第96話 ビンタと新たな土地
ハルト達はアルスの塔の下にある大きな川に落ちた。
今は捜索部隊がハルトの行方を追っている。勇者と首謀者リディアに関してはこれ以上どうしようもない状況だ。
ロイがダークマターの親機である黒のステッキを破壊すると、敵側にいた騎士から黒い
体内のダークマターが浄化された証なのだろう。人は女神によって創造された存在、それ故にダークマターは浄化される。
本来は相容れない存在同士なのだ。
ロイ達の活躍により、民や
ヴォルガ王の直属部隊が到着し、ロイ達は帝都へ向かうこととなった。
☆☆☆
──パシンッ!
帝都の会議室にて乾いた音が鳴り響いた。
ヴォルガ王がヴォルガ王のそっくりさんにビンタされていたのだ。
そっくりさんは髭を取って王冠を取った。変装を解いたその人は若々しく、30代といった感じだった。
「王よ……置き手紙だけで玉座を任せ、ダートの反乱を突き止め、挙げ句そのままアルスの塔で戦争するなどと……ご自身の立場を理解しているのか!?」
「いや、ワシは王が動かねば民は動かんという信念のもと──」
「黙りなさい!」
影武者だった人の一喝が会議室に響いてみんなビクッと驚いた。
「いいですか? 民なくして王はない、ですが王がいなければ帝都も崩壊するのです。せめてこれからは一言、
「ふむ、すまなかった。今度からは気を付けよう」
影武者の男は王に王冠を渡したあと、ロイ達の前に立った。
「あなたがこのパーティのリーダーですか?」
「スタークの現リーダー、ロイだ」
「私は王の側近にして影武者のフレミーと申します。以後、お見知りおきを」
堂に入った一礼、ロイも礼を行った。
「さて、エイデン・イグニア……貴殿にはこれから褒賞と罰が待っている。わかっているな?」
「……はい、存じております」
突然の勧告にソフィアが声をあげた。
「待ってください! ロイはエイデンの部下に近い存在、そのロイが今回の件を解決したのに、何故罰があるんですか!?」
詰め寄るソフィアに衛兵が槍を向ける。だが、フレミーは片手を上げてそれを下がらせた。
「私では配慮に欠けた言い方しかできそうにありませんね」
「うむ、ここはワシから話そうじゃないか」
ロイはソフィアの肩を抱いて下がらせる。
「今回の件は、スタークのダートとギルド職員であるリディアが共謀した事件じゃ。当然ながら死者も出たし、他の領地も数多く巻き込んだ。となれば、誰かが責任を負わなければならんのだ」
ソフィアはヴォルガ王の正論に反することができず、跪いてそれを聞いている。
「そこで、エイデンに責任を負ってもらうのだが……ポーンの剥奪は逆に帝国の損害になりかねない、色々考えた結果。スタークの解散、リーベの結成という形で責任を取ってもらうつもりだ」
「ヴォルガ王、正確には解体です。イグニア領と言えど守りは必要ですから」
スタークの解体、その一部がイグニア領の守りに配属されるとして、新たな組織リーベの目的がわからない。
ロイは疑問を払拭すべくヴォルガ王に質問した。
「ヴォルガ王、そのリーベとやらは一体何をする組織なんだ?」
「便利屋」
「……あ?」
「フレミー君、ロイが怖い顔をしておるよ!?」
フレミーは呆れた顔をしつつロイに説明を始めた。
「……はぁ。帝国から独立した組織として動いて頂きます。活動はギルドや帝国からの依頼を受ける、その際のサポートは勿論のこと、あなた方リーベにはギルドと帝国が共同で作り上げた"エデン"と呼ばれる土地が与えられます。依頼がない場合は各々お好きに行動して構いません、勿論依頼に対する拒否権もありますのでご安心を」
つまり、新たな土地でギルドやら帝国やらの依頼を受けて生活しろってことか。まさにヴォルガ王の言った"便利屋"そのものだな。
しかも"帝国から独立した"というのが曲者だな。どんな依頼かは知らないが、失敗しても責任は取らないってことだからな。
「エデンに行く者、イグニア領に残る者、それぞれ選抜して向かうとするか」
ヴォルガ王とはここでお別れとなり、フレミーを伴ってイグニア領に帰還した。
本人達の意思を確認した結果、地元民はイグニア領に残り、
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