第3章 世界樹と真実
第39話 目的地前のお約束
「さて兄ちゃん。死にたくなければ金目の物をだしな。ついでに嬢ちゃんは俺達が貰ってやるから感謝しな!」
「へへへ! この嬢ちゃんかなり別嬪さんじゃねーか! 兄ちゃん羨ましいのー! ま、今日からは俺達が可愛がってやるからな!」
「どうする? 抵抗する? 俺達は手配書に書かれている凄腕の賊だぜ?」
僕とククルは馬車や徒歩で移動して、何とか後1日程度で帝都に着く場所まで来た。
その間は特に問題はなく、たまに魔物が襲ってきたり、クルルが一緒の部屋で寝ようとしたので、無理矢理追い出したぐらいか事件は起きなかった。
しかし、よくテンプレであるように、目的に近づくと事件が起きるというか、トラブルがやってくるというか、とりあえず目の間には盗賊が10人程僕達の目の前に現れた。
もう少しで帝都周辺にある最後の町に辿り着くというのに――
「どうする、ナガヨシ? 手配書に書かれているってことは、賞金が貰えるけど? 全員殺す?」
「う~ん……とりあえず、やっちゃった方がいいかな?」
僕は未だに冒険者家業に慣れていない。そのため、こういう場合の判断はクルルにお願いしている。
「正解。盗賊っていうのは生きているだけで犯罪なの。だからとりあえず殺すの精神で大丈夫だよ」
「盗賊滅びろ。慈悲? 何それ美味しいの? っていうやつか」
「何ごちゃごちゃ言ってやがる! さっさと出すもん出せ!」
「女! お前もさっさとこっちに来い!」
さっきから盗賊たちが煩くしているが、気になったことがあるので聞いてみた。
「こういう時って、今から倒すとか何か宣言した方がいい?」
「ううん。奇襲とか不意打ちとか何でもありだよ?」
そう言われたので、僕は2本の剣を構え一瞬で盗賊集団の先頭まで移動し、2人の盗賊の首を切断した。
「――は?」
そう驚いている盗賊の首も切り落とし、わずか5秒程度で盗賊3人は死んだ。
「てめー!? 何時の間に!?」「早すぎるぞこいつ!?」「ってめえら! 早く武器を構えろ!」
どうやらさっき殺した人達の中にはボスがおらず、今武器を構えろと号令した人がボスみたいだ。
とりあえず、僕はクルルの傍に戻った。
「あれ? どうして戻ってきたの?」
「クルルも戦う?」
「う~ん……私は今回パス。昨日魔物の群れの時に暴れたからね。それに、ナガヨシの対人戦って少ないでしょ? だから今回は一人で戦って?」
そう言われたので、再び武器を構えた。
2本の剣。僕はそれを右手は正面に持ち、左手は逆手で持って後ろ向きに構えた。
「じゃあ行ってくる」
そう言って今度は盗賊たちの中央に移動した。
残りが8人。僕を囲うようにしている。
「バカかこいつ! 自分から囲まれに来やがった!」「よし、殺せ!」
その合図とともに、まずは3人の男が剣を振り上げて襲い掛かってきた。
僕はそれを両方の剣で受け止めるような姿勢で待つ。そして僕の剣と盗賊の剣が接触した。
その直後――
「――あ? 何で俺の剣が折れてんだ?」「ハァ!? この剣はこの前新調したばっかだぞ!?」
やはり僕が持つ剣が触れたものは、全て切れるみたいだ。
しかも今回は一度に複数の剣を受け止めてみたが、数に制約はないみたいだ。
とりあえず、驚いている盗賊の首を刎ね、残り5人となった。
「――なんだコイツ……化け物か……」
誰かの怖気づいた声が聞こえる。本当ならここらで生き残っている盗賊を逃がすという選択肢が、僕の精神衛生上いいんだろうけど、恐らく今後も僕以外の人達に同じことをするだろうと思い、一人も生かさないようにしようと決めている。
「さて、あと5人か。安心していいですよ? 1人も生かして返しませんから」
そう言うと、一人の盗賊が包囲から逃げ出した。逃げた先にはクルルがいる。
恐らく人質にしようとしているかもしれないが、クルルも冒険者である。その証拠に――
「女! 死にたくなかったら、言う事をk--」
「うわ! 気持ち悪い! 私は男に言い寄られるのは嫌なの~! 追いかけたい女なの~!」
クルルがよくわからない事を口走りながら盗賊を切り捨てた。
今まで2週間以上一緒に行動してきたが、その都度僕とクルルで迫りくる魔物を狩ったり、たまに出るチンピラをボコボコにしていたんだ。恐らく以前より強くなっていると思う。
その証拠に、いくら不意打ちとはいえ、迫りくる男を一撃で倒すなんて以前はできなかったはずだ。
「さて、あと4人になりましたね。僕としてはまた襲い掛かって来てほしいんですけど?」
明らかに盗賊達は戸惑っている。
無理もない。気が付けば11人いた仲間達が、いつの間にか4人に減っていたんだ。
しかも、僕は逃がす気はない。ちょっと確認したい事がある為、ゆっくり戦ているにすぎない。
そんな気配を察したのか、ボスが提案してきた。
「お、俺達の負けだ! た、頼む! 命だけは助けてくれ! 頼む……」
そう頭を下げられたが、
「え? 無理ですけど? あなたたちも同じように命乞いしてきた人達を殺してたでしょ? 今回はそっちの番でした。それだけの事です」
再び僕は武器を構えなおした。
「ちくしょー!! てめーら!! 死ぬ気でこいつを殺せ!!」
今回は先ほどの反省点を活かし、一人ずつ襲い掛かってきた。
一人目が剣を突きの構えに持ち突進してきたが、躱しざまに首を刎ね、2人目が手斧で襲い掛かろうとしたところを両手ごと切断し、またこいつも返す剣で首を刎ねた。
「ひぃー! ボス! もう無理だ!」
「じゃあお前が隙を作れ!」
そう言ってボスは、部下の体を僕に投げつけてきた。
僕はそれを剣で受け止めたが、剣が当たったところが悪かったせいか、お腹に当たったせいでソコから真っ二つになってしまった。
赤い血が体から飛び散ってしまったせいで前が見えなくない、一瞬ボスの姿を見失ってしまった。
「隙ありだ小僧―!!」
その言葉に反応し、僕は咄嗟に左手を斜め後ろに構えた。
するとボスの剣と僕の剣がぶつかり、ボスの剣が綺麗に切れた。
「畜生! やっぱりダメか!」
そう言うとボスは剣の残骸を僕に投げつけてきた。僕はそれを軽く避け、ボスの懐まで移動後、首を刎ねようとした。
しかし――
「何度も見たんだよ! お前首しか狙わねーな!」
ボスは僕の一撃を何とか避けた。
「いくら早くても、どこに攻撃が来るか分かれば避けられるんだよ!」
なるほどたしかにその通りである。そのため僕はある実験をしていた。
「なるほど、これぐらいの強さの人は、10人ぐらい倒すと読まれてしまうのか……」
僕は何も好きで首ばかりを狙っていたわけではない。どれくらいの頻度で首を狙っていれば相手が僕の狙いをわかるのかを確かめていた。
「よし、大体わかったんで殺しますね?」
そう言って僕は再度ボスの懐に簡単に入り込み、今度は足を切断した。
「――ぐぉー!! 俺の……俺の足がー!!」
「あ、ダメだ。足を切ると転ばれる。止めを刺して流れるように次の相手に行きにくいな。じゃあ今度は腕を狙おう。武器を持っている方を切れば相手の抵抗力も削げれるし、一石二鳥になるな」
そう言って僕はボスの首を刎ねた。
今回の対人戦闘で得るモノは得た。大満足である。
「……傍から見たら、この光景ドン引きだからね? 綺麗に首を切断された死体が10体って……」
確かに。でも剣で戦うとどうしてもこうなってしまうので、やっぱり殺さないといけない戦い以外は棒を使おう。
「はぁ~……じゃあ次の町のギルドに盗賊退治の報告するから、ボスの首を持ってきて」
「了解。ボスだけでいい?」
「大丈夫。それ以外の首入らないから、金目のモノだけ集めて、後は火葬するわよ。ナガヨシは穴を掘って火葬の準備して」
そう言ってクルルはテキパキと死体の追いはぎをしだした。
死人に貴重品は必要ないからね。特に悪人の場合は。そんな事を思いながら僕は穴を掘り、追いはぎ終わった死体をその穴に入れる。
全ての死体を入れ終わり、僕はコッドの町の魔法具屋さんに貰った火葬用魔法具で死体を燃やし始めた。
本来は獣様だけど、こういう使いかもあるから便利だ。火を吐く魔法具は……
「さて、終わったし出発するよ~。次の町で1泊後、明日には帝都に着くわね」
そうして僕とクルルは再び徒歩の移動を始めるのだった。生首って意外と重い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます