子供達の宿題
ゲルガルド伯爵領地の廃鉱山地帯に設けられてる地下の実験施設にて、ウォーリス達は囚われていたリエスティアを救出する。
しかし精神と魂をほぼ消去されていたリエスティアは意識を失っており、更にウォーリスに施されているゲルガルドとの
そしてジェイクの絞り出した提案により、逸脱した実力を持つメディアに解決方法を尋ねるということで
リエスティアを運びながら地上へ駆け上がる三人は、メディアとの合流を目指した。
一方その頃、
廃鉱山が広がる山々に巨大な爆音が鳴り響き、凄まじい土埃を
その上空にはメディアが浮遊したまま無傷で見下ろしており、小さな溜息を漏らしながら呟いた。
『……それが本気のつもり? だとしたら、少しガッカリだわ』
『――……グッ、ガァアアッ!!』
侮りではなく失望に近い
しかし
そんなゲルガルドが再び
『
『なんだと……っ!!』
『そうそう、そういう
『……調子に乗るな、小娘がぁああッ!!』
挑発の言葉に再び激昂するゲルガルドは、自身の左腕を右手で捥ぎ取る。
すると捥ぎ取った左腕が白と赤の光へと変化し、凄まじい
それを右手で翳し向けるゲルガルドは、一瞬でメディアの上空に転移しながら
しかし相手の位置を瞬時に把握したメディアは、それを避けずに両腕を掲げて魔石の嵌め込まれた
『馬鹿めっ!! このエネルギー弾をまともに受けるとは――……』
『
『なっ!?』
ゲルガルドは巨大な威力を秘める
見下ろしていたはずのメディアと
そしてゲルガルドが驚愕し硬直した思考のまま振り向いた瞬間、その背中に凄まじい衝撃を受ける。
すると自分が放ったはずの
夕闇に覆われ始めていた空に白い閃光が迸り、大気を揺らす程の衝撃を周囲に及ぼす。
それを見上げながら両腕を組むメディアは、呆れるような表情を浮かべながら呟いた。
『相手が同じことを出来るって、どうして想定できないのかしら。……これだから、凡人には困っちゃうのよね』
そうした呆れの言葉を向けるメディアは、閃光の収まった
するとその中から身体の各所を吹き飛ばされたゲルガルドが現れ、大きく疲弊した様子を見せていた。
『――……ハァ、ハァ……。……何故、こんな……ッ!!』
『……なるほど。そういうこと』
先程まで瞬く間に傷を治していたゲルガルドの様子と異なる
そして自らその
『私の攻撃だとすぐに治るのに、自分の攻撃だと傷の治りが随分と遅いのね』
『……ッ!!』
『曲がりなりにも、
『……!!』
今までとは異なる邪悪な笑みを浮かべたメディアに、ゲルガルドは自身の憤怒や憎悪を超える恐怖を抱き始める。
目の前の
それでも転移魔法さえ使えば、彼はメディアから逃亡できる。
しかし
『……クソ……ッ。……もう少しで、望みが叶うというのに……っ!!』
ゲルガルドは苦々しい表情と小声を浮かべ、ある場所に視線を向ける。
そこはゲルガルドの地下実験施設が隠されている小規模の
そうして余所見をするゲルガルドに対して、メディアは再び挑発染みた言葉を向ける。
『どうしたの? さっさと身体を治して、攻撃して来たら?』
『……ッ!!』
『それとも、貴方の攻撃が
『……貴様、何が目的だ……。……どうして、私を……!』
『どうして? ……んー、そうねぇ。……暇だから?』
『!?』
『ここ数年、平和だけど退屈な生活ばっかりしてたのよね。だから刺激的な事がしたかったっていうのも理由。……それに近場に
『……お前は……お前は、何者だ……!?』
『だから何度も言ってるでしょ。――……私は天才よ』
首を傾げながら自身を『天才』と称するメディアに、ゲルガルドは底知れぬ恐怖を抱く。
ただの
その底知れ無い相手に対する恐怖は、まさに未知の存在と言ってもいい。
二度に渡る人魔大戦を経験し、更に数多の技術力を有する自分さえ知らない
『……駄目だ……。今、コイツと戦ってはいけない……。――……クソッ、覚えていろ……!!』
『あっ』
浮かんだ
それを見たメディアは
『……随分と遠くに逃げたわね、フラムブルグの
ゲルガルドが転移した位置を把握しながらも、メディアは興味を失ったかのような呆れ顔を見せる。
そして実験施設のある森の方角へ視線を向けると、そちらに意識を向けながら何かに気付いた。
それは実験施設の出入り口から這い出て来るウォーリス達の気配であり、三人だったはずの生命力が四名に増えている事をメディアは察する。
すると口元を微笑ませ、仄かな怒りを収めながら口元を微笑ませた。
『まぁ、別に私が
余裕の微笑みを戻したメディアは、ゲルガルドに対する未練が一瞬で失せる。
そしてこれから育つだろう
こうしてメディアはゲルガルドを敢えて逃がし、未来の子供達に課題を残す。
その選択はアリアやエリクを始めとした様々な人物達の人生に影響を及ぼす事にもなるのだが、この時点でその未来を予測できる者は誰も居なかった。
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