復活の笑顔
それはアリアによって精神体を修復された、アルトリアだった。
『黒』と対立する意見を述べたアリアは、決められた未来を歩まない事を伝える。
するとその場に居る者達を集め、自らが望む未来へと突き進み始めた。
こうして場面は現実へ戻り、『神兵』達と戦うエリクの姿が映る。
変化した
そうしたエリクの背後で、彼の耳に届く程の大きな声が響いた。
「――……エリクッ!!」
「!」
自分を呼ぶ声を聞き取ったエリクは、大剣で『神兵』の一体を切り裂き燃やし尽くした後に顔を振り向ける。
するとその先には、
しかし抱えられている二人が意識を取り戻している様子が無い事から、エリクは不可解な様子を察しながらケイルに問い掛ける。
「ケイル! 何があったっ!?」
「アタシは
「……ああ、分かったっ!!」
そう叫びながらマナの
ケイルに何かしらの意図と目的がある事をすぐに理解したのか、エリクはケイルの傍に近付こうとする『神兵』達に率先して襲い掛かった。
そうして二人はマナの
すると傍に近付く者の
「前は、あの
『――……
「そういう事かよ。こういう時には便利だな、
ケイルの脳内に響くアルトリアの声が、そうした情報を伝えて来る。
その説明を軽く理解しながら走り続けるケイルだったが、一方で追従していたエリクが疲弊を色濃くした表情を浮かべ始めていた。
それに気付いたケイルは、隣を見ながらエリクに呼び掛ける。
「エリク、
「いや、『
「だったら、ここまででいい! 後はアタシに任せろ!」
「……分かったっ!!」
マナの
それに応じる姿勢を見せたエリクは、その場に留まりながら後続から向かって来る『神兵』達の相手をし始めた。
それからケイルは自身の
マナの
「アイツの言う通り、
そう言いながら右腕で抱えていたアルトリアの死体を降ろしたケイルは、痛みを走らせる表情を浮かべる。
そんなケイルの様子が分かるのか、
『大丈夫?』
「……ああ。……それより、このやり方でいいんだよな?」
『ええ。
「これで、その命令ってのが止まるのかよ……」
『止まるんじゃなくて、止めるのよ』
「そうかよ。だったら、絶対に止めて来い……っ!!」
ケイルは右手だけでアルトリアの手を動かし、
そして
すると
それを見届けたケイルは、
「……グァ……ッ!!」
身体に残る僅かな
しかし走らせる両脚は力を失い、途中で足を縺れさせながら地面へと身体を倒れさせてしまった。
そうしたケイルの様子に気付いたエリクは、更なる異変に気付きながら叫ぶ。
「ケイルッ!!」
「……クソ……ッ!!」
左手も無く意識を失い掛けているケイルは、エリクの叫びで周囲の変化に気付く。
それはエリクに向かっていた『神兵』達の一部が、ケイルに向かい始めたのだ。
殺意こそ感じられないものの、まるで機械的に向かう『神兵』達にエリクは周囲の神兵に構わず走り向かいながら大剣を振り構えた。
しかし次の瞬間、森側から音の壁を切るような共鳴と青い閃光が走る。
それがエリクの脚力を遥かに超えた速度で、ケイルに近付く『神兵』達を切り裂くように一閃させた。
「!!」
「……この光は……!!」
二人は突如として現れた青い閃光に驚き、それに巻き込まれる形で首と胴体を真っ二つにされた『神兵』達を目にする。
すると青い光がケイルの前で立ち止まるように降り立ち、その武器を振り回し地面を削りながら飄々とした笑顔で言葉を発した。
「――……だらしないなぁ、二人とも。僕がいないとさ!」
「お前……!」
「……マギルス……!!」
ケイルの窮地に駆け付けたのは、心臓と腹部を大きく損傷し死んでいたはずのマギルス。
その身体はアリアの手によって確かに修復されながらも、心臓の鼓動も脈拍も確かに停止しているはずだった。
それを確認していたエリクとケイルは、マギルスが動きその姿を明かした事に唖然とした様子を浮かべる。
するとそんな二人の表情に対して、マギルスは不貞腐れるような態度で口を開いた。
「何さ何さ! そんな目で僕を見てさ!」
「……お、お前……確か、死んでたろ……?」
「うん。死んでたよ」
「だ、だったら……なんで……?」
自分が死んでいた事を明かすマギルスに、問い掛けたケイルは驚愕を深める。
すると呆れる様子を浮かべたマギルスは、微笑みを浮かべながら自分がこうした状態にある理由を伝えた。
「あれ、ケイルお姉さん忘れちゃったの? 僕、
「……え?」
「あれ、知らないっけ? 僕も『青』のおじさんから聞いたんだけどね。
「いや、知らねぇよ……。……それ……」
「だからね。前まで僕、ずっと『青』のおじさんの
「……!!」
流暢に自身に起きていた事態を話すマギルスの言葉に、『神兵』達を排除したエリクが歩み近付く。
するとその話によって、激しく損傷していたマギルスの死体をアリアが修復した事を思い出していた。
それが起点となっている事を考え、マギルスの話に戻る。
「でも誰かが僕の死体を直してくれてたみたいだからさ。それでまた僕の
「……お前、それって……身体を直し続ける限りは……死なないって事かよ……?」
「そうじゃない? 僕もさっき初めて知ったけどさ!」
「……やっぱ、この面子でまともなのは……アタシだけじゃねぇか……」
マギルスが不死に近い特性を持った種族である事を知ったケイルは、改めてその存在が人間離れした存在だと認知する。
するとマギルスは起き上がろうとするケイルを抱え起こし、青い魔力で形成した|青馬《ファロスに乗せた。
「ケイルお姉さんを御願いね」
『ブルルッ』
「それと、今の状況が分かんないんだけどさ。この白い奴って敵でいいの?」
「……分からずに斬ったのかよ」
「だって、仲間が襲われてるんだもん。それって敵でしょ?」
「……ハッ、そうだな。そうだよ」
「そっか。じゃあ、僕も手伝うね! いいでしょ? エリクおじさん!」
「……ああ。頼もしい限りだ」
状況が分からずとも無邪気そうに笑うマギルスに、ケイルもエリクも呆れるような笑みを浮かべる。
それでも彼等にとって、マギルスは最も頼りになる仲間なのは確かだった。
すると
そしてマナの大樹から出現して来る『神兵』達と、二人は微笑みを浮かべながら対峙するのだった。
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