第59話 VS邪神軍⑥/ドラゴンキラー(前編)
――時間は光がクラーケンと戦い始めた頃まで遡る――
シードラゴンから高圧ブレスが放たれる。俺はそれを避け、奴の胴体を切りつけた。
――ガキッ――
しかし、シードラゴンの固い鱗に阻まれて、跳ね返された。
切りつけた鱗を見ると、少しだけ跡があるだけで、切り傷が出来た様ではないみたいみたいだ。
「固いな――流石はドラゴン。何所の正解も固いな。今のところ俺の剣が全く通じてないな」
既に戦いが始まって5分と経ち、既に何十回と切りつけているが、一つも傷を負っていない。
このシードラゴン、西洋の竜ではなく、東洋の龍のように細長い体をしており、体長が恐らく30メートルぐらいあるためか、攻撃できる個所はいくらでもあるが、その固い鱗に全て阻まれている。
そうなると、龍退治の定番の場所を狙うしかない。
「定番と言えば、まず逆鱗だな。あと目玉と体内に攻撃――頭全体はどうかな?」
そう思考していると、シードラゴンは再びブレスの態勢に入った。
このブレスはタメが長く、避けるのは容易だが、威力が強すぎる。さながらダイヤモンドを切断するアクアジェットのようなブレスだ。
俺が戦う前に兵士達が複数人でシードラゴンに攻撃をしていたが、ブレス攻撃を避けきれず、多くの兵達が命を落とした攻撃だ。
しかも一度の範囲が広く長く、かなり後方までブレスが届き、巻き添えを食らった兵達も多い。
そのため、今周りには兵士がおらず、俺とシードラゴンの1対1の状態で戦っている。
シードラゴンは再びブレスを放った。しかも俺を目掛けてというよりも、俺の周りを削るようにブレスを放つ。
直撃しそうなブレスは避けるが、足場を悪くしているせいか、少し着地に失敗してしまい、滑ってしまった。
どうやら奴の狙いは地形をぼこぼこにすることと、足場を泥濘にして俺の機動力を減く事が目的らしい。
その証拠に、俺が足を取られると、すかさず尻尾で薙ぎ払ってきた。
避ける事は難しいので、盾を構えて尻尾の直撃に耐えようとした。
しかし、足元が滑りやすくなっているため、俺は踏ん張り切れず、少しだけ後ろに吹き飛ばされた。
「なかなか上手い戦い方をする奴だ――とりあえず、あいつの目から潰す」
俺はブレスが終わった瞬間に、奴の頭目掛けて跳躍した。
実は俺はダンジョン攻略後の100階層にて、いろいろな敵と戦い、様々なスキルを手に入れていた。
今回使うスキルはその内の1つ。誰もが考え、誰もが憧れる【空中闊歩】だ。
スキルレベルが低いため、まだ空中で4回しか飛べないが、シードラゴンの頭まで跳ぶには十分の距離だった。
「オラッ! これでも食らってろ!」
右手に敵から手に入れた鬼の闘気を纏わせ、シードラゴンの目を狙う。
しかし、シードラゴンは少しだけ頭を動かし、目ではなく頭に剣が当たった。
――手ごたえあり!――
俺は頭に剣が当たった瞬間、そう思った。
剣を振り抜き地面に着地し、奴の頭を見ると、少しだけ頭に傷を負わせることに成功した。
――ギシャァァァァ!――
頭を傷つけたせいか、明らかに怒っているシードラゴン。
奴は体を鞭のようにしならせ、その巨体を何度も地面に圧しつけるのであった。
30メートルの巨体がところかまわず体を打ち付けている。
俺はなとかその攻撃を避け、後方に戻ったが、奴は何時までも圧しつけるのを止めない。
「困った。せっかく攻撃が当たったのに、次の攻撃に繋げれない……」
俺はまだジタバタしているシードラゴンから離れ、奴の逆鱗を探している。
後退したせいで少し距離が開いたが、俺はダンジョンで手に入れたスキルの1つである【鷹の目】を使い、奴の鱗を見た。
「確か殆どの伝承では喉の下あたりにあると言われているけど……ないな」
どうやらこのドラゴンは普通の伝承通りの場所には逆鱗が無いらしい。
そのため、俺は更に隅々まで鱗を見た。
奴がジタバタを始めて3分後、ジタバタが収まった。
奴はゆっくりと頭を上げ、少しキョロキョロしたあと、俺を見据えた。
再びブレスのモーションに入った。
俺はもう少し近くで奴の鱗を見ようと近づく。
しかし――奴は今までよりも早いタイミングでブレスを放った。
「うわ! 危な! くそ、ブレスを放つタイミングが早くなっている!?」
それだけでは止まらす、奴は少しのブレスモーションの後、何発もブレス攻撃を放ってきた。
流石に当たるわけにはいかないので、なとか避けるが、そのせいで奴に近づく事難しくなった。
「やばいな。このままだと足場が更にぬかるんで、素早い動きが出来なかくなる――何?」
何故かブレスを放ちながら、シードラゴンが俺に迫ってきた。
俺としては接近しようと考えていたので、これはチャンスではあるが、何故だか嫌な予感がしてしまった。
奴は俺との距離を5メートルまで狭めた時に、急に身体中を振るわせだした。
――ギャシャァァァァ!――
奴の体全体を覆ている鱗。それが俺目掛けて何個も飛んできた。
「マジかよ!」
俺はある鱗は盾で払い、またある鱗は剣で受け流し、何とか直撃を避けようとした。
しかし――
「――ゴフッ!」
鱗のせいで上ばかり気にしていた俺は、横から来ていた尻尾に気が付かず、気が付けば薙ぎ払われていた。
勢いよく飛んで行く俺。そんな俺にシードラゴンはブレス攻撃を仕掛けてくる。
目では見えており、頭でも理解出て切るが、体は動かず、シードラゴンの高圧ブレスをモロに食らってしまった。
「グガァァァー!」
俺はそのまま高圧ブレスを食らったまま、奴から30メートルは離れた地面に叩きつけられ、約10秒以上高圧ブレスを受け続ける羽目になった。
「――かはぁ! ――くっそ……ハァハァ……ダンジョンで……【金剛】のスキルを手に入れておいて……本当に良かった……」
【金剛】スキルはパッシブスキルだ。レベルがまだ3と低いため、そんなに強くないが、この隙が無ければ恐らく高圧ブレスには耐えられなかっただろう。
何故なら、今も俺は立てずに横たわっており、次の攻撃を食らったら、確実に死ねる自信があるからだ。
俺は痛い体に鞭打って、回復魔法を唱えた。【聖女】である沙良さんには敵わないが、俺も一応回復魔法は使える。
そのため、約8秒ほどで痛みが和らぎ、何とか立てるまでに回復できた。
「最悪だろあれ――普通の水ブレスで機動力を殺し、上からは鱗、下からは尻尾、さらに追撃に高圧ブレスって……普通なら死んでたぞあれ」
シードラゴンは俺が死んでない事に気が付いたのか、再び接近してきた。
そして、再び鱗を俺に浴びせ、その場から動けない様にしている。
今回は前回の攻撃パターンを見ていたため、尻尾攻撃も躱す事が出来たが、その場から脱出できない事には変わりなく、膠着状態が続いた。
「ていうか、こんなに鱗を飛ばして、奴の体今切りたい放題じゃないのか?」
そんな疑問が生まれたので、何とか視線を奴の体に向けたが、鱗が飛ばされている場所は頭の下の背中の部分からのみの様であり、地面に接している部分等は鱗が生え変わっている様子はなかった。
逆に言うと、今背中は弱点であり、そこを攻撃すれば、逆転の兆しが見えてくると思った。
「後はどうやってこの雨を掻い潜り、背中に攻撃するかだな」
俺が作戦を考えていると、急に奴の攻撃が止んだ。そして――
――ギシャァァァァ!――
シードラゴンの痛ましい叫びが響いた。一体何が……
「大丈夫?手貸す?」
俺が声の場所に振り返ると、そこには青い液体を全体に浴びていた小音子ちゃんが立っていた。
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