第83話 こんな大人の女性がライバルなんて、私、勝ち目ない!?(比奈視点)
幸太君を誑かす魔性の女、どんな奴なの。
私はホロちゃんの事を心配している振りをしながらも幸太君のリビングのドアを勢いよく開いた。
目に飛び込んできた光景を見て、私はショック過ぎて言葉を失った。
目の前には、身体は細身だが、顔だけ肉付きが良いと言うか、頬骨が高く、ぽやーとした空気が似合いそうな優しそうな顔の女性が居た。
女性の隣にはもう、随分前からココにいて、懐きまくっていると言わんばかりに黒いゴールデンレトリバーのデンちゃんがその
しかも女性の腕の中にはホロちゃんが居て、またホロちゃんも幸せそうに抱かれて目を細めている(実際は女性に抱かれてウットリはしているけど、デンちゃんに鬱陶しいほどに尻の匂いを嗅がれている事の方が気にしていたのかもしれない、だけど私にはその部分は全然見えてなかった)。
今まで、私は少しづつ、少しづつ、ホロちゃんとデンちゃんとの距離をつめてきたのに。
た、確かに、そうして距離をつめた後に、わたしが幸太君にとって特別な存在だと思って貰えたら良いな、なんて下心があったりもしたけど......。
この
私の築いてきた居場所を!
私はかなり頭に血が上っていたのだと思う。
ちょっとでも落ち着こうと大きく深呼吸をしたが気持ちは中々治らない。
なんとか笑顔を貼りつけて色白のその女性に声をかけた。
落ち着こう私。
この方は幸太君の大事なホロちゃんを、外に出てしまっていたホロちゃんを助けてくれた。
保護してくれたんだよ。まずはお礼を言わないとね。
「始めまして、幸太君のお知り合いの方ですか? ホロちゃんを保護してくれたそうで、ありがとうございます」
私は頑張って笑顔で優しく語りかけ様とするけど、
無理ーーーーーー!
顔が引きつる。
口元がピクピクと動いちゃう。
なんか語尾もキツい言い方になっちゃったよ。
喧嘩したい訳じゃないのに!
落ち着こうと思っていても、ホロちゃんを優しく抱く女性、そして安心して抱かれているホロちゃんを見ていると、また胸の奥からフツフツとマグマの様な熱い感情が浮かんできた。
自分の気持ちを抑え様と頑張っても口が勝手に動いていた。
「ホロちゃん、慣れて無い人が触ると、引っ掻いたりするから抱っこしたら危ないですよ?」
わ、私の馬鹿ーーーーーー!
ホロちゃんはヤンチャだけど、そんな事しないって知ってるのに!
今、あのさっきまで優しそうな表情を浮かべていたお姉さん、顔、完璧にひきつったよ。
ひきつった顔のまま、そのお姉さんが私に向かって反論してきた。
「そうなんですか? ホロちゃんはとっても元気な子なんですね。だけど、私の胸の中ではとっても大人しいですよ?」
反論と言っても声のトーンも優しく感情的じゃない。
そう言いながらお姉さんはホロちゃんを絶対に離さないと言わんばかりに力を入れているみたいで、少しだけ表情を歪めていて辛そうに見えた。
正直、そんなに言い返してくる様な
「おい、比奈ちゃん、どうしたの? ほらホロちゃん、大丈夫だったろ?」
そう言いながら、のんびりした口調で幸太君が入ってきて、まだソファーの上にいたプディの隣に座った。
先程までの緊迫した空気が、幸太君が来た事で、冷戦状態に突入した。
私、この憤り、どうやって抑えたらいいの!
ヤキモチって言ったって、私、こんな気持ち初めてだよ。
こんな態度って事はこの
どうしよう。
こんな大人の女性がライバルなんて、私、勝ち目ない。
胸もあの
うえーん。
やだー!
幸太君は私のだもん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます