理想の破壊者
ウォーリスを吸収したマナの
それを浴びた者達は望む望まぬに関わらず
辛うじてそれを免れた帝国皇子ユグナリス達を乗せる
そして
誰もが対抗策も無いまま、拡大され続ける
それは人間大陸の果てに存在するフォウル国にも及んでおり、
「――……やはり、こうなってしまいましたか。……これでは、魔大陸にまで影響が及んでしまう……」
標高二万メートルを超える土地を自身の結界で丸ごと覆い守るレイは、赤い光の侵入を見事に防げている。
しかし他の大地にも降り注ぐ赤い光が、魔物や魔獣を始めとした生命を次々と取り込み、
更にその光が人間大陸のみならず、魔族達が住み暮らす魔大陸にも影響を及ぼす事を懸念する。
それは同時に、瞼を閉じているレイの口元を僅かに歪めさせた。
「例え、この変事が治められたとしても。魔大陸の
レイはそう呟き、この事態が魔族側の
それは同じ
しかし
その勢いが衰えるどころか強まり続けると、流石に先の事を懸念していたレイも僅かに表情を険しくさせた。
「……この干渉力は、
押し寄せて来る光が己の生み出す結界に干渉する感覚から、レイは世界を照らす赤い光が
そうして
しかし地上で暮らす
そうして誰も止められる事態の中で、ある人物もまた望まぬ
「――……リク……。……おい、エリク」
「……?」
懐かしい声に呼び起こされたのは、瞼を重く閉じていたエリク。
彼は朦朧としていた意識を覚醒させながら、瞼を開けて目の前に立つ人物を見た。
それは幼い頃からエリクが最も慣れ親しむ、同じ黒獣傭兵団の副団長ワーグナー。
呼び掛けられながら起きたエリクは、いつものように座った姿勢で大剣を抱え持ったままワーグナーを見上げた。
「……ワーグナー?」
「お前さんにしては、珍しくグッスリだったじゃねぇか。疲れてんのか?」
「……ああ、そうだな。……俺は、役目を果たしたんだな」
「?」
エリクはワーグナーを見上げながら、何かに気付いてそうした言葉を呟く。
そして大剣の柄を掴みながら立ち上がると、ワーグナーの顔を見ながら問い掛けた。
「今日は、何をすればいい?」
「良いのか? 疲れてるんなら、もうちょい休んでてもいいぞ」
「これから十分に休める。だから、いい」
「そうか? じゃあ、早速だが仕事の話をするがな。この間、
そう言いながら傭兵としての仕事を説明するワーグナーの話を、エリクは聞き入る。
しかし彼はいつもの相槌でその説明を受け流しながら、話半分の理解で留めていた。
この時のエリクは、死後に輪廻へ赴き夢を見ていると理解している。
しかし以前のような違和感は無く、また不安や焦燥感は無い。
エリクは自分自身がやるべき事をやり終えて
「……後の事は、ケイル達に任せよう」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、何でもない。……行こう、ワーグナー」
「おぅ」
ケイルは自分の死を受け入れ、そのまま夢の住人であるワーグナーと話を合わせる。
そして記憶に残る黒獣傭兵団の詰め所から出ると、ワーグナーを先頭に二人で歩きながら今は亡きベルグリンド王国の王都に広がる下町を歩いた。
下町を歩くと、表に出ている者達が
それに軽い相槌と言葉だけで返して行くエリクは、懐かしい王都の街並みを見回しながら呟いた。
「……俺は、
「え? ……どうしたよ、急に」
「いや。……久し振りに、ここを見て。そう思った」
「久し振りって……まるで、今まで違う場所に行ってたみたいじゃねぇか。どうしたんだ?」
「そうだな。俺は
「……エリク?」
「帝国に行って、樹海に入って。船に乗って、大陸を渡って。別の国を旅して。……そういう、夢を見ていたのかもしれない」
「なんだ、夢の話かよ。……まぁ、良いんじゃねぇの? 夢で何しようが、お前の自由なんだからさ」
唐突な言葉と共に零れるエリクの言葉に、ワーグナーは呆れるような笑みを零す。
それを僅かな笑みで返すエリクは、自らの夢を思い出すように辿りながら青い空を見上げた。
「ああ、とても良い夢だった。……ありがとう、ワーグナー」
「え?」
「お前が居なかったら、俺はきっと、こんな夢を見られなかった。……本当は、
「……よく分かんねぇけど、
「そうか、すまん」
「別にいいよ。それより、仕事前になんか食って行こうぜ。今日は俺のオゴリってことでよ」
「分かった」
そうした話を交える二人は、慣れ親しんだ王都の下町を歩く。
そして行きつけの店に赴き、ワーグナーが注文した肉料理を食べた。
味が分かるようになっているエリクは、記憶にある店の料理がこうした
そして美味いと言いながら食べるワーグナーに初めて賛同しながら相槌し、僅かな幸福感を強めた。
そうして満足した様子で支払いを終えると、二人は店から出る。
すると突如として轟音が鳴り響き、地面を揺らす程の地響きを感じながらエリクとワーグナーは驚愕を浮かべた。
「!?」
「な、なんだ……こりゃっ!?」
「――……バ、バケモノが出たぁあッ!!」
「!!」
突如の事態が起きた中、王都の住民達が慌ただしく動く姿を二人は目撃する。
そして住民達の口からそうした言葉が飛び出ると、二人は顔を見合わせながら住民達が発見した
しかし二人が辿る道は、先程まで自分達が歩いていた道に続く。
それは黒獣傭兵団の詰め所がある場所であり、二人はその付近に存在する建物が倒壊し炎上している光景を目にしていた。
「お、
「……どうなっているんだ……ッ!!」
「エリクッ!!」
ワーグナーは
それはエリクも同様であり、輪廻で見る夢がどうしてこのような惨状を自分に見せるのか理解できぬまま、僅かな怒りを宿らせて炎上する建物内に飛び込んだ。
そして燃え盛る詰め所の内部を突き抜け、奥にある訓練場へ辿り着く。
すると訓練場の周囲が燃え盛る中、煙越しに大きな影が立っている事に気付いた。
「誰だっ!! ……お前が、こんな事をしたのかっ!!」
エリクはそこに立つ人物に声を向け、背負う大剣の柄に右手を掛けながら身構える。
すると炎上する煙の中で振り返った人物は、エリクに驚愕させる声を聞かせた。
「――……ピーピー喚くんじゃねぇよ。ヒヨコか、テメェは」
「……その声は、まさか……!?」
その声に驚いた後、土煙の中からその大きな影は実際の姿を現す。
それは周囲を燃やす炎のように赤い肌を持ち、黒い髪と同じ二本の角を生やした異種族の姿。
更に体格はエリクを遥かに超えている三メートル強の
明らかに王国では見た事も無い姿ながらも、エリクの記憶にはその人物が誰なのかはっきりと理解できた。
「お前は、鬼神フォウル……!!」
「……へっ、やっと見つけたぞ。このハナタレ小僧が――……ごらぁああっ!!」
「!?」
突如として輪廻の夢に現れた鬼神フォウルの存在に、エリクは驚愕を浮かべながら後退る。
逆にフォウルは前へ歩み出し、凄まじい形相で睨みながら右拳を固めてエリクに襲い掛かった。
こうして
しかしその
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