劇場の役者達
『
それは五百年前に止められた『
更に大陸の真下に現れた巨大な時空間の穴に照準が定められ、その先には人間や魔族達が住み暮らす世界の情景が映し出されていた。
そうして起こる異変の真実に気付いた、マナの
しかし時空間の穴が出現した先にある世界の
すると
それでも理想の夢から目覚めた彼等が見たのは、まさに最悪の現実とも言うべき景色だった。
「――……あれ、俺……いつの間に寝て……」
「死んだ女房と子供の、夢を見てた気がする……」
「……おい、なんだよアレ……!?」
「!!」
人間大陸の中で健在だった国の人々は、黄金色に染まっている外の景色に新たな異常が現れている事に気付く。
それは暗雲とした雲の合間に出現している巨大な穴と、その先に奇妙な白い大陸が浮かび底部分を見せているという奇妙な光景だった。
しかし穴の大きさはともかく、その先に見える『
それでも各地に異常が見られ、特に動物や魔物を中心とした生物がまるで逃げ惑うかのように穴の中心地から離れる動きを見せ始めていた。
それと同時期、『
すると月食の
「――……ここが、
「なんだ、この異様な雰囲気は……?」
「見ろ、大陸が浮かんじまってるぞっ!?」
「その下には、巨大な穴が……。……あの穴に映っているのは、まさか我々が居た世界か……!?」
異様な雰囲気を漂わせている『
特に初めて『
そうした景色と
「――……あの穴は、時空間で繋がってる穴やね。そして繋がってるのは、うち等が住む世界……!!」
「昔ぃ、
「そこから
「じゃあ、今度はあの大陸が……!?」
タマモとクビアの分析を聞いていたユグナリスは、五百年前と同じ天変地異が再び起きようとしている事を察する。
そして目の前に浮かぶ巨大な白い大陸が自分達が住み暮らす
それを肯定も否定もせず、クビアは敢えて今すべき事を伝える。
「そうさせない為にもぉ、あの時空間の穴を閉じるしかないわぁ」
「なら……!!」
「でもぉ、アレだけ巨大な時空間の穴を
「そんな……!! じゃあ、どうすれば……」
「流石にあんな馬鹿デカい時空間の穴ぁ、
「……あの、白い大陸……!」
クビアの状況分析を聞いたユグナリスは、映像越しに見える白い大陸に視線を向ける。
そしてその中央に
「
「おいおい、あのヤバそうな状況で乗り込むのかよっ!?」
「その為に、俺達は来たんです」
「……そりゃそうか。……よっしゃ、行くぞっ!! 総員に、上陸準備の合図だっ!!」
「ハッ!!」
ユグナリスの意思に応じたグラドの声によって、皇国の兵士達を動かしながら乗員達に上陸準備を伝える。
そして操縦する
すると監視装置を扱っている
それに気付き艦橋の全員が目を向けると、そこには見覚えのある
「あの
「ありゃ多分、
「破壊されてるように、見えますけど……!!」
「攻撃を喰らっちまったのか。……
「エアハルト殿……。……あの
シルエスカ達が乗って不時着した
そしてその要望に応える形で、グラド達を乗せた
貨物室の扉が開かれ、そこからユグナリスや機敏な獣族系の干支衆達が飛び出る。
それに続く形で降りて来たのは、妖狐族のクビアとタマモの姉妹、そして魔銃を抱えている特級傭兵である『
真っ先に飛び出した干支衆達は、周囲を警戒しながら神殿側へ向かい始める。
しかしユグナリスは不時着している
「向こうの
「あっ、おい!」
「……相変わらず早ぇな、あの皇子」
有無も言わさずに駆けて行くユグナリスの尋常ではない速さに、ドルフとスネイクは呆れた様子を見せながら溜息を漏らす。
そして少し考えた後、自分達もユグナリスを追うように不時着した
そんな三人の動きを見ていたクビアは、姉タマモに軽い口調でこう伝える。
「私もぉ、向こうの
「ふんっ、言われるまでも無いわ」
互いに素っ気ない様子で別れる妖狐の姉妹は、そうして別々の場所に向かって向かい始める。
そして先行しているバズディールやシンを含んだ干支衆達は、神殿へ通じる入り口を探しながら走り廻っていた。
「――……あの神殿、周りに危ない結界が張られてるね!」
「ああ。どこか、
「そういえば
「ならば、向かってみよう」
『
そして彼等が向かうその先には、不時着した
こうした状況の中で、不時着した
そして傷付きながらも開かれている貨物室の扉を飛び越えて
「――……誰か、誰かいませんかっ!? ……エアハルト殿、いないんですかっ!?」
先に来ている事を知るエアハルトへ呼び掛けるユグナリスだったが、その返答は届かない。
ただ虚しい程に空虚な反響音が鳴り響き、ユグナリスの表情に浮かぶ焦りを色濃くさせた。
そして荒れた船内を移動しながら、破損した瓦礫などを飛び越えて
すると数分後に
「居たっ!! あの、御無事で――……!」
「――……お前は……」
ユグナリスが赴いた
そしてそのすぐ傍の壁には、白髪で老齢な男性がボロボロの姿で傷付き座らされている姿があった。
そんな二人が互いに気付き、視線を合わせる。
それは先に目覚めていた『青』と、現代のユグナリスが初めて対面した光景でもあった。
こうして急変を迎える悲劇の舞台において、役者と呼べる者達が揃い始める。
彼等は世界が滅びるという事態を認識できないまま、ただ自分が成すべき事を考えて動き続けるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます