繋がる可能性
ゲルガルドと数百年に渡り繋がりを持ち続けていたフラムブルグ宗教国家の上層部、そしてそれ等を影で支配し続けた聖人である現教皇は、その秘密を知ったクラウス達やファルネを処分しようとする。
しかしそれを阻むように現れたのは、
それを排除しようとする教皇と枢機卿は、卓越した連携魔法を使って攻撃を仕掛けて来る。
それを防ぐように強固な
『――……アンタ達、邪魔だからさっさと逃げなさい』
『貴方は……!?』
『私は、アイツ等を殺す為に来たのよ。……アイツ等を生かしておくと、碌な事にならないから!』
『!』
前に歩み出ようとした
しかしそれを聞いたクラウスは一瞬だけ思考した後、
『奴等を殺すと言ったな、その後はどうする気だ?』
『さぁね、殺す以外に予定なんてなかったし』
『ならば頼みがある。奴等の数人は、生かして
『はぁ? なんでよ』
『奴等を全て殺せば、
『……アンタ達、この国で何かする気?』
『それは――……この国を、信頼できる者に委ねたい』
『……!』
クラウスはそう言いながら視線を動かし、隣に立つ
その言葉と目的を聞いて驚きを浮かべるファルネに対して、同じく聞いていたワーグナーが苦笑いを浮かべながら声を発した。
『おいおい、アンタ……この国まで乗っ取るつもりかよ』
『人聞きが悪い事を言う。だが少なくとも、奴等よりはマシだとは思わないか?』
『そりゃ言えてる。……アンタが誰か知らないが、助けてくれたついでにこの人の頼みを聞いちゃくれねぇか? 頼む』
クラウスの
互いに
そうして教皇達が放つ魔法を防ぎながら、
『――……分かったわよ。でも教皇だけは殺すわ。アイツの実力はミネルヴァ並に厄介よ、生かして捕らえるのは難し過ぎる』
『それでいい、頼む』
『そう、だったら話は終わり。さっさと逃げなさい、邪魔よ!』
『分かった。――……行くぞ、二人共!』
『ああ!』
『……貴方は、もしや……。……頼みます!』
頼み事を受け入れた
それに従うワーグナーも聞き入れるように走り出すが、ファルネは背中を見せたままの
そうして逃走する三人は、大聖堂の中を駆けながら出入り口を目指す。
しかしその内部には床や壁に伏して倒れる僧兵や神官達が見え、改めて
『これ、全部あの人形がやったのか?
『恐らく魔導国に属する者だろうが、これ程の実力者を
『……あの方は、きっと……』
『シスター、なんか知ってるのかよ?』
クラウスとワーグナーが
それを聞いたワーグナーが問い掛けると、微笑みを浮かべたファルネは前を向きながら話した。
『……あの方もまた、神が遣わした者なのでしょう』
『え?』
『神は今も、私達の行いを見守ってくれている。……ミネルヴァ様の行いを、無駄にしない為に』
『……もしかしたら、そうかもしれんな』
『へっ。もしそうなら、神様ってのも感謝しねぇとな!』
そう言いながら涙を浮かべるファルネに対して、クラウスは微笑みを浮かべながら否定しない言葉を零す。
同じようにワーグナーもそれを否定せず、三人はそのまま大聖堂の出口へと走り続けた。
すると凄まじい衝撃音と共に、教皇達の居た大部屋を中心として大聖堂が崩壊を始める。
外に脱出できたクラウス達はそれを遠目から隠れ見ながら、その崩落が教皇達と激突している
そしてクラウス達が外に出てから五分ほど続いた後、大きく瓦解した大聖堂から振動が止まる。
すると大聖堂の天井を突き破るように光球が飛び出ると、それが大聖堂の出入り口に降りる光景が見えた。
クラウス達はそれを隠れ見ながら、光球の中に誰が居るかを確認する。
すると光球が解けた後、そこには自分達を助けた
それを見た三名は、視線を重ねて頷いて隠れていた身を晒す。
『――……ほら、これ。御望みの
『生きているのか?』
『注文通り、生かしておいたわよ。文句でもある?』
『他の枢機卿達と、教皇は?』
『殺したわ。特に教皇は、肉体の欠片も残さずにね』
『他の信徒達は?』
『さぁね。教皇達の精神系魔法で洗脳状態だったから、乗り込むついでに解除しておいたけど。他に掛けられてる奴がいたとしても、大元の
すると改めて、クラウスは目の前にいる
『君はどうして、
『私達の計画を邪魔しそうな要素だったから、面倒になる前に潰しただけよ』
『計画……。それはもしや、ゲルガルドやウォーリスに関わる事か?』
『……だとしたら?』
『話を聞く限り、君は少なくともゲルガルドの一族と手を組んでいた教皇達とは敵対関係である事は理解できる。私達もまた、ウォーリスゲルガルドとは敵対している立場だからな』
『……それで、何が言いたいのよ?』
『私達もまた、奴等に操られ扇動されているだろう民まで害そうとは考えていない。逆に奴等から引き離したいと考えている。……君達の計画には、そうした事も含まれてはいないか?』
『……まぁ、考えてはいるわね。ただ面倒臭くて、実行する気は失せてるけど』
『だったら、我々と君達で協力は出来ないだろうか?』
『協力?』
『我々は現在、旧ベルグリンド王国の王子を一人匿っている。奴に現オラクル共和王国の民をウォーリスから切り離す為の新たな旗印として立たせようと考えていた』
『……』
『そうして切り離す事が出来れば、少なくともウォーリスに扇動されて共和王国の民が兵士と化すような状況は免れる。……どうだ? 我々をその計画の駒として、組み込めないだろうか?』
クラウスはそうして自分達の計画を明かし、
すると少し考えた様子を見せた
『で、その為にアンタ達は
『それについては、返す言葉も無い』
『第一、素性も分からない私に対してそんな事を頼むなんて。アンタ達、
厳しい言葉を向ける
しかし真剣な表情を浮かべたままのクラウスは、淀みの無い態度でこう返した。
『我々は、様々な者達に助けられてここまで希望を繋げて来た』
『!』
『そんな我々がここへ辿り着き、そして君という同じ目的を持つ者に出会えたのだ。これもまた、ミネルヴァや
『……』
『だから私は、ここまで我々を繋げてくれた命と、目の前にいる希望の可能性を信じたい。……それが君を信じる理由では、不足かな?』
そうした言葉で
自分と共に戦場を駆けた兵士達や大樹海の部族達、そして共和王国へ共に来た黒獣傭兵団の団員達や村の人々、それ等の命によって繋げられた自分の命がここにある意味を、自分自身で見出す事が出来ていた。
その真剣な目を見ながら、
『……相変わらずね。貴方は』
『?』
『良いわ、アンタ達の計画にも協力してあげる。――……でも、協力だけよ。自分の計画なら、自分でちゃんと果たしなさい』
『元より、そのつもりだ』
そう言いながら計画の協力を交わしたクラウスと
すると大聖堂まで訪れる為の山道から響く声が聞こえ、ワーグナーとファルネがそれを聞き付けながら二人に伝えた。
『やべぇぞ、
『この惨状を見られれば、私達が大聖堂を襲った
『それは、一人は事実だけどよ……』
互いに焦りの表情を向けながら伝える言葉に、クラウスと
すると再び機械的な声で溜息を漏らした
『とりあえず、一旦は逃がしてあげる。その
『何か逃げる算段が?』
『無かったらこんな事しないわよ。――……よし。ならそいつ等を手放さずに、私に触れてなさい』
『え、えぇ』
クラウスとワーグナーが倒れている
それに従う三人は
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