第23話
お風呂から出た私はその足でにぃにの部屋へと向かう。
にぃにのハーレム計画……まず一番の問題は「にぃにが私を女性として意識しているのか」と言う事。
ボディタッチや添い寝なんて毎日のようにしているが、二人の間にそれっぽい事が起きたことは無い……キ、キスだってまだだし……いや、子供の頃にはしていたんだけど、あれはノーカンでいいと思う……。
もしも意識してくれなかったら、どれだけ計画を立てようとも私は傍にいることが出来なくなってしまう……。
色気が足りないのかな? 今日のパジャマは淡いピンクの膝丈シャツワンピース、ボディラインはわかりにくいので前開きのボタンを1つ……開けてみる。
いつも付けているナイトブラがちらりと見える……けれど、これって色っぽいのかな? うーん、よくわからない。
コンッコンコンッ……にぃにの部屋のドアをノックをして「にぃに、お風呂あがったよ」と声をかけると直ぐにドアが開き……にぃには真っ直ぐに私の顔を見つめて笑顔をみせてくれる。
「おう、ありがとな。すぐに入るよ」
いつもと変わらないにぃに……やっぱり色っぽくないらしい……。
にぃにを見送った後、自分の部屋に戻ってシャツワンピースのパジャマを脱ぎブラを外した……どうせならショーツも履き変えてしまおうか。
迷った挙句に手にしたのはピンク色の小さな布、なんでこんなのを買ったんだろうと今まで履いたことは無かったけれど、まさか今日身に着けることになるなんて……横で止めているリボンが解けでもしたら脱げちゃうよ……。
改めてパジャマを羽織りボタンを留めていく……そして、上から2つ目のボタンで手を止めた。
(ここまで開けたら胸の谷間……かなり見えちゃうよね、もしこれでダメなら……)
言い知れぬ不安に襲われもするけれど……中途半端に意識されたくはないし、今までの私を払拭するにはそれなりの覚悟と衝撃が必要かも……うんっ、これで行こう。
ベッドにぼふっと腰掛けて、枕を胸にぎゅうっと抱き締める。こんなにドキドキするのは初めて……いや、違う。自分の恋心を知った夜、あの時も今と同じくらいドキドキしていた。
(にぃに……私、もう妹じゃ嫌だよ……)
時間にしてどれくらいだろう? きっとそれほど経ってはいないはず、だってにぃにのお風呂は早いから。
コンッ、コンッ、コンッ……私の部屋のドアがゆっくりとノックされる……にぃに? 普段、寝る前ににぃにが来ることなんて滅多にない。いつも私からにぃにの部屋に行くのに今日はどうしたんだろ? そんな事を考えてしまうが、身体は無意識のうちにドアを開けていた。
「にぃに? どうしたの?」
「いや、今日も来るのかなって思ってな……」
「ふふっ、もちろんだよ。にぃにが迎えに来てくれるなんて嬉しいな……もう行っても良いの?」
「……ん? あぁ、いいぞ。一緒にくるか?」
にぃに……今見たよね? ふふふっ、これは効果ありかも!
「うんっ、じゃあ行こっか」
嬉しくってにぃにの腕を取りぐいぐいと引っ張りながら部屋を移動する、すぐには寝かせてあげないんだからっ!
――――
……なんて思っていたのに、お布団に並んで入って少し話をしていたらにぃにはすぅすぅと寝息を立て始めた……何でよっ! ぅぅ……勇気出したのにぃ……。
寝入ってしまったにぃには簡単には起きない。寝つきもいいと知ってはいたけど、まさかこんな私を見ても寝てしまうなんて……やっぱり女の子としてなんて見てくれないのかな……。
こうなったら悪戯でもしないと納得が出来ない、少しくらいなら……いいよね、どうせ起きないだろうし。
ゆっくりと起き上がった私は仰向けに寝ているにぃにの上に跨り、自分の上から布団を被りなおしてにぃにの顔を覗き込む。
眼鏡を外しているにぃにの前髪をそっとかき上げて、じーっとその寝顔を見つめた……あぁ、やっぱりかっこいいなぁ。
にぃにの寝顔はやはりと言うか、まだ少しあどけなさが残っている。普段は兄としても気を張っているのだろうし、こんな寝顔を見ることが出来るのは今のところ私だけの特権だ。
緩む口元を気にすることもなく、手をゆっくりと下げて頬に触れる……そっと撫でていると、唇に目が釘付けになってしまった。
昼間の映画のせい? それとも女の子としてみて欲しいから? 今までどこか無意識に避けていたであろうその欲求に私の心はあっという間に支配されてしまった。
(キス……したらどんな感じなんだろ……)
そっと親指でにぃにの唇をなぞってみる……男の人でも柔らかいんだ……なんて当たり前にも思えることを改めて実感してしまう。
ぽーっとしながらそんな光景をどこか映画のワンシーンでも見ているように感じていたら、ふと気が付いた私の目の前ににぃにの顔がある……もう数センチも離れていないだろう、このまましちゃおうかな……?
あと少し顔を近づければ……でも……なんて躊躇のほんのわずかな隙を突いたかのように、いきなりにぃにの手が私の太ももに添えられる。
(ふぇ!? え? にぃに起きてる……!?)
ビクッと固まった私の身体を気にすることもなく、その手はゆっくりと撫でるように動き出した……もしも起きているのだとしたら。そんな不安や期待が入り混じった感情のままそっと視線を上げてにぃにの顔を見てみると……大丈夫、眠ってる。たぶん寝相か何かで動かした手に触れた物を確かめるようにしているんじゃないかな。
ほっとし、身体の力が抜けるが状況はあまりよろしくはない……動き続けるにぃにの手が徐々にあがって来てるんだから……このままじゃお尻を触られてしまうよね!?
(起きて……ないよね!? あれ? 起きている方が良いの……かな?)
もしこれが起きていて、にぃにの意思だとしたらそれは私をそういう対象としてみていると言ってもいいんじゃないか……『確かめたい』そんな気持ちがふつふつと胸に湧き上がってきた私はゆっくり上半身を起こしてにぃにの顔を見つめる。
にぃにの表情に特に変化はない……かな? もう少し試してみよう、そう思った私は片手で身体を支えつつ空いた手でにぃにのもう片方の手を取り……自分の胸へと押し付けた。
(これなら……どう?)
ピクリと反応を示したその手は、それが何かを確かめるように動きはするがとても起きている人のそれとは思えなかった……触られるのは初めてなんだけれども。
(なぁんだ……やっぱり寝てるよね……気が抜けたら眠くなってきたかも……おやすみなさい)
一気に体の力が抜けた私は、そのままにぃにに覆いかぶさるようにして眠りについた……。
――――
変な姿勢で寝てしまったからだろうか、翌朝まだ早いと思われる時間に目が覚めてしまう。
寝たときのまま2人は全く動くことがなかったみたい、にぃにの手もそのままだし……動かなかった私もだが、払いのけることもしなかったであろうにぃにも凄いと思う……寝苦しくなかったのかな?
ぼやっとする頭を持ち上げたその時、すっと私の頭ににぃにの手が回された感触が伝わる……次の瞬間、そのままぐっと抱き寄せられた私の唇に触れる柔らかい何か……。
(……え? え? えぇ!?)
真っ白になった頭の中で唯一認識できたのは目の前のにぃにの顔だけだった……えっ? 私、にぃににキスされてるの!?
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