第45話 なんだかとっても複雑だ (ホロ視点)
「ん? 携帯、携帯っと。ここにあった」
そう言いながら幸太郎がやってきた。
俺は覗き見していたことを見られたと思い、身体がびくついた。
何でもないふりをよそおい欠伸をして顔を洗う。
まあ、携帯を一瞬見たと言っても、猫だから幸太郎もまさか見たとは思わないだろうが。
悪い事をしていると、身体が勝手に反応したのだ。
「ん? ホロちゃん、こんなとこに居たのか? 最近ちょっと丸くなってきたか? おやつ控えなきゃな? ご飯の量もちょっと多いのかな?」
そう言いながら幸太郎は俺を胸に抱えて反対の手で撫でる。
「まあ、前とそんなに変わらないか……、比奈ちゃんに相談するか」
ぼそっと、そう呟いた幸太郎はちょっとだけ表情を変え、少し頬が赤くなった。
「……ニャにゃ(やっぱり、お前、比奈の事……)」
俺が鳴いたからか我に返ったように顔を緩ませ俺を撫でるのをやめて俺を抱えたまま携帯を手に取った。
幸太郎は携帯を手に取った瞬間、びっくりしたように表情を丸くした。
と言うか携帯を二度見していた。
おっ、良いぞ、この角度。
自然と携帯の内容が見える。
……。
なんか雪の浮気現場を目撃している様な気分だな……。
幸太郎はメールの内容に驚いたのと、俺がメールが見やすい位置に幸太郎の胸の中で少しもがいたのとで俺が落ちそうと思ったのか、メールが見やすい良い位置に抱えなおしてくれた。
いや、幸太郎は普通に俺が落ちない様に持ち直しただけで、別に雪からのメールを見せてくれようとした訳では、ないだろうがな……。
メールの内容。
雪さん: 突然メールをしてすいません。
覚えていますか? 雪です。
先日はお世話になりました。
ちょっと、ご相談があるのですが、
実は私、この前、会った猫ちゃんの事
が忘れられなくて……。
今度、猫ちゃんに会いに
自宅に伺っても良いですか?
私の同僚も動物好きで、
二人で伺いたいのですが……。
そしてもう一つ。
非常に厚かましいとは
思うのですが……。
ご飯を作りたいのです。
唐突のお願いすみません。
お返事お待ちしております。
そのメールを見て幸太郎も固まっていたが俺も固まっていた。
俺、メイン?!
雪は確かに動物好きで、確かに猫も好きだったが……。
突然、男性にメールを送り、押しかけたいというほどの猫好きだったか?
本当は、俺じゃなくて目的は幸太郎?!
まさか俺、ダシに使われている?
しかもご飯を作ってやるとかさ!!
おい、雪、本当の所はどうなんだ?
会いたい。ソワソワ。
会える。ソワソワ。
嬉しさと、ヤキモチからの落ち着かない気持ちに俺の身体は揺れる。
そのこと自体は嬉しいのに……。
なんだかとっても複雑だ。
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