第32話 うん。保護だ。(ホロ視点)

 現在、リビングで、ソファーには誰も座っておらず、床のクッションの上に比奈、その両隣を片方がデン、反対をプディが陣取っている。


 テーブルを挟んで比奈の正面には幸太郎が、皆とは少し離れたところにある別のクッションの上に俺が座っていた。


 プディはクールに何もなかったかのように澄ましてはいるが、まだ心配している様子がなんとなくだが読み取れる。


 俺もこの時間になると眠くなってくるのだが、流石に目がさえていた。



 幸太郎はちょっと表情が読めないけど、少し固まっているように見える。


 比奈も顔が赤い。

 風呂上がりだしな、デンが突進してびっくりしただろうな。


 あんだけ尻尾振ってたからな、俺はああなる事は予想が出来ていたのだが。


 まあ、この小さい手では(いや前足か? まあどちらでもいい)止めようがないがな。




「で、だ……。何があった」


 少し照れているのか分からないが幸太郎の声は少しいつもより、固い気がする。

 まあ、女の子に慣れてなさそうだしな。

 比奈、高志の妹なだけあって騒がしいが、顔は整っているものな。




「えーと、ちょっと手違いがありまして……」


 比奈も緊張しているのか声がいつもより小さく硬い気がする。

 幸太郎がいつもよりさらに表情が無いから恐いのか?



 比奈の緊張を少しでもほぐそうと俺は顔を手でこすり洗ってみる。


 ……。

 俺がリラックスしてどうする。




「手違い?……家の前に長くいたのか?帰らなかった訳じゃないよな?」


 幸太郎の返しに慌てたように

「も、もちろん、帰るには帰ったんだけどね……」



 幸太郎、もうちょっと優しく言わないと可哀そうだぞ?

 でもまあ、こんなに夜、遅いしな。

 何かあったら大変だものな。

 心配の裏返しなのかな?

 

「……」

「……」


 比奈が何か言おうとしているが言い出せないのか眉が段々困っているようにハの字になって来ている。


 俺は緊張をほぐす為にもう一度、……やめておこう。



 幸太郎は軽く自分の髪を掻きながら小さくため息をつく。


「まさか鍵でも失くしたのか?」


 比奈の身体が分かりやすく跳ねる。


「ま、まさか、私、高校生だよ?そ、そそそんな訳ないよ」


「失くしたんだな」


 幸太郎の言葉に恥ずかしそうにさらに赤くなる比奈。

 

 比奈、そんだけ分かりやすかったら、俺でもそうだと言っていると分かるぞ。



 なんか安心したら眠くなって来たな。

 俺は軽く伸びをした後、身体を丸め、寝る態勢を取りながらも耳をすました。


 プディも安心したのか比奈の膝に身体を埋めて、ポヤポヤと目を薄く開き、欠伸をしている。



「インターフォン、何故押さなかった。いつもはすぐ押すだろう?」


「……」



 比奈が黙った事で、幸太郎も自分が追い出したことを思い出し、罪悪感と、もどかしさとで自分の頭をかかえる。



 幸太郎は大きく息を吐いた後、比奈を見る。


「まあ、何もなくて良かったよ。今日はもう遅いし、泊っていけ。どうせ親にも言えてないんだろう? 俺から電話しとくから」



 幸太郎は安心したのか声も表情も柔らかくなった。


 比奈も同様に。







 比奈、作戦、ある意味成功したのか?

 良かったな。


 いまだに幸太郎の考えていることは分からないがライバルは居ない方が良い。


 比奈、俺は応援するぞ?




 だけど、やはり女子高生を泊めるんだな。

 大丈夫か?


 ……。



 いやまあ、これは、うん。保護だ。

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