第96話 父と闘う前に......。(プディ視点)

 

 あれから比奈ちゃんは時おり、あの朝峰 雪という女性と電話している様だった。


 学校でどんな風に過ごしているかは分からないが、周りからの励ましもあってか、いつも通りの笑顔の可愛い、元気印そのものの比奈ちゃんに戻ってきていた。



 今は比奈ちゃんは学校だ。


 私が自由に動ける時間はそんなに長くはない。


 私は比奈ちゃんの部屋にある小さめなソファーで身体を伸ばしていた。


 部屋は丁度良い温度で日の光も入りポカポカと気持ちが良い。


 頭にやんわりと風が吹いている。


 この風はあの機械から吹いている様ね。


 エアコンと言ったかしら......。



 この星は本当に不思議な所だわ。


 この星の種族、人間と言ったかしら......。


 パワーは使えないのよね?



 どう言った仕組みでああいう風をおこしたりしているのかしら?


 部屋を明るくするにも飲み物を運ぶにもパワーを使っていた。


 ココではボタンを押すだけで明かりは点くし、水も簡単に出す事が出来るのよね......。




 まあ私は私の星ではココに来る前まで、ほとんど王宮の自分の部屋に閉じ込められている事が多かったから、あまり詳しい仕組みは知らないのだけれど......。


 私は窓の向こうの葉が少し揺れているのが見えた。


 日は照っているのに、ちょっと風は強そうね。

 ここの気温があまりに心地良いから錯覚しそうだわ。




 だけど以前はこのくらいの気温なら網戸にして私が外に出て行けない様に簡単に工夫しているだけだったのだけど、現在はどの部屋の窓もしっかりと鍵がかかっているわ。


 


 普通の猫ならば抜け出す事は難しそうね。(まあ私は猫ではないのだけれど......)



 比奈ちゃんまで、幸太郎さんの影響を受けてしまっているのかしら?



 幸太郎さんもよっぽどホロが心配だったのね。


 まあ私も、心配で夜中に見に来ていた幸太郎さんをよく見ていたから、幸太郎さんがあれぐらい心配する事は分かっていたのよね......。



 まあ、幸太郎さん。比奈ちゃんの友達からの評判は確実に下がったわね。


 比奈ちゃん次の日、目をはらしたまま学校に行っていたもの。



 と、そんな事考えている場合じゃないわ。



 私はソファーから飛び降りて、跳ねる様な足取りで、比奈ちゃんの机に飛び乗った。


 そうして、右の前足でディスクトップパソコンのキーボードの電源ボタンを押した。



 この機械を比奈ちゃんが初めて扱って見せてくれた時もビックリしたわ。



 ずっと側で見ていて、パワーもなしにそんな不思議な事が出来るなんて、初めはすごく感心したのよね......。



 今はちゃんと使い方も分かるし、この画面の中の音と私の声の音を合わせたらパワーとの相性がすごく良いのよね。


 簡単に仲間にメッセージを届ける事が出来るのよね......。


 それにしてもこのモフモフな足じゃキーボードが打ちにくいわね......。



 私は少しだけ力を解放した。


 小さな光と共に私の右前足の人差し指の爪が2cm ほど伸びた。



 本当は前足全部の爪も伸ばした方が作業しやすいのだけど、パワーをあまり使わない方が良いしね。



 カッチャ、カッチャと部屋の中でキーボードの音が鳴り響く。



 今はこの家は私しかいない。



 だからこんな事をしても大丈夫。


 声を適当な歌に乗せて、画面を通じて私と一緒に降りてきた仲間に向けて電波を送る。




 そういえば、幸太郎さんもホロも気に入っていて良くスマホという機械で聞いていたあの歌......。



 私達が通信に使っているパワーと少しだけ同じ力を感じたのよね......。



 そう、あの歌。朝峰 雪 彼女から出ているパワーに今、考えると、すごく似ていた様に思う。



 父と闘う前に......。


 あの女が敵かどうか、確かめる必要があるかしら。



 そんな事を思いながら、仲間に通信が繋がるのを待った。

 

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