第53話 眠っちゃダメだ。(ホロ視点)

 俺はミーがキーキャットだと気がついたが、お嫁さんの夢の中のミーはミー自身ではない。

 このままいても先に進めない。

 そう思い、お嫁さんの夢から一度出た。


 あの、暗がりに画面が二つ。


 前に進めてない気がして、だけど救いたい気持ちは変わってなくて、俺はもどかしくてどうにかなりそうだった。


 あー、頭がハゲそうだ。

 猫のハゲなんて笑えない。


 俺は両前足で頭を抱えた。

 

 一瞬二本足で立っていたが、やはり猫だ。すぐ前足を前についてしまった。


 


 目の前の猫目画面、なんだか不気味に見えてきた。

 リアルさや毛量は変わっていない。

 そりゃそうだよな。


 先に進んでないもんな。



 二つの画面に目線を移すと、右の画面も動き始めていた。


 おばあさんも眠ったんだな。


 どうしよう、もう一度、おばあさんの夢に入っても良いが、おばあさんの夢の中のミーも、実際のミーではない。





 俺はおばあさんの夢に今、入っても状況が変わらない気がした。


 また何も出来ずに立ち尽くす姿が容易に想像出来た。







『お義母さん、私はどうすれば良かったの』





『ミー、私のミーちゃん。何処に行ってしまったんじゃ、ミーちゃん。ま、麻沙子さんのせいじゃ!』





 頭の中に二人の声が交互に響く。



 左の画面のお嫁さんは苦悩の表情を浮かべ、右の画面のおばあさんは興奮がマックスになり頭に青筋が見える程だ。


 ガンガンに二人の声が俺の頭の中に響く。



 どうすれば良いんだ。





 その時、俺の頭の中に、思いっきり飛び跳ね、顎は多少ズレてはいるが、笑った様に目を細め元気に鳴く、ミーの姿が浮かんだ。



 そうだ。


 やっぱりミーだ。



 ミーなんだよ。


 二人に必要なのは、元気に飛び跳ねるミーなんだよ!



 俺はミーと何とか接触出来ないかと考えた。



 この画面、ミーの夢もあったら良かったのに。


 俺は左のお嫁さんの後悔の夢と、おばあさんの思い出したくなくて、記憶が詰まってしまった夢を目の前にして、茫然と途方にくれるしかなかった。



 どうしよう。


 俺なんかの力じゃ、どうにもならないのか?



 ミー、ミーにはどうやったら会えるんだ。




 俺は自分の力のなさに情けなくなり精神的に疲労しすぎて、だんだん目が閉じてきてしまった。



 まだまだ俺は何も出来てない。


 前に進めてないんだ。



 次、またこの夢にこれるか分からないんだ。



 寝ちゃダメだ。


 寝たら、今日のチャンスが潰れてしまう。



 そう思っても、俺の身体は言う事を聞いてくれず、身体の力は抜いて、目の前が暗くなってしまった。

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