第129話 待ち焦がれた当たり前の日常 (辰也視点)

 俺は死んでいなかった。


 その事を聞いた時は驚きすぎて、どうにかなるかと思った。


 また、都合の良い夢を見ているのかと思った。


 だけど、それは夢ではなく現実で俺は辰也の姿に無事戻る事ができ、雪との生活が再開した。




 雪の小さな部屋に入る時は本当に緊張した。


 雪と辰也として向かい合っただけでも無茶苦茶、緊張した。


 初対面(雪の姿との)の時に戻った様な錯覚がおきそうなほどだった。


 俺が長い間居なかった事でのつじつま合わせは雪が色々と動いてくれていた。




 俺の職場には上手いこと雪(クウロ)が記憶操作をしてくれていたらしく、しかも税金なども全て雪が肩代わりしてくれていた。


 


 俺がノンビリ猫生活をしている間に随分苦労をかけてしまった。



 そして、プディや雪(クウロ)の星の方も、今は感情を殺す法律も無くなり、王様とルックが仲良く星を治めているらしい。


 そして調査員は無くなったけど、研修員として、少しずつ星から地球に勉強に来ているらしい。


 パワーで何もかもやる制度自体を見直し、地球の知識を取り入れる事にしたのだそうだ。



 そのうちの一匹。俺そっくりの白猫も、そっと幸太郎の部屋のケージに連れていくとプディが言っていた。




 ルックに振られたプディはデンの側が落ち着くからと、まだ比奈ちゃんの家に戻ったらしい。


 裏表のないデンの側なら安心できるんだそうだ。



 そして俺は今、幸太郎の家に雪と一緒に人間の辰也の姿で訪問しようとしている。



「雪、折角、弟に会えたのに、家族が見つかったのに良かったのか?」


 俺の言葉にちょびっと雪が頬をふくらませた。


「辰君は私がいなくなっても良かったの?」


「そんな訳ないだろう? そういや雪、すごいパワーだったよな。どうやって集めたんだ?」


「内緒!」



 そう言いながら雪のカバンにはVチューバkuroonちゃんの特性キーホルダーが揺れていた。



 kuroonちゃん......。


 クウロ。


 まさか、雪がクウロンちゃん? 

 なんて、まさかだよな?


 そうな風に考えていたらあっという間に幸太郎の家についた。


 人間の姿になってこの階段を上る日が来るなんてな......。




 そして幸太郎の家のドアの前、俺は緊張しながら幸太郎の家のインターフォンを押した。


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