第16話 一方、その頃……

 サラサラと風に揺れる銀髪、Sラインがくっきりとした肢体、整った顔立ち、されどその表情は唖然としていた。


 普段は背中に装備している得物、つまり彼女の槍は現在地面に突き立てられ、彼女は杖のように掴まったまま地面を見つめていた。


 ──そして叫ぶ。


「なんでいないのよーーーーーッ!!」


 とある村の大広場の中央で彼女が叫んでいると、老人が話し掛けてきた。


「ソフィアさん、奴にも事情と言うものがあるんじゃよ。先程説明した通り、すでにここを発って1週間以上過ぎておる。そなたも早く追った方が良いのではないか?」


「ハァ……わかってるわよ。あなた達も、ワタクシが手配した馬車に乗ってここを出なさいな」


 老人、つまり村長は深く頭を下げて礼を述べた。


「生き残ったのは10人もおらん。最初は復興できると思っておったが、中々に難しいものじゃな」


「当たり前よ。あなた達の祖先が手を取り合ってたからこそ実現出来たことよ。それに、南の塔が解放されれば財政難が解消される……そうなれば暇潰しにあなた達を処理しにかかるわよ?だから早く発ちなさいな」


 再三の退去勧告に村長は再度礼をしたあと、生き残りをまとめて去っていった。


「にしても、まさかこんなオンブラに聖剣が隠されていたなんてね」


 村長に聞いた話しだが、勇者がオーパーツ奪取する少し前の事。

 ロイの両親が神の間を掃除していたら、壁が崩れて箱が出てきた。その中には名称不明の指輪と白銀の剣が入っていたそうだ。


 剣の方は巻き布の方に色々説明が書いていたために『聖剣グラム』であることがわかった。

 話し合いの結果、横暴極まる王国には報告せず、『保留』することにしたそうだ。


「これを渡すのを忘れておった」


 ソフィアが思考に耽っていると村長が馬車から降りて指輪を渡してきた。


「これは?」


「ワシらの村で婚姻を結ぶ時に必要な黒い指輪じゃよ。この村も終わりじゃろ?最後に若いもんに使って欲しいんじゃ」


 矢継ぎ早に語り、全力疾走でひき止めていた馬車に乗り込む村長。顔に張り付けた笑顔を浮かべ、村長達は今度こそ去っていった。


「ロイも寂しいわよね。すぐに会いに行くから待っててね」


 ソフィアは『聖槍ロンギヌス』の固有特性『魔力増幅オーバーロード』で神の間の遺跡を破壊し、その帰りに指輪を手で転がしながらふと思った。


 ──何で3つなのかしら?

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