第18話 突然の頼み事 (ホロ視点)



 不思議な空間の中にプディと二人取り残された、そんな感覚に落ちいった俺は、警戒しながらプディに視線を向けた。


 プディは表情を緩め、身体を丸め、前足を胸の下に置いた後、少し目を瞑ったと思ったら、なんと言っているか分からないがブツブツと喋っている様だった。




 警戒を崩さず俺はいつ飛びつかれても良いように前足に力を入れた。





 こいつは一体何者だ?

 幸太郎やデンはどうなったんだ?



 プディはゆっくりと目を開け、前足を俺の目の前に出した。



 先程までごく普通の本数だったプディの前足がポテッと毛が密集して肉厚になっており両前足とも、指が一本づつ増えていた。



『何を警戒しているの? あなたも同族でしょ?』


 そう話し、微笑むプディに俺は言っている意味が全然分からなかった。


『どういうことだよ? 一体何をしたんだよ? 幸太郎達に何をしたんだ?』


 いつものんびりしている俺も現在の俺の家族に手を出されたとなったら黙ってはいられない。

 

 女性だからって手加減することはできない。



『何を慌てているの? 空間をちょっと止めただけよ。あの人達には無害よ。何? 同族よね? 私のセンサーが狂う筈はない。その布からだって同じ匂いがするもの。普通の猫と同族の違いを間違うはずないわ』



 途端に慌てだしたプディはブツブツと何かつぶやいている様だった。


『まあ、バレてしまったならしょうがないわ、そのかわり手伝ってもらうわよ』


 開き直ったように再び妖艶に笑みを浮かべるプディ。


 俺は急に始まった非日常を上手く受け入れられず後ずさりしていた。

 声を上ずらせながら俺は言う。



『俺は人や動物、植物とにかくあらゆるものを傷つけることには絶対、手を貸さない』


 その言葉を聞き、呆れたようにプディはため息を吐く。


『当たり前でしょ? 誰もそんなことは言ってないわ。とにかく今は人手が欲しいの。やっと同族を見つけたのに、違うなんて……。だけど私のセンサーが狂う訳ないから手伝ってもらう事、できるかもしれない』


 プディは俺の額に手を置いた。

 俺は自分の心臓の音が心臓をぶち破るかのように大きく鳴り響き、情けないが目を瞑ってしまった。


 俺の額が熱くなり前足の小指の横が少し熱くなった気がした。



『大丈夫、反応があるわ。やっぱり同族でしょ? 記憶喪失かしら? だけどこれでパワーを貯めることが出来るわ』



 いったい何を言っているんだ? パワーを貯めるって俺に一体何をさせるつもりだ?


『パワーって何をさせるきだ?』


 恐る恐る聞く俺に優しい笑みを作るプディ。

 俺は騙されないぞと心に決意しながら尋ねた。


『人助けよ、まあ人だけとは限らないんだけどね、ありとあらゆるモノの心を救う事でパワーを貯める事ができるの』



 なんか胡散臭いが……。まだ俺は信じないぞ。


『パワーを貯めてどうするんだ?』


『今は言えないわ。とにかく悪い事をさせる訳じゃないから、最終的にはこの星の人やモノ全てを助ける事に繋がるの』


 プディの悲痛な叫び声に俺は嘘をついていると思えなくなってきた。




 俺は雪ともう一度一緒に居たいだけなのに、なんか分からないうちに大事になってきたぞ。








 雪、お前との平凡な日々が恋しいです。

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