第78話 エロ親父デンから雪を守れ(ホロ視点)


 雪、雪が本当にココにいるんだよな。


 本当に夢のじゃないか確かめる為に俺は自分の頬を引っ掻いた。


 爪が短いから、ほとんど痛くなかったが......。


 だか、やはり夢じゃない。


 しかも俺がいつも、ゴロゴロしたり、日向ぼっこしたり、デンと追いかけっこしているこの部屋に、ちょこんと雪が座っている。



 そう言えばデン。

 確かプディから眠らされていたよな?

 だ、大丈夫だったかな?

 

 俺は少し心配になり、ソファーに寝転がっているデンとその横にいるプディを見た。


 プディは相変わらずだが、少し雪を気にする様に雪の顔をじっと見ている。


 デンは、ゆっくりと薄目を開け、何事も無かったかの様に大欠伸をした後、俺を見て目を見開いた。  

 

 そして尻尾をブンブン振りながら俺に突進してきた。


「ワンワンワオーン♪(散歩、散歩、散歩ー、散歩に、行くんだったよねー♪)」


 うわー、デンが飛びついて来た!

 と思ったら目の前に雪の背中があった。


 雪に俺は庇われたんだろうか?



 た、確かに雪はデンが天然で温厚だと知らない。


 俺みたいな子猫に大きな犬が飛びついてきたらビックリするよな?




 そう思ったりもしたのだが雪はデンの頬をワシャワシャと撫でている。


 庇われたと思ったが、犬に、デンに触りたかっただけか......。


 デンはあの、プディに眠らされたまま、記憶が止まっていたから俺に飛びついてきたんだな。


 人見知りを全然しないデンは番犬には全く向かない。


 雪に撫でられ、ご機嫌になり、散歩のことも忘れた様だ。


「おっ、デン、ご機嫌だな、あっ、はい。ゆ、朝峰さん、お茶です。どうぞ」


 幸太郎がお茶をテーブルの上に置いた。

 ニコニコ笑いながら雪がお礼を言っている。


 今、幸太郎、雪の事、名前で言おうとしたよな?

 おい、幸太郎、お前には比奈ちゃんがいるだろう?



 あっ、だけど比奈ちゃんはまだ高校生だな。

 

 そう言えば、俺、雪一筋だけど、やっぱり猫と人じゃ恋愛は成立しないよな......。



 くそう、こうなったら普通に猫らしく雪にスリスリして、色々な所を舐めてやる。


 なんて悪巧みをしていると、すでにデンが雪の胸あたりをクンクンと匂いを嗅いでいた。



 おい、デン、な、何をしているんだ!

 俺は思わずデンの頭に飛び乗った。


「ワン、ワン? ワオーン?(ホロちゃん、何? ビックリした。遊ぶ? 僕はもうちょっと、このお姉さんと遊ぶから、後でね)」



 デン、今日は偉い長々と喋るな。

 って、言っている内容やしている行動はエロオヤジじゃねーか、雪は俺が守ってみせる!



 俺はデンの頭に捕まり、体重をかけて、デンの鼻先を胸から別の場所へと、動かそうと試みる。



 そんな事をしていると、目の前にあった雪の顔と目があった。


 真正面からこんなに近くで、久しぶりにじっくりと雪の顔を見た。



 まあ、そりゃあ夢の中では何回も見たけどな。


 何か、雪、ちょっと痩せたか?



 もっと頬がぷっくりしてた筈なのに......。



 俺がいっぱい、泣かせてしまったのかな......。



 そんな風にシンミリしていたら5回ぐらい続けてインターフォンが鳴り響き、俺はデンの身体の上でビクッと飛び上がった。



「先生! 幸太先生、開けて! ホロちゃん、大丈夫なの?」




 聞こえてきたのは、少し慌てた高い声。

 比奈だ。


 さすが比奈!

 ベストなタイミング! これで、幸太郎と雪の二人きりは回避できる。



 まあ二人きりと言っても、俺達3匹はずっと居たけどな。


 

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