6夏休みと帰省➁~汐留悠乃の実家~(3)
「男同士の激しい裸のぶつかり合い……」
「雲英羽さん、何を考えてい」
「そうですよね。わかりました!お義母さんが相撲をこよなく愛している理由が!お義母さんって、案外、私と似たような趣味なのかもしれませんね」
「あらあら、相撲の良さを理解していただけたと思っていいのかしら?」
「ええ、よく考えたら、相撲の男の裸同士でのぶつかり合いは、BLでのあれ、みたいなものですよね。全力で、裸でぶつかり合うというのは、とても素晴らしいことです。口以外でのコミュニケーション方法ともいえます!それを競技としてやっているとは、いやはや、相撲とはなんと奥深い競技……」
「そうでしょう、そうでしょう!相撲って、見れば見るほど奥深いものなのよ。何より、あの大きな肉体同士での戦いっぷりには、毎回ドキドキしちゃうわねえ」
「わかります。わかります!ドキドキする気持ち。裸での戦いなんて、ドキドキ以外にも、ときめきや感動を私たちに与えてくれますよね。あの運動した後の汗もいいですよ、一生懸命運動した後の男同士の話し、なんてのもまた一興です」
「競技を終えた後のことにまで目を向けているなんて、実は雲英羽さんは、相撲の隠れファンだったのね。私も、競技後の彼らもまた素敵だと思うわよ。あのコメントを言っている姿と、髪を結ってもらっている姿も好きよ」
なんとなく、いやかなり二人の間で話が食い違っている。かたや、BLの魅力を語っているに過ぎないし、もう片方は純粋に相撲の魅力を説明している。そろそろ止めに入らないとやばいと感じた悠乃は、二人の間に口をはさんだ。
「雲英羽さん、うちの母さんと話すのはいいけど、ほどほどにしておかないと。たぶん、雲英羽さんと母さんの間には、絶対に越えられない壁があるとおも」
「決めた!私はあなたのことを実の娘だと思うことにします。こんなに相撲の魅力を知っている子がうちの家に来てくれたことは運命だわ!」
「私も、お義母さんとは趣味が合わないかと思っていましたけど、それでも大元は同じ趣味と言えるでしょう。ある程度の違いは人間、妥協します!」
『なんて素晴らしき、同胞よ!』
「ふむ、仲が良いことはいいことだ」
二人は、悠乃の話を完全にスルーして、意気投合をし始める。手をがっちり握り合い、何やらお互いの信頼を高め合っていた。その隣では、悠乃の父親が二人の仲がいいことに感心していた。喜咲と陽咲は退屈過ぎて、悠乃のひざの上でウトウトしていた。
「ああ、でも私はデブ専ではないです。いくら、男の裸が好きでも、そこは譲れません」
「えっ?相撲の魅力はあの、ふくよかな身体でありつつも、その下の筋肉によって動く身体の神秘がいいんじゃないのかしら?」
「いやいや、そんなわけありませんよ。それに、私はイケメンが好きなんで、あの相撲の髪を結っているのもなんとも言えないですね。別に日本の国技をバカにする気はないですが、それでも、好きにはなれませんね」
『えっ?』
「き、雲英羽さん、そろそろ僕たちはお暇しようか。そういえば、雲英羽さん、最近はまっているあの作品のコラボカフェが当選したんだったよね。それって、確か明日だったよね。確かそうだ!じゃあ、その準備もかねて、もう帰ろうか。いや、僕と一緒に今すぐ帰りましょう!」
「ちょっと、悠乃。私はまだ雲英羽さんとお話を」
「ごめん。これ以上はダメだ。このままだとやばい方向に話が進んでいきそう。だから」
「そんなことはないわ。だって、私とお義母さんは、大元はつながっている。私たちは、れっきとした、ふじょ」
「かあさん、じゃあね。また会える日を連絡するよ」
最後まで雲英羽に言葉を言わせる前に、悠乃は、雲英羽と自分の娘たちを連れて、汐留家の実家を後にした。
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