第33話 ダンジョンアタック(前編)/初戦闘

 今日は光君に誘われてダンジョンにやってきた。光君曰く――


『何事も実践をしたら強くなるのはテンプレです。だからテンプレ通り実践をしましょう! な~に、いざとなれば俺が助けますから!』


 とういうわけで、魔物が蔓延るダンジョンまで連れた来られた。一応王様からの許可も取った。

 むしろそろそろダンジョンやギルドの依頼を通して実践の経験を踏ませようと計画していたらしいので、ちょうど良かったみたいだ。


「佳織ちゃんに凜々花さん、そして栄治さんも。いいですか? もし万が一危ないようであれば、俺が助けますので」


 光君はまるで引率者のような言い方をして、少しイラつかせるようなことを言い出した。

 確かに光君は強い。俺ではまるで歯が立たないぐらい強い。もしかしたら本当に彼が今回の物語の主人公なのだろうか?

 そんな不安が掻き立てられる。


「じゃあ行きましょ? 栄治さん大丈夫ですよ。あたしと佳織ちゃんの魔法で援護するので、栄治さんは光君と一緒に思いっきり暴れちゃってください」

 凜々花さんがフォローしてくる。確かに今は落ち込んでいられない。早く光君と肩を並べるぐらい強くならないと――


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 俺は今、初めて生き物を殺した。それは光君もそうだ。これが戦うという事。生きるっている事。そのことを学ばせてくれる戦闘だった。

 ダンジョンに入って1層目。それ直ぐに表れた。


 ――スライム――


 お決まりの雑魚モンスターであり、俺はアッサリと倒すことができた。

 凜々花さんや佳織ちゃんも問題なく倒せ、光君も数匹をまとめて倒していた。


「ま、雑魚ですね。ここら辺は余裕なんで、もっと奥に行きましょう」


 そうして俺達は一気に5層目まで進んだ。その間もスライムの他に火の玉のような魔物やお皿のお化けのような魔物、壺の魔物といった生物とは思えない魔物が相次いで出てきた。

 それらを難なく倒し、5層目に到着したところで、奴らは出てきた。


 ――スケルトンーー


 大きさは大の大人程の大きさ。そして棍棒のような物を持っている。初めて武器を持つ魔物だ。

 しかし動きが遅いせいか、振り上げた棍棒を軽く避け、簡単に反撃できた。

 その後も10層に行くまで武器を持ったスケルトンが大量に出てきたが、結局苦戦することなく通過できた。


「光君。このダンジョンって100階層までだっけ?」

「ええ、そう聞いてます。といってもこのダンジョンの最高到達点は62階層までみたいなんで、本当の事はわかりませんがね」

「今日はどこまで行くの?」

「とりあえず、帰還は5階層ごとにある帰還の魔方陣があるみたいなんで、行けるところまで行ってみましょうか?」


 そうして俺達は11階層目にやってきた。そしてついに目の前にそれは現れた。


 ――野犬ーー


 そういわれる犬である。しかも全然可愛くなく、こちらを殺気を込めた目でずっと睨んでいる。

 今目の前に野犬が3匹いるので、光君と俺が先頭に立ち、凜々花さんと佳織ちゃんは後ろで援護の体制で待ってもらている。


 結果だけで言えば、簡単に倒すことはできた。しかし――


「まだ息があるな、こいつら」

「光君。殺さないといけないよね?」

「そりゃそうです。ココで見逃して別の人達をこいつらが襲ったら意味がありませんからね。じゃあ栄治さん。どうぞ」

「いやいや、こいつを倒したのは光君だ。光君から先にどうぞ」


 俺達はどっちが犬を殺すのかを譲り合っていた。

 だって仕方がないじゃないか。生き物を殺すなんて経験ないんだから。

 しかもコイツ、ずっと上目遣いで俺たちをじっと見ているし。殺しにくい。

 後ろでは2人が顔を青くしてこちらを見ている。わかっているのだ。コレは避けて通れない道だと。だから見ている。でも見たくない。そんな表情だ。


「――よし、俺が先にやる。光君は次を頼む」

「いやいや、やっぱり俺が先にやりますよ。このダンジョンに誘ったの俺ですからね。言い出しっぺがしないと……」

「……じゃあ任せた。次は俺がやるよ」

「はい―――――やぱり先に栄治さんお願いしていいですか?」


 光君……ここに来る前はあんなに偉そうな態度をしていたのに、それはどうかと思うよ?

 そう苛立っていると、俺は自然に犬の首を刎ねていた。驚きの顔をしている光君。

 後ろの二人もかなり驚いているみたいだ。


「――――なんかできた。意外と簡単だな……」

 そう思っていると、急に俺の体が淡く光りだした。


「っ!? なんだ? この光は?」

 時間にしてほんの数秒すると、光は消えていた。


「どうしました?なんか光ってました?」

 凜々花さんが聞いてきた。


「えっ? 今俺の体光ってなかった?」

「? いいえ、光ってませんでしたけど?」


 どうやら俺にだけ見えたようだ。何の光なんだろう?


 ――その後も探索をし続け、気が付けば40階層まで移動していた。

 その間に光君も凜々花さんも佳織ちゃんも全員生き物を殺すことを成功し、1時間ほど休憩を挟んだが、何とかここまでこれた。


「だいぶ倒す感覚にも慣れてきたな。栄治さんは?」

「俺もだよ。やっぱり小説とかの主人公って凄いね。こんなことをいきなり平然とできるなんて」


 後ろで女子2人が何か喋っているが、今は休憩中だ。魔力をある程度消費したため、休憩スペース的な場所で全員座っている。


「でも栄治さん。次はあの定番のゴブリンが出るって聞きましたよ。大丈夫ですか?」

「そっちこそ、無理しない方がいいからな」


 今まで40階層に来るまでは、全て動物型の魔物や、無機質型の魔物ばかり出ていた。

 しかし、次からは人型の魔物が出てくるらしい。しかも光君情報だと武器を持っている状態でだ。

 今までは動物を殺すという感覚から、魔物を殺すという感覚に上手く切り替える事ができたが、果たして次は上手く戦えるだろうか。

 女子二人もそのことについて話し合っているみたいだし……


「よし、20分経ったね。じゃあ次に行こうか」


 そう俺が言うと、全員立ち上がり、41階層に向かう階段を降り始めた。

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