覚悟の証明
『
しかし自分達の
そして
しかし
「――……はぁあっ!!」
「グッ!!」
自身の魔力で身体能力を強化し、更に身に着けている
そして
成長中ながらもまだ青年としては小柄なマギルスだったが、その倍程の鎧と大盾を身に着けたザルツヘルムが逆に吹き飛ばされる。
しかし今度は大きく飛ばされず、立っていた位置から数十ほど下の階段まで落下させられる程度に被害を留めた。
それでも
周囲には影となる障害物も無く、神殿周辺の影響によって飛翔すらも封じられてしまっており、装備を活用し有利を保つマギルスに対して攻めあぐねた様子が窺えた。
その状況に関して、ザルツヘルムは甲冑で隠れた口から愚痴にも似た言葉を呟く。
「……環境や装備の影響もあるだろうが、まさか数日でここまで見違えるとは……。……私の動きを、正確に捉えている……」
暗闇に囲まれていた同盟都市は、悪魔であるザルツヘルムに『闇』という味方を付けていた。
そして悪魔化し大量の命を
しかし
影が生み出され難い構造物と、昼間のような明るい空。
そして魔力を含む一定の
「……むっ」
それを否応なく自覚されられているザルツヘルムの意識に、更なる警戒が発生する。
それがエリクとケイルである事を確認していないザルツヘルムだったが、少なくともそれが
前後を挟まれながら不利な状況での戦いを強いられたザルツヘルムは、
「……この手段だけは、使いたくは無かったが……。……仕方ない」
「!?」
ザルツヘルムは自らの鎧や武具と変質させている
そして鎧の無い悪魔の姿を晒しながら、マギルスを見上げて告げた。
「マギルス。騎士として君と戦えたことを、光栄に思う。……だが、ここからは『騎士』ではなく、君達の『敵』として相対させてもらおう」
「……何する気さ?」
「さらばだ、少年」
「あっ!」
奇妙な言葉を言い残すザルツヘルムは、突如として自ら大階段の外周へ走り出す。
そして自ら
マギルスはそれを見て大階段の
その時に下から登って来ていたケイルとエリクが、階段を駆け上りながらマギルスに呼び掛けた。
「――……マギルスっ!!」
「あっ、ケイルお姉さん! エリクおじさんも!」
ケイルの呼び掛けにマギルスは反応し、マギルスは二人の方へ視線を向け直す。
すると二人はザルツヘルムが落ちた階段の
「敵、倒したのか?」
「ううん。自分で落ちて行っちゃった」
「落ちたって……逃げたってことか?」
「多分、違うと思うよ。……アレは、逃げた顔じゃない」
「……!」
ケイルの推測に対して、マギルスは再び
その言葉を聞いたケイルとエリクは、マギルスの勘を信じながら警戒を緩めずにいた。
そしてその勘が正しかった事を証明するように、落下していくザルツヘルムに変化が生じる。
落下中のザルツヘルムは自身の胸に右手を突き刺し、何かを引き
それは未来の戦いでエリク達が破壊した赤い
右手に掴み持つ小さな
そして落下する勢いに身を任せながら右腕を振り翳し、
すると次の瞬間、赤い
その内部からは赤黒い
「……さぁ、憎悪に染まった魂達よ。我が身を依り代とし、
『――……オォオオオオオオオオッ!!』
そして次の瞬間、赤い
それを受け入れるザルツヘルムは赤黒い
すると溢れ出る
ケイルも不穏過ぎる異様な気配が下に広がっているのに気付き、神妙な面持ちと言葉を浮かべた。
「な、なんだ……こりゃ……!?」
「……あの
「えっ」
「俺達が未来で破壊した、あの赤い
「……まさか、野郎……!!」
「この大地は
未来で赤い
しかしその確証を得る暇も無いまま、悪魔化しているザルツヘルムを依り代にして取り込んだ赤い
赤黒い
そして手足と思しき姿を溢れ出て来る
すると大階段の下側を見ていたマギルス、そしてエリクやケイルにも下で起きた変化が視認でき始める。
その変化は、溢れ出る瘴気によって形成され始めた
「……なに、あれっ!?」
「……帝都を襲っていた、
「じゃあ、まさか……!?」
「奴は集めていた死者の魂と瘴気を、取り込んだ。……俺達全員を、倒す為に」
「!!」
エリクは死者達の怨念と瘴気を取り込んだ赤い
その直感は正確である事を徐々に証明するように、ザルツヘルムは二百メートルを超えるだろう瘴気に覆われた化物へと姿を変え始めていた。
そして大階段の下側を肉体を覆う瘴気で飲み込める程まで巨大化した異形の
その視界にはマギルスと共に立つエリクとケイルの姿が見え、意識を保っているかも分からない怪物は口を形成し吠えながら赤黒い瘴気を撒き散らした。
『――……ウヴォォオオオオオッ!!』
「うわっ、こっち見たよっ!!」
「来るぞっ!!」
「クソッ、またこんな化物の相手かよっ!!」
それに対して各々に武器を構えるエリクとマギルス、そして嫌悪を見せるケイルは、巨大な瘴気に取り込まれたザルツヘルムと相対した。。
こうして圧倒するかに思えたザルツヘルムとの戦いは、思いもよらぬ手段によって
それはザルツヘルム自身が『騎士』の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます