第19話 【さわさわ】

 幸さんに案内されて、俺はダンジョン【わさわさ】に転送された。

 【ぷよぷよ】とは打って変わって薄暗い。それに木々が生い茂っていて視界が悪い。これでは敵を見つけるのは困難だ。



「幸さんが言うにはお化けキノコっていうモンスターがいるんだよな」



 【ぷよぷよ】のスライム同様に【さわさわ】にはお化けキノコというモンスターのみがいるらしい。俺はキノコが苦手だ。特にシイタケは無理。見た目がキツイ。お化けキノコのビジュアルを想像するだけで俺は寒気がする。



「なるべく早くダンジョン踏破しよ……」



 俺はいつでも攻撃できるように銃に弾を込めて、階段を探す。木々が生い茂っている分【ぷよぷよ】よりも見つけ出すのは難しそうだ。



「んっ? なんか甘い香りがするな。フルーツ……バナナに近い」



 階段を探していると、突如甘い香りが鼻腔を擽った。その匂いの正体が気になり、ついつい匂いの方へ向かってしまう。



「痛っ!」



 匂いが濃い場所までやってくると足に何かが当たった。視認できなかったがかなり痛い。



「いた……」



 遠くからこちらを見てケラケラと笑うキノコが2匹。つぶらな瞳で可愛らしいが間違いなくあいつらの仕業だろう。



「あいつら……」



 ゴム銃を取り出してキノコの顔面に狙いを定める。油断している今なら倒すのは容易いはずだ。

 引き金を引くと弾は、あっという間に一匹を捉えた。その勢いのまま逃げようとするもう一匹にも弾を放つ。



「みぎゃあああああああぁあぁあぁ」



 予想よりも噛んだ聞こえの断末魔。ハリポ●のマンドレイクみたいだ。



「よし、取り敢えず倒し……えっ?」



 体の力がゆっくりと抜けていく。ゴム銃を握っている事も出来ず、俺は膝を地面に着けた。意識はあるが、体が言うことを聞いてくれない。



「まずい……。さっきのは毒か」



 お化けキノコを倒せていたのがせめてもの救いだった。もし倒しきれていなかったら間違いなくやられていた。



「でも、このままじゃいつかやられる」



 俺は必死に自分の体を動かそうと踏ん張るが、体はどうやっても動かない。



「こ、え、も……」



 発声する事すら難しくなってきた。そろそろ本気でヤバい。



 かさっ。



 何かが動く音がした俺ではない何か。それは後ろから徐々に近付いてくる。かさ、かさ、かさ。その音がするたびに胸の鼓動が早まる。頼む。来ないでくれ。



 がささっ!



 音が急に大きくなった。背後に何かの気配。お化けキノコ。お前は俺が今まで嫌々食べさせられていた。キノコ達の復讐でもしようというのか。やめろ、やめてくれ、まずいぞ、俺の肉は硬くてまずいぞ。だから食べないで!



「やっぱり……」



 人。俺は安堵し、肩の強張りがゆっくりと解けていくような気がした。しかし……。



「ごめんなさい」



 体に何かが刺さる。その痛みの強さに再び肩を強張らせるのだった。

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