【ヘブンリーブルー】

 さざ波のような

 大人の恋愛をこっそり教えてくれたのは

 母の本棚にあった

 素敵な表紙の本


 読み始めからドキドキして

 まさか自分の母がこんな本を読んでいたなんてと

 古い表紙を眺めながら思った


 母にもわたしと同じように恋に焦がれた季節を

 どうやら送っていたらしい


 本の中の恋人たちは

 胸をちぎられるような別れを選択したけれど

 そんな恋を母もしたことがあるのだろうか


 私は辛い思いはしたくない

 最上級好きな人は永遠に好きなままでいたい

 ずっと一緒にいたい

 何もかもを許した相手にさようならをすることを

 前提とする恋は遠慮したい


 でも

 きっと体験しないと分からないこともある

 ということも分かっているつもり


 いつか好きな人と恋をして

 これが本物だと分かるときが来たら

 「あの本を読んだよ」

 と母に伝えてみようか


 母が母になるずっと前に

 出会った恋の話を聞いてもいいだろうか



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