第12話 幸太郎が居ない間に(ホロ視点)

<ホロ《辰也》視点>



 雪と再会して既に三日が経過していた。

 あの日の事は、いっぱいいっぱいだった俺。

 実はあまり覚えていなかった。


 だけど、また、雪に逢える。

 それだけで俺は救われた気がした。




 



 シリアスな始まりだが俺は現在、陽が一番当たるリビングのソファーで自分の身体を舐めながら毛づくろいをしていた。


 ホレっ、見ろ。

 この綺麗な白い毛をっ。

 しっかり舐めたからデンや幸太郎の匂いも無くなった。

 猫になって変わった事はかなりの綺麗好きになった所だろうか?


 


 それにしても、ぽかぽかと暖かい。


 お風呂に入っているかのような心地よさだ。


 いつものように半開きに目を細めながら大きな欠伸をした俺は、窓の外の、建物の隙間から見える青い空と、キラキラした光を浴びながら、ソファーに身体を預け、力いっぱい伸びをしていた。


 野良猫の時の記憶は、何故だがあまりないが、ココが心地よい事だけは分かる。





 ……雪に逢いたい。

 そう思う反面、この暮らしも満足している俺もいた。


 ああ、……猫な俺は、なんだか寝てばかりな気がする。


 適度な運動はもちろんしてるぞ?

 もし、野生に戻った時、何も食べ物が取れないんじゃ俺は生きていけないからな!


 幸太郎やデンの相手もしてやらないといけないしなっ!


 


 その幸太郎だが、ここの所、決まった時間にどこかに出かけていく。

 出かける前に俺はケージの中に入れられるのだが、俺は辰也だった時の記憶がある。

 だから、このケージから出ることは簡単な事。

 そう思っていたのだが......。




<1時間前>



「シャーっ(デン!おい、デン!)」


 俺はソファーの傍で、うたた寝をしているデンを呼んだ。

 デンは俺の声に反応し、突進してくる勢いで俺のケージの前まで来た。


「ワン、ワン、ワオーン(どうしたの?ホロちゃん、なんでそんな所に入ってるの?こっちに来て一緒に遊ぼうよ)」


 デンは俺のケージに鼻だけを入れ、尻尾を思い切り振りながら、何とか俺に近寄ろうとしている。


「ニ―ニャ、ニャッ(そっちに行きたいんだけど、デン、そこの所のその鍵って言っても分かんねーよな?それ、それだよそれ?)」


 俺はこのケージの開け方はもちろん分かっていたが、何せこのモフモフの短い指では開ける事は到底無理に等しい。

 何とかデンに口で咥えて開けてもらえないかと試行錯誤して伝えるが、なんせ相手は短絡思考で暢気なデンだ。




 伝わらない……。

 

 あまり、大きな声で言うと、苦情が来る可能性もある。

 俺は身振り手振りで頑張った。


 諦めそうになった俺だが何とかわかりやすい言葉を考え、ちょっと小声で、何度も何度もチャレンジした。



 小一時間ほど、あれこれデンと言い合い、時間だけが過ぎさっていきそうだったが何とかデンに伝わり、上手く鍵を開けてもらう事に成功した。





 





 そして現在、いつものお気に入りのソファーの上に居るのだ。


 本当は、どうにかして外に出られないか?とか……。

 雪に関する手がかりを探すつもりだったが……。


 ケージから脱出するだけで疲れてしまった。



 今はこうして日向ぼっこを楽しんでいるが、幸太郎が戻ってくる前にケージに戻らなければ……。



 そしてまたデンに鍵をかけて貰わなければ……。


 幸太郎が居る時は家の中を自由に行き来することが出来るが、幸太郎が出かける時はケージに入れられるだろう。


 もしも、俺がケージから出ていることがバレると、厳重な、デンでは開けられない鍵を幸太郎につけられてしまう。






 デン……鍵、かけれるかな?







 考えただけで疲れてきた。


 俺は大きく溜息をついた。


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