第55話 デン? コレは俺のご飯だぞ?(ホロ視点)

 幸太郎が、キッチンの方に歩き出した。


 ケージは開けたままにしてくれていたが、目の前のデンが邪魔で外に出る事が難しかった。



 デン。




 まだ眠たいのか?


 さっきまで俺の尻の臭いを嗅いでいたのにな。



 目が少し半開きだぞ?



 先程までのピリピリした夢が、空間が嘘の様にココは長閑だ。



「ニャ、ニャン(デン、眠そうな所、悪いんだがソコを退いてくれないか?)」



 俺の声に反応し、ハアハアと荒い息遣いになったデンは、俺の頬をベロンと舐めた。


 そして俺の頬の匂いを嗅いでいる。




 おい、デン。



 聞いているのか?



 俺はブルッと身体を震わせ困った様に眉間に皺をよせた。



 まあ、猫だから僅かにしか皺は寄ってないとは思うがな。


 デンの息遣い、耳元で聞くとかなり煩いが、日常すぎて、気にならなくなってきたな。



 俺達の様子を見てクスリとプディが笑う。



 猫だから実際にはクスリという音はしないがイメージ的にはそんな感じだ。



 デンは飽きずに俺の頬の匂いを嗅いでいる。



 そんなに嗅いでもデンのヨダレの臭いがするだけだぞ?


 毛がデンのヨダレでまたパリパリになってしまう。


 俺は前足を使いながら顔を洗う。


 そのまま、身体のあらゆる箇所を舐めて身体のメンテナンスをした所で我に返った。




 こんな場合ではない。



 今は、朝の8時頃か?


 幸太郎は服を外出着に着替えているし、朝ご飯も食べたみたいだ。



 俺達のご飯も用意してくれている。



 デンは先程まで俺に夢中だったが今はご飯に夢中だ。

 デンの顔の前に幸太郎がご飯の容器を置いた途端ガツガツと食べ出した。


 今のデンの頭の中は、ご飯の事、一色だろうな。



 俺もこれから先、どの様にして、ミー達を救うのか、プディに相談しようと思っていたが、ご飯を見てしまうと、やはりその事しか、考えられない。



 ちょびっと丸くなってきてしまっている自分の身体も気になるが、ご飯が美味いんだから仕方がないよな。


 プディもいつのまにか食べ始めている。



「ホロ? ホロちゃんも食べな」



 俺の前にもキャットフードが入った容器を置いてそう言った幸太郎は、そっと俺の頭を撫でた後、再び、忙しく動いている。



 俺は食事しながら横目でその様子を見ていた。



 幸太郎、どこかに出かけるつもりか?




 もしかして、どうにかして、ココを抜け出せたら、ミー達を助ける、チャンスがあるかもしれない。



 と言っても俺の力だけではどうにもならない。



 プディに相談しよう。




 まずはしっかり腹ごしらえだ。



 また視線を感じる。


 俺は食事しながら、目だけ視線の方に動かすと、あっという間に食べ終わったデンがいた。

 


 ヨダレを垂らしながら俺の食べる様子をすごく近くで見ている。




 デン、今、いっぱい食べただろう?



 これは俺のメシだからな?


 オイ、顔を近づけすぎだ。

 ヨダレが入るだろう?

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