第62話 過去、あの日あった出来事③ (雪視点)

 辰君の、傷は塞がってきているけど、辰君の体力が持つか分からない。



 なんだか、目の焦点は合っていない様に思う。


 光が近づくにつれて、突風が吹き、冷たい風が顔に当たった。


 その風に煽られ、私の長い髪が、揺れる。



 こんな事なら、職場を離れるとき、結んでいた髪の毛を解くんじゃなかった。


 髪が目の前の視界を遮る。



 力を使うにはかなりの集中力が必要だというのに、中々、集中出来ない。



 このままじゃ辰君が......。


 傷口は塞がってきているけど顔色の悪さから不安がつのる。


 目の前の光が前が見えないほど大きく光った。



 ま、眩しい。

 眩しくて、目を閉じてしまいそうになる。




 集中しなきゃいけないのに、た、辰君!






 私はあの光が、私の星のモノであると分かっていた。


 だから、逃げる必要がある事も分かっていた。




 絶対絶命。


 



 切羽詰まった状況。



 


 だけど、それは辰君の命を繋ぐ事を諦める事と等しかった。






 どうして、あの光が私の星から来たか分かるのかって?



 私もそうやってココにやって来たからだ。



 私の星からこの星に渡ってくるのは、異次元を超える事に近いのかも知れない。



 私の星と辰君がいるこの地球とは距離が違いすぎる。



 宇宙船を使って?




 ものすごく昔、私が生まれるずっと前は、そうやってこの地を訪れていた方もいたと思う。




 だけど、今は、現在は、そんな事を、そんな方法で、星を渡り合う、そんな危険を冒す方はなかなかいない。 


 色々な星があって、色々な種族がいるから、一概には言えないのだけど......。


 何故なら、その方法だと、地球人、その訪れた場所、場所の方達に見つかるリスクも高まるからだ。



 私達がこの星に来る為の来かたなんて、今更どうでも良い事だ。



 

 私は違う意味で焦っていた。



 辰君の治療は上手くいけば、もう少ししたら完了する。



 だけど、もし、この状況が私の星のモノに知れたら、私は星に連れ戻され、辰君も実験材料として連れて行かれる可能性がある。



 ど、どうすれば良い?




 光の中から見える、この星でいう猫の様な形のシルエットが目の前まで迫っていた。



 光に包まれた猫の形の奥に見える歪んだ空間。



 そう、星を渡る事をスムーズにする為、中間地点を港的役割の場所を私達の星は異次元空間の中に設けていた。



 そうする事によってスムーズに星の行き来をする事が可能となる。



 しかし、異次元空間の移動はかなりのパワーを必要とする為、力不足の場合、宇宙空間や異次元に投げ出されてしまう恐れもある。



 だから星を渡るという事は安易に出来る事ではないのだ。



 辰君の治療で随分力を使い果たしてしまった。



 瞬間移動や、異次元空間の中に逃げ込む様な力は今の私には残されていなかった。


 そしてとうとう、私の星のモノが目の前に現れた。



 かなり細いつり目に、太い濃い色の眉毛、かなり個性的な顔。


 

 パッと見は猫だが、猫?



 嫌、狐?


 と言いたくなる様な顔だ。


 私はすんなり地球に潜り込める見かけで良かったと思ったがそれと同時に思わず声が出た。



『なんで? どうして隊長がココにいるの?』



 細つり目の濃い眉猫が、私の声に、耳をピクピクと動かし、眉間に皺を寄せた。




『その言葉使い、そのオーラ。お前は、もしかして、ホロロか? どうして、何故、そんな姿をしておるんだ』




 そう、ホロロ、それが私の本名だった。



 私が人間に、この姿になった時、捨てた名前、それがホロロだった。

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