り口となる門を目指す。
それに伴うリエスティアは、自身の視た未来を信じて
そしてついに、
そこは神殿からかなり離れた平地であり、降りたエリクはそこで待っていたログウェルと向かい合った。
「――……では、やるかのぉ」
「ああ」
そうして二人は向かい合い、互いに対象的な表情を向け合う。
その光景は、以前に二度ほど出会った港町で対峙した二人の姿を再現していた。
こうしてエリクとログウェルは、三度目となる対峙を見せる。
それは正真正銘、本気で戦う覚悟をした彼等の姿だった。
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