破壊工作
グラドが率いる突入部隊は、目的の一つである
地下の大扉が僅かに開いた先に広がる膨大な光景は、兵士達は固唾を飲ませた。
グラドもその光景を目にし、驚きながらも周囲を見る。
そして小型
「――……
「……確認して来ます」
「ああ、頼む」
グラドは通信機で
それを傍で聞いていた副官は戦車の方へ走り、操縦席に着いている兵士に通信を試みさせる。
しかし通信が届かず、また地上部隊とも連絡が取れない事をグラドに伝えた。
「……ダメです。
「地上で何かあった、と思うべきか?」
「いえ、先程まで通信は出来ていました。……原因があるとすれば……」
「……あの
「施設から発せられる高魔力に、通信が妨害されている可能性が。……恐らくこの鉄扉は、それを防ぐ為に分厚く作られていたんでしょう」
「ふむ……」
グラドは副官と話しながら状況を確認し、通信が繋がらない理由を推察する。
二人の推察は正しく、製造施設の中央に設けられた赤い
同盟国軍で用いられている通信機は
それを妨害できる程の魔力周波数が間近にあれば、必然として通信機から飛ぶ魔力周波数は阻害されてしまう。
施設から発せられる魔力の影響を受けた状態では、中継している
グラドはこの状況で、ある選択を思考に浮かべる。
この突入部隊で製造施設を破壊するか、地上に戻り状況を知らせてから地上部隊も率いて破壊するか。
二つの選択を浮かべたグラドは、兵士達の顔を見ながら命じた。
「――……時間が惜しい。第四部隊の半数は、リフトで戻り地上部隊と
「了解」
「他は俺達と一緒に、施設内部に侵入。内部の状況を把握し、破壊する設備を選定。第五部隊は各設備へ時限爆弾を取り付けろ。時間は、全て一時間後に設定だ」
「了解……!」
「不穏な状況だと感じたら、すぐに知らせて撤退しろ。爆弾の取り付けに失敗した場合は、地上部隊と合流して全兵力で施設を破壊するぞ」
グラドはそう指示し、第四部隊の兵士を数名だけ戻らせる。
それと同時に戦車二台と第三部隊の一部をその場に残し、第三から第五部隊の混合班を編成して施設内部に侵入させた。
グラドやケイルもその中の一班に加わり、互いに別れて施設内部に侵入する。
そして赤い光に照らされた製造施設内に、全ての班が散らばった。
各班が探った結果、製造施設内部は大きく分けて四つの区画に分けられている事が判明する。
一つ目の区画では、各製造機が自動的に
その生産量は数分だけで軽く千を超えており、そこを確認した班の兵士達を困惑させるに十分な状態となっている。
二つ目の区画では、製造された部品が
同じ機器を数十体という
三つ目の区画では、組み立てられた各機器が集合し、同じように固定された
それは新型の
その光景を見た班の兵士達は、戦闘用とは異なる製造用と運搬用の
最後の、四つ目の区画。
そこが最も広大な区画であり、それを見たグラドを始めとした兵士達は、血の気を引かせた表情で呟いていた。
「――……馬鹿な……ッ」
「そんな……」
「これほどの数が……!」
「しかも、全て新型だ……」
グラド達が見たのは、新型と言われている球体型と飛行型の
銀色を帯びた鋼鉄で覆われた外装が壁と地面に一面として並び立ち、その数は数える事も諦めてしまう程だった。
各班はそれを物陰に隠れながら覗き、絶望的な光景に顔を伏せる。
今まで辛うじて撃退できていた敵の
このまま魔導人形の製造を放置すれば、この数が地上へ降り立って残る人類を絶滅させる。
それが容易に想像できる程の規模であり、また今現在も各国が攻め込まれている事を聞いている兵士達は、互いに頷きながら決意の言葉を口にした。
「――……ここは、絶対に破壊するんだ……!」
「ああ……!」
「
「了解」
各班長はそう指示し、隠れながら移動して設備の見え難い位置に時限爆弾を取り付ける。
時間を一時間後に設定しタイマーを起動させて別の場所に移動すると、新たな設備へ移動した。
そして最も破壊すべきと理解できるのは、中央の設備。
赤い
それが
「――……爆弾の設置は?」
「目ぼしい設備には、取り付け完了です」
「よし。……残るは、
「動力源の
「そうだな。――……ッ」
「将軍? どうなさいました?」
「……いや。歳のせいか、フラついただけだ」
「……高い魔力を発している施設です。もしかしたら、魔力を長く浴びると人体に害を与えるのかもしれません」
「なるほどな。……なら、さっさと取り付けを終わらせておさらばだ」
「ハッ」
姿勢を戻したグラドはヒューイを含めた第五部隊の兵士達に指示し、背負う鞄から爆弾を取り出して設置させていく。
まずは周囲の設備に複数の爆弾が取り付けられ、それぞれ顔を見合わせながらタイマーを合わせて起動させる。
それから中央の設備に爆弾を取り付けようとして各兵士達が手を触れた瞬間、赤く光っていた
「――……!!」
「な、なんだ……!?」
突然の変化に兵士達は僅かに動揺し、思わず手を離してその場から退く。
グラドとヒューイも同じように下がり、動揺しながらも周囲に目を向けた。
そして周囲にも起こっている変化を、グラドやヒューイを含んだ兵士達は確認する。
今まで単一動作をしていた組み立て用の
それと同時に、全ての
その動作と状況に悪寒を感じたグラドは、すぐに兵士達に命じた。
「――……早く、コイツにも爆弾を取り付けろッ!」
「!」
「気付かれたッ!!」
グラドの叫ぶような指示に兵士全員が表情を強張らせ、急いで中央設備に爆弾を取り付ける。
それと同時に製造施設の四方にある壁の一部が切り抜かれたように開け放たれると、新型の球体
そして回転が途中で止まると、以前のように五メートル強の人型形態に変形する。
それを確認したグラドは爆弾の取り付けとタイマーの設定が完了した事を確認し、焦りながらもはっきりとした口調で伝えた。
「すぐに撤退だ!」
「は、はい!」
「壁回りはダメだ! 中央を突っ切るしかないッ!!」
グラドは完全に取り囲まれた事を察し、中央突破で撤退する事を選ぶ。
兵士達もその命令に従い、隊形を整えて各銃火器を構えながら出入り口の大扉に向けて真っ直ぐ走り出した。
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