第4話 第4話 多次元異世界召喚(後編)/自己紹介回

 自己紹介。

 それは、入学試験の面接や就職活動の際に必ず絶対に必要なスキル。

 この自己紹介が上手くいけばリア充の仲間入りといっても過言ではない。

 ちなみに僕は中卒であり、高校に行っておらず、仕事も起業して個人経営の会社を設立したため、ふつうの面接を一度も経験したことがない。

 故に今回が人生初めての自己紹介となる。


「よし、女神さまが言ったように今から交流を深めようぜ!

 俺たちはある意味これから一蓮托生の関係になるんだし、お互いの事はある程度知ってた方がいいと思うしな!」


 何度も思ったがイケメン君は話の主導権を握るのが上手いな。

 いつの間にかリーダーシップを取ってるし、さすがイケメンだね。


「てなわけでまずは自己紹介! 俺は黒木 栄治。栄治って呼んでくれ!

 大学2年のつい先日酒が飲めるようになった20歳だ!

 趣味は体を動かすことで最近はラフティングやパラグライダーみたいなあまり体験できないスポーツをやっている。

 あとアニメや漫画も好きで、好きなジャンルは最強無双系かな?

 あ、それとさっきステータスを確認したところ、職業欄に勇者って書いてたんで、俺が勇者だ! みたいな? ま、みんなよろしく!」


 ……うわー。自己紹介ってこんなこと言うんだ。一応参考にしておこう。

 てかイン・アウトどちらもイケて、イケメンで大学生って完全リア充ですね、わかります。

 勇者君(仮)の自己紹介が終わると、小太り君が立ち上がった、


「うわ勇者って羨ましい! でも俺は闘神だぜ? 戦闘とかじゃ俺の方が強いんじゃんね?

ま、いいや。俺の名前は百原 光。呼び方はお任せで。高校3年生の18歳です!

 えっと趣味は栄治さんと同じくアニメや漫画等のサブカル全般! 一応運動もできるよ? 本当だよ?

 目標は魔王を倒して英雄になってモテること! いやーまさかこんなタイミングで召喚されるなんて俺ってラッキーだなー!」


 動機が不純なような宣言したから清いようななんとも言えないな小太り君は……

 ていうかこんなタイミングってどんなタイミングだったんだろう?

 そんな風に考えていると、勇者君が再び口を開いた。


「じゃあ次は俺から右回りに言っていこうか? 順番と決まっていれば自分の番が来るまで考えられるし、

 いきなり指定されて【じゃあ自己紹介よろしく】とか言われるよりいいと思うしね」


 さすがイケメン……自分からしゃべれない人へのフォローも完璧とかマジイケメン。

 勇者君の右周りだと僕は最後に挨拶か。


「じゃあ次は私ですね――えっと初めまして。

 私の名前は佐藤 佳織って言います。歳は高校2年生の17歳です。

 あと、えっと……趣味は読書で漫画とかもよく読んでいます。

 ステータスには魔導士って書いてあったんで、多分魔法が使えるんじゃないかと思います。

 これからよろしくお願いします!」


 そう言うと魔法少女ちゃん(魔導士のため)はいきよいよく頭を下げた。

 黒髪のボブショートで小柄な彼女は学生服を着ていた。

 多分学校の帰宅途中で召喚に巻き込まれたんであろうことが想像できるが、

 恐らく泣いていたのか、頬に涙の跡が少し見えた。

 そりゃこんな状況に置かれたんであれば泣きたくなるよね。

 あと小太り君、可愛い可愛い連呼しすぎでうるさいし気持ち悪い。


「次はあたしですね――初めまして。前原 凜々花と言います。栄治さん同じく大学2年生の21歳です」


 勇者君が「あれ、もしかして一浪しちゃった?」と口をはさんだ。


「いえ、ちょっと処置上により留年しました。

 趣味は……えっと特にありません。ステータスでは精霊術師ってなっています。よろしくお願いしますね」


 今回もまた頭を下げた。

 彼女の印象はストレートの黒髪と眼鏡のため、委員長って感じだった。

 ただ魔法少女ちゃんと同じように混乱しているのか、少し覇気が無いように感じる。

 勇者君は歳が近いこともあって好印象な様子だし、小太り君は「委員長だな委員長……ありだな」とつぶやいている。


「次は私ですね。初めまして。小倉 正と申します。

 〇〇県の郵便局員をしております。28歳です。

 正直みなさん私より年下だと思ったため、私がリーダーシップを取らないといけないんではないかと考えててすごく助かりました。

 ありがとうございます栄治さん。あまり人前では喋ることが苦手でしてね。

 私のステータスでは賢者となっておりました。

 魔導士との違いはまだわかりませんが、多分私も魔法が使えるんではないかと思います。

 みなさんよろしくお願いしますね」


 なんと、長身さん(おそらく190cmオーバーと思われる)は最年長でしたか。

 喋り方も大人な感じが出てて安心できますね。

 勇者君も少しホッとしている。やはり年長者がいると少し安心できるよね。


「次は私。葉山 小音子。19歳。

 趣味動くこと。食べる事。寝る事。

 スタータスには戦乙女って書いている。

 だれか食べ物持ってない?」


 これまたなんと一番小さい(150cm無いと思う)子は二十歳前の女性でしたか。

 髪の毛がおかっぱのせいか日本人形に見えますねこの小さい子は。

 あとごめんなさい。食べ物は持っていません。


「うそ――私より年上?」

 魔法少女さんの呟きにはみんな共感していると思う。

「俺より年上だと――ありだな」

 小太り君もう少し抑えよう。


「で、私か。伊藤 沙良。24歳。

 ステータスには聖女って書いてるわ。私が聖女とかありえないと思うんだけどね。

 えっと一応会社員で小倉さん以外にはみんなよりお姉さんになるわね。

 元の世界に還れないんじゃ仕方がないんで、みんなよろしくね」


 聖女さんはかなりの美人である。

 奇麗な金髪をウェーブされているが、全然違和感はなく、お水系の雰囲気も感じない自然な感じ。

 肌も綺麗で胸も大きく、見た目は本物の聖女に見える。

 僕の嫁の方が可愛いと思うけどね! てか小太り君キタキタうるさいマジで!


「じゃあ最後に僕だね。

 名前は石田 長慶。21歳。

 趣味はお菓子作りと散歩。あとアニメとかも見るよ!

 ステータスには剣使って書いているけど剣使ってなんだろう?

 剣士じゃないのかな? 後程確認する予定なのでみんなよろしくね!」


 上手く自己紹介できたであろうか?

 ちょっと考えてると、勇者君から質問がきた。


「えっと長慶君でいい? ケンシって剣を使う人の事じゃないの? 剣術士とか剣闘士とかの」


 確かに今の説明では伝わりずらいので、地面に指をさして字をなぞった。


「うーん――あのですね? 普通はケンシって「剣士」と書くじゃないですか。

 だけど僕のステータスには武士の「士」じゃなくてモノを使う「使」って文字なんですよ。つまり直訳すると剣使い? みたいな感じですかね?」

「なるほど――」


 勇者君が考え込んでいる最中、聖女さんが改めて切り出した。


「これでお互いの名前は把握できたし、もう少し今後の状況とかお話合いできませんか?

 今後の行動方針とかいろいろ決めないといけませんしね」


 やはり大人の女性は落ち着いているな。確かに話し合いはまだ十分じゃないしね。

 それに、みんなが何処まで情報を持っているか確認もしたいし、ちょうどいいかも。

 できれば僕が知らない情報を持っていることを願いましょうかね。

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