相打つ者達
マナの
そして現実世界に出たウォーリスを追う為に、精神体である未来のユグナリスと鬼神フォウルを伴い
一方その頃、現実世界において再び戦闘を開始したウォーリスは『
それをゲルガルドを凌ぐだろう
しかし
それは黒い時空間の穴であり、その中から落ちて来る物を左手で拾いながら掴み持った。
するとそれを見ていた周囲の三人は、更に警戒心を強める。
そうした中でエリクだけが、僅かに驚きの表情を浮かべていた。
「!」
「あの剣は、あの時の……」
ウォーリスが引き出した黒い長剣を見て、エリクは同盟都市で戦った時の事を思い出す。
あの時にもウォーリスは同じ
それを思い出していたエリクは、あの時の衝突によって自分の
『青』もまたその
「
「そうだ。……お前達は、この
「なに?」
「それは、自分を殺す為だ」
「ッ!!」
淀みの無い口調で言い放ったウォーリスは、左手に握る
それを見て
しかしその瞬間、ウォーリスは二人の動きを素早く目で追う。
そして最初に迫って来たマギルスに対して真っ先に対応するように動き出し、振り下ろされる大鎌の刃よりも先に、自身が持つ長剣の刃を突き向けた。
「うわっ!!」
「チッ」
捉えきれないウォーリスの突きを反射神経と勘だけで僅かに掠めて避けたマギルスは、胸部分に僅かな血を流血させながら飛び避ける。
一撃でマギルスを無力化できなかったウォーリスは、突いた長剣を薙ぐように動かしマギルスの胴体を切り裂こうとした。
それを大鎌の柄で受け止めたマギルスは、凄まじい衝撃を受けながらその場から吹き飛ぶ。
しかし地面へ噛み付くように大鎌の刃を喰い込ませると、百メートルほど飛ばされながらも踏み止まる事に成功した。
「う、うげ……っ」
それでも次の瞬間、マギルスの身体が崩れるように傾き膝を地面へ着ける。
先程の攻撃でマギルスの両腕は折られ、しかも掠めただけの攻撃が胸部の骨を粉砕する程の衝撃を有している事に遅れて気付いた為に、マギルスは立ち上がる事が困難になっていた。
そうして三人の包囲網を崩したウォーリスは、強者である彼等の認識以上の素早い動作で次の行動を始める。
すると『青』に向かって迫りながら、彼を仕留めようと長剣を突き向けた。
「ヌッ!!」
「ほぉ、魔法以外には脳が無い魔法師かと思えば……!」
しかし予想外にも、『青』は自身が握り持つ
多くの叡智を有し魔法を得意とする『青』が近接戦にも対応できる事を知ったウォーリスは、意外な驚きを零しながら互いの武器で鍔迫り合いを始めた。
更にウォーリスは、『青』が握る
「貴様の杖も、
「……クッ!!」
「だが、やはり技量不足のようだ――……!」
押し込む長剣が圧倒する形で『青』の
そのまま押し込む長剣の刃で『青』の首を斬り取ろうとしたウォーリスだったが、その背後に悪寒を感じさせた。
すると次の瞬間、ウォーリスの背後に飛び掛かる黒く巨大な人影が存在する。
それは大剣を振り被ったエリクだと一瞬で理解したウォーリスは、『青』の腹部を右足で蹴り飛ばしながら振り返った。
「ぐっ!!」
「邪魔だっ――……エリクッ!!」
「オォオオオオッ!!」
蹴り飛ばされた『青』は森側まで吹き飛び、その先で衝撃音が響く。
しかしそんな事に構う様子も見せないウォーリスは、大剣を振り下ろすエリクに敵意を持った表情を向けて長剣を振り抜いた。
そして次の瞬間、エリクとウォーリスの武器が衝突する。
互いに膨大な
「ヌゥウッ!!」
「オォオオッ!!」
全ての力を乗せるようなエリクの一撃と、
しかし
そうした自身の不利を察したのか、ウォーリスはすぐに武器同士の力押しを切り替え、左手を器用に曲げながらエリクの大剣を受け流す形で地面に衝突させる。
受け流されたエリクは
「グッ!!」
「!」
するとエリクは敢えて大剣を手放し、大きく上体を仰け反らせながら右側前頭部に迫るウォーリスの右足を回避して見せる。
更にウォーリスが右足を引かせる前に、今度は上体を戻しながら右拳を握り締めて逆に
「ガハ……ッ!!」
「ァアアッ!!」
右頬にエリクの右拳が直撃したウォーリスは、その場から吹き飛ぶ。
しかし敢えて
そして地面を大きく跳ねた瞬間、ウォーリスは空中で身を捻りながら姿勢を戻す。
すると落ち着いた着地を見せて立ち上がり、左頬と口から血を流しながらエリクと数十メートル程の距離を開いたまま再び向き合った。
「やはり、鬼神の
「奴の傷が、治っていない。……今の俺なら、奴を倒せる」
以前は瞬く間に治癒していたウォーリスの傷が再生し治癒する様子が無い事を確認したエリクは、神兵同様に自分の攻撃が
しかしそれを予想していたウォーリスもまた、左手の甲で顔や口から垂れる血を拭いながら長剣を構えた。
エリクも斜めに突き刺さった大剣を地面から引き抜き、ウォーリスに向けて身構える。
そんな時、対峙している二人の視界に突如として大きな光が舞い込む。
それはマナの
「……来たか」
「なんだ……!?」
突如として光るマナの
しかしウォーリスだけはその事態を予想していたかのように、その光の中から現れる者の姿を見た。
エリクもまた光の中から降り立つ存在を確認し、緊迫していた雰囲気に驚きと喜びが入り混じる表情が浮かび上がる。
するとその喜びの声を向けながら、彼にとって馴染み深いに名前を呼んだ。
「アリアッ!!」
「――……待たせたわね、エリク」
マナの
それは死体でも無ければ精神体でもなく、正真正銘の生きた肉体を持つアルトリア本人であった。
一方で、ウォーリスも横目を向けながらアルトリアを見る。
しかしその表情はエリクと異なり、敵意と憎悪が僅かに込められていた。
「アルトリア……」
「アンタも待たせたわね、ウォーリス。――……今ここで、決着をつけてやるわ」
そう言いながら歩み寄って来るアルトリアに、ウォーリスとエリクは奇妙な存在感を感じ取る。
それは今までに無いアルトリアが放つ圧力であり、それが自分達の持つ
するとアルトリアもまた、生き返った肉体を僅かに白い輝きを浮かべる。
それは溢れ出る程の
「奴も、なったと言う事か……。……我々と同じ、
「アリア……この力は……」
こうして甦ったアルトリアに対して、ウォーリスとエリクは自分達と同じ
しかしアルトリア本人はそれを喜ぶ様子や誇る様子も無く、ただ憮然とした表情でウォーリスへと向き合っていた。
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