分断
都市中央部に建てられた塔の内部に侵入する為、マギルスが斬り掘った穴にエリクは飛び込む。
地下にある空間は誰もが想像していた以上に深く、マギルスの後に続いたエリクは三十秒以上も落下していた。
そしてエリクは下を見ると、青い光を見る。
それは見慣れているマギルスの魔力で形成された
「――……フンッ」
エリクは瞳を閉じて集中し、全身に
魂の世界で『聖人』に至り
「――……ここが、底か?」
「あっ、エリクおじさんも来たんだ?」
「ああ」
着地したエリクは、暗闇の中でマギルスの声を聞く。
マギルスは青色の魔力を、エリクは白い
「随分深いよね、ここ」
「ああ」
「でも、まだ変な魔力は底にある感じ。もっと地下があるみたい」
「また斬るのか?」
「んー……。ダメかも」
「?」
「床の硬さ。エリクおじさんが着地しても割れてないし、凄い硬さじゃない?」
「……確かに、そうだな」
「あの変な塔も、僕じゃ斬れないと思うんだよね」
「試さなくていいのか?」
「うん。嫌な感じがするから」
「……確かに、そうだな」
二人はそう話し、床や塔が形作られている
魔導国の都市風景と不釣り合いな黒い金属の建物と、それと同じ材質で作られた地下の空間。
強い衝撃を与えても欠ける様子すらない金属は、エリクやマギルスが今まで見た事のないモノだった。
二人は警戒を高めながら歩み、黒い塔が存在した方向へ歩みを進める。
そして地下に伸びた塔を見つけた二人は、それを眺めながら周囲を一周した。
「――……うーん。やっぱり、入り口っぽい所は無いね?」
「……破壊するしかないかもな」
「試す?」
「……やってみるか」
塔の周囲を一回りした結果、やはり入り口が無い事を二人は知る。
状況が膠着した二人は変化の覚悟を決めて互いに背負う武器を構え、そして塔に対する攻撃を加えた。
「――……ッ!」
「
その硬さは尋常ではなく、
その後も幾度か二人は攻撃を加え、更に全力に近い攻撃を加えても欠片一つとして塔を破壊する事は出来なかった。
「――……ダメだな」
「ぜんっぜん、斬れないなぁ……!」
「……どうする? 別の道を探すか?」
「うーん。でも多分、地下全部がこんな感じだよ?」
「……やはり、何か仕掛けがあるのか」
エリクとマギルスは互いに暗い周囲を見渡し、更に地下に潜るか、別の侵入口を探す。
しかしそう簡単には見つからず、二人が地下へ降りてから三十分以上の時間が経過した。
二人は武器を背に戻し、座り込んで休息している。
思わぬ立ち往生に二人は溜息を漏らしたが、休息を終えて立ち上がり別の道を探ろうとした。
その時、暗かった地下空間に突如として明かりが灯る。
突然の変化に驚いた二人は立ち上がると同時に身構え、明かりが灯った周囲を見渡した。
「――……!」
「これって……」
二人が見た地下の光景は、黒い金属で覆われた巨大な空間。
地上にあった幾つもの黒い塔が地下まで伸び、それが支柱となって地上の都市を支えているという全景が明らかになった。
しかし明らかになった地下の全貌とは裏腹に、二人は警戒度を高める。
明るくなると同時に微細に振動し始める地下空間に気付き、周囲の様子を二人は探っていた。
「……ッ!!」
「うわっ!?」
周囲を警戒していた中で、エリクとマギルスは地に足を付けている感覚を失くす。
黒い金属が突如として透明となり、二人の肉体が貫通するように金属内に取り込まれ始めた。
「クッ!!」
「ぬ、抜けない……!?」
二人は脚力で逃げようとするが、取り込まれる状況から抜け出せない。
透明な金属内へ吸い込まれる二人は、そのまま藻搔きながも取り込まれて消えた。
――……それから、数十分の時間が経つ。
取り込まれたエリクは意識を取り戻し、顔を上げ身体を起こす。
そして周囲を確認したエリクはマギルスが居ない事に気付きながらも、更に驚きの表情を浮かべながら瞳を大きく見開いた。
「――……ここは……!?」
エリクの目の前に広がるのは、黒い金属とは真逆の白い金属に覆われた円形状の空間。
そして壁を見てから頭上を見上げると、何処まで続くか分からない螺旋の階段が存在していた。
「……進め、ということか……」
マギルスと離れ階段しか存在しない空間に閉じ込められたエリクは、何かの意図を察して階段に向けて歩き出す。
左耳に取り付けていた通信機も機能せず完全に孤立した状態で、何処まで続くか分からない螺旋の階段を登り始めた。
「――……ハッ!?」
一方、マギルスも同じように目が覚めて跳び起きる。
そこはエリクと全く違う場所であり、その異様な光景にマギルスは初めて嫌悪に近い表情を浮かべた。
「……うわ、なにこれ……?」
嫌悪したマギルスが見た光景は、普通の鉄で出来た施設と機器に覆われた地下施設。
そしてそこには何千という赤い
しかしその人間達は、普通の姿ではない。
全員が異形へ変貌し、人間とは程遠い
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