第33話 文明の利器スマホで陽キャ美少女が休日も話しかけてくる①
今日はせっかくの休日だが、残念なことに雨が降っている。
雨に濡れながら書店巡りをするのは面倒なので、白山ナリサ先生(中の人・委員長)のなろう投稿作『所持金チート』をスマホで読んで時間を潰していた。
溜まっていた更新分を読み終えたところで、二宮さんからRINEメッセージが届いたので、今度はRINEトークの為にスマホをいじる。
『雨でジトジトしてる~。外出できないから暇だよね~』
『俺もなろうの更新分を読み尽くしたから、やることなくて暇だな』
『特に用事もないのにRINEでやり取りとか、何だか恋人っぽいよね』
いつもの陽キャ的なノリでメッセージが来たが、二宮さんのテンション高めなあの姿が見えないので冗談っぽさが薄まり、本当に少しだけドキッとしてしまった。
とはいえ通話ではないので、今の俺の様子がバレることはない。
その点は安心だ。
『友達同士でRINEするとか、むしろ友達そのものって感じでは?』
『むむっ。じゃあえっちな自撮りを送ったりすれば、恋人っぽいですかね~』
RINE開始早々、二宮さんのトークのネタ成分が強まってきたので、変に緊張せずに、二宮さんと文章を交わせる心境になってきた。
『そんな自撮り、親御さんが泣くぞ』
『ううぅ……。衛司ったら恋人にえっちな自撮りを強要するなんて、そんな息子に育てた覚えはありません! みたいな?』
『なぜ俺の母さんが泣くことに……。俺はそんな親不孝な真似しないぞ』
『冗談ですってば~。私の両親が泣きますね、嬉し泣きします。こんなに手を焼く娘にも、ついに恋人が出来たってね!』
RINE上でも普段のノリなので、文章越しでも二宮さんらしさを感じる。
これなら俺も学校で二宮さんと話すような感じで、気楽に文章を返しやすい。
『話が脱線してるよ~。えっちな自撮りを見たいか見たくないか、どっちです?』
「うーむ、これはどう返信すべきだろうか……?」
俺だって健全な男子高校生だ。男子生徒が校内一の美少女と認める、二宮さんのそんな自撮り――見たくないといえば嘘になるが、この会話は全て冗談の一環だ。
最近の二宮さんは陽キャ的友好関係とはいえ、男友達の俺には、物理的にも心理的にも距離感が近すぎないか?
もちろん嫌ではないが、これは普通のことなのか?
俺以外の男友達は知らないので、これが二宮さんのスタンダードか分からない。
既読スルーしながら色々考え込んでいると、追加のメッセージを着信した。
『既読スルーだね~。全裸待機ってことかな? じゃあ自撮り用意するね☆』
『まつて!』
俺は誤字も厭わず「待って」と慌てて送信してから、RINEの通話機能で二宮さんと無料電話することにした。
「もしもし二宮さん。俺が電話を掛けてきた理由は分かるかな」
「もちろんですとも! えっちな自撮りのポーズ指定ですよね!」
「そうだねポーズ、一時停止って意味だ。自撮りの用意を一時停止しようか」
「わお、中々な返しだね! ヨッシーに座布団一枚♪」
「別に上手いこと言ってやろうとした訳ではないが……。とにかく、自撮りを送るのならノーマルな写真で良いだろう。いや、二宮さんならレアな写真を送ってくれるはず」
俺はさりげなく二宮さんの挑戦心を焚きつけるような言葉を投げてみる。
すると電話越しに「ふっふっふ」と不敵な笑みが聞こえ始めた。
「そこまで言うなら、激レアな写真を探してきてやろうではないか~」
「良かった。アレな写真も送れますけど☆ とか返されたら通話を切っていた」
「……」
「二宮さん、もしや……?」
「げ、現役JKがそんな女子力ないこと言いませんし! それじゃ一旦切るね~」
通話が切れたことを確認した俺は、しばらく苦笑が止められなかった。
一般的な男女間での阿吽の呼吸とはかなり毛色が違うはずだが、こういう珍しい形での阿吽の呼吸も存在するとは。これが世に言う「男女の友情」なのだろうか。
そんな考え事をしていると、二宮さんから一枚の写真が送られてきた。
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